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64 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/06(金) 18 03 32 170 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/10(火) 21 22 37 179 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/11(水) 01 40 32 251 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/14(土) 21 27 00 261 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/14(土) 23 02 11 277 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/15(日) 10 15 13 291 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/15(日) 13 35 01 326 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/15(日) 21 47 45 341 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/15(日) 23 22 34 362 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/16(月) 21 45 23 376 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/18(水) 18 45 55 403 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/19(木) 00 41 51 417 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/19(木) 22 25 08 64 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/06(金) 18 03 32 後藤/まさか依頼人に突きつける事になるとは思いませんでしたが ――――くらえ! 証拠品『衛宮士郎の解剖記録』を提出しました。 ギルガメッシュ/む……なんだ、それは?雑種の解剖記録だと? 後藤/これによると被害者は心臓を貫かれて即死したそうです。つまり……。 ギルガメッシュ/はッ……まさか!? 後藤/ダイイングメッセージを残せるわけがない! 迂闊王/そ……そんなバカな!? まあ、他にも現場を見ていないにも関わらず、 写真では虫眼鏡でしか発見できない文字に気付いたり、 誰にも解読できない中で一人だけ文字を読み取ったりと怪しい点は大いにあった。 アーチャー/これは自供したと見ていいのかな? ギルガメッシュ/ち…違う、我は雑種を殺してなど… 蒔寺楓/殺人犯は皆そう言うのさ。濡れ衣の人もだけどな! どうやって判別するのかって? 決まってるだろ、喚いて否定する奴は犯人だ! 大人しく判決を受け入れる奴はよく訓練された犯人さ! 法廷は本当に地獄だぜフゥハハハハハーー!! 後藤/いえ、今確信しました。被告人は被害者を殺していません。 アーチャー/……なに? 根拠のないデタラメは止めてもらおう! 知恵留/静かに。弁護人にはその明確な理由を答える義務があります。 何故、被告人が犯人でないと言い切れるのですか? (選択)それは…… A/こんな迂闊な人が殺害現場に証拠を残さないのはおかしいから B/刺された時の状況を知らなかったから C/被告人は実は真犯人を知っていて庇っているから 170 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/10(火) 21 22 37 後藤/被告人は即死だと知らなかったからです! もし知っていればダイイングメッセージは残さなかった! そう、被告人が現場にやってきた時には被害者は既に死んでいたんです! 蒔寺楓/な、なんだってぇぇーーー!! 後藤/このままでは自分が犯人にされてしまう、 それを恐れた被告はでっち上げのダイイングメッセージを残した。 これが事の真相です。 アーチャー/………… 後藤/文字が鮮明でなかったのも当然です。 床一面に血が広がった状態で、しかも乾いていたはず。 文字が書ける位置まで腕を動かそうにも死後硬直がはじまっていたのですから。 ギルガメッシュ/うむ、もうこうなっては告白するしかないが正にその通りだ ―――――待った! アーチャー/残念だが、その言い分を認めるわけにはいかないな。 弁護側が証明したのは被告人が即死だと知らなかった事だけだ。 そんなもので殺人を否定できるはずがなかろう。 いくらでも、そのような状況は考えられる。 たとえば被害者を刺した後、パニックになった被告は外へと飛び出す。 しかし後々冷静になった被告人は現場に舞い戻り、 指紋などの証拠を隠滅、さらにダイイングメッセージを書き残して去っていった。 どうだ。これならば説明が付くだろう? 後藤/証拠を隠滅……しかし、それではこの証拠と矛盾します! (選択)検察側の主張と食い違う証拠品を突きつけろ! 【提出された証拠品】 被害者に刺さっていた包丁 (傷跡から凶器と断定。指紋は検出されなかった。 新品。一般に市販されているタイプの物で広く流通している。 販売先を県内に限定し、ここ2ヶ月の販売総数を調べた時点で売り先の調査を断念した) 排水口から発見された血痕の写真 (庭の水撒きに使う水道の排水口から被害者の血液が発見された。 恐らくはここで返り血を洗い流したと見ている) 被害者の写真 (致命傷となった傷以外の外傷は見られない。 無抵抗のまま刺された可能性が高い。ただ右手の位置が若干不自然。 写真では分からないが、手に機械油が付いているらしい) 血に染まったタオル (大きさはバスタオルぐらい。被害者の名前が刺繍されている。 大量の返り血で黒く染まっており、指紋も被害者以外の血液も検出されなかった) 衛宮邸内に落ちていた花束 (捜査の結果、教会の花壇に咲いていたものと切り口が一致した) 衛宮士郎の解剖記録 (死亡推定時刻は×月×日、午前6時~午前7時の間。 心臓を一突きされて即死。凶器と思われる包丁が刺さったままだった) 179 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/11(水) 01 40 32 ――――くらえ! 証拠品『衛宮邸内に落ちていた花束』を提出しました。 後藤/証拠はこの花束です! アーチャー/ふ、そんな物が何の証拠になる? 後藤/これは被告人が現場に来た事を示す最大の証拠です。 全ての指紋を拭き取った犯人がこれを見落とすでしょうか? ましてや一度出て行った後に戻ってきたなら気付かないはずがない! アーチャー/うぐっ……! だが現に花束は落ちていた! ならば何らかの要因で見落としていた可能性は高い。 後藤/考えにくいですね。それに見落としていたなら踏んづけていてもおかしくない。 そもそも何故、被害者は無抵抗だったんでしょうか? アーチャー/決まっているだろう。被告人が不意打ちして抵抗する間がなかったのだ。 後藤/いえ、それは有り得ません。被害者は道場の中央にいました。 入ってくる相手を確認するだけの時間は十分あったでしょう。 それが恋人のストーカー相手なら警戒するはずです。 アーチャー/く、暗くて顔が確認できなかったのかも知れんではないか!? 後藤/ですが蒔寺刑事はこう証言しました、“明かりがなくても十分だった”と。 アーチャー/……ぬう(余計な事を。これは後で給与査定に付け加えねば) 蒔寺楓/なんだろ? 急に寒気がしてきたぞ、特に懐の辺りから。 アーチャー/では聞こうか。もし被告人が犯人でないとしたら、だ。 被害者を殺したのは一体何者だったのか、 そして怪しまれずにどうやって包丁を持ち込んだのか、 説明してもらおうではないか。 後藤/(……うわ、無茶言うなよ。そんなの分かるわけないだろ) 後藤/(でも、ここはハッタリでもいいから答えなきゃダメだ) (選択1)被害者を殺したのは…… A/被害者と親しい人物 B/被害者自身 C/この僕だ! (選択2)どうやって犯人は包丁を持ち込んだ? 1/事前に道場内に包丁を隠しておいた 2/何かで隠して気付かれないように持ち込んだ 3/後ろ手に隠し持って近付いた 251 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/14(土) 21 27 00 後藤/恐らく犯人は被害者と親しい人物です。 被害者は抵抗する間もなかったのではなく、 気を許した相手だからこそ不意を突かれたのです。 アーチャー/確かに後藤弁護士の言葉にも一理ある。 だが、いくら顔見知りとはいえ包丁を持ち込んだら不審に思うだろう? 後ろ手に隠したりなどすれば余計に怪しまれるだろう。 後藤/それは……前もって道場内に隠すとか、何かに隠して持ち込むとか。 アーチャー/ふ、とんだ茶番だ。道場内の何処かに隠すだと? 被害者が刺された状況を考えれば凶器は床下に仕込むしかあるまい。 もっとも警察の捜査ではそんな仕掛けは発見されていないがな。 後藤/う……。 アーチャー/それに持ち込むのも容易ではなかろう。 包丁といえどナイフなどより遥かに大きいのだ。 それを覆い隠すとなると、かなり大きくなければならない。 しかも手提げ袋などでは道場に持ち込んだ瞬間、怪しまれるだろう。 道場に持ち込んでも不自然でない、包丁も隠せる大きなモノ。 あるというなら出してもらおうか。 (選択)立証できるものはあるだろうか? Y/ある N/ない 261 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/14(土) 23 02 11 後藤/弁護側はそれを立証する証拠を持っています! アーチャー/ハッタリはよせ。そんな証拠がどこにある? 後藤/証拠ならそこにあります! 現場で発見されたバスタオルに凶器を隠したんです! あれは被害者ではなく犯人によって持ち込まれた物。 そして直前まで持っていたからこそ返り血を大量に浴びた、弁護側はそう主張します。 アーチャー/な…なんだと! 後藤/恐らく犯人は被害者にこう言ったのでしょう。 『先に道場で汗を流してくれ』『タオルは後で自分が持っていく』と。 だから被害者は何の不自然さも感じなかった。 ――――い、異議あり! アーチャー/だ、だが凶器を隠せると言う点では花束も同様だ! ――――異議あり! 後藤/相手は恋人のストーカーです。道場に入ってきた時点で警戒されます。 それに花束が発見されたのは道場内ではない。 仮に道場に持ち込んだとしてもタオル同様、花束にも血痕がついているはずです。 アーチャー/むうう……。 後藤/第一発見者のアルトリア氏にも犯行は可能だった! 違いますかアーチャー検事! ――――待った! その声ははアーチャー検事のものではなかった。 凛と澄み切った声が法廷内に響く。 気付けば少女は証言台に立ち、自分を睨んでいた。 アルトリア/私がシロウを殺したなどと世迷言を! 神聖な法廷の場でなければ切り捨てている所です! 後藤/ち、違います。私は他の人間にも犯行は可能だったと立証したいだけで……。 アルトリア/私が彼を殺すなど有り得ない! 私は……彼を心から愛していたのですから。 アーチャー/すまない。本当は君抜きで決着を付けるつもりだったが。 この無粋な弁護士がどうしてもというのでな。 証言してもらえるか、当日の事を。 アルトリア/ええ。それであの男を処刑台に送れるなら喜んで。 証言開始~当日の事について~ 【証言者:アルトリア】 私が目を覚ましたのは朝5時頃でした。 何やら物音がしたので台所に行くと大河を見つけました。 話を聞くと先日、シロウに禁句を言われたらしく、 その仕返しをするのだと息巻いていました。-① そして5時半頃、テストの採点をする為に家を出て行く大河を見送り、 シロウが起きるまで自分の部屋でくつろぐ事にしました。-② 6時半過ぎでしょうか、朝食の芳ばしい香りが漂ってきたので居間に向かうと、 桜が配膳の準備をしていましたので手伝おうとしたのですが、 代わりに玄関前の掃除を頼まれたので箒で軽く掃いていました。 その時、道場から逃げるギルガメッシュの姿を目にしたのです。-③ 不安に駆られた私はすぐさま道場へと足を踏み入れたのですが、 ……そこにいたのは物言わぬ無残な姿を晒すシロウでした。-④ 【提出された証拠品】 被害者に刺さっていた包丁 (傷跡から凶器と断定。指紋は検出されなかった。 新品。一般に市販されているタイプの物で広く流通している。 販売先を県内に限定し、ここ2ヶ月の販売総数を調べた時点で売り先の調査を断念した) 排水口から発見された血痕の写真 (庭の水撒きに使う水道の排水口から被害者の血液が発見された。 恐らくはここで返り血を洗い流したと見ている) 被害者の写真 (致命傷となった傷以外の外傷は見られない。 無抵抗のまま刺された可能性が高い。ただ右手の位置が若干不自然。 写真では分からないが、手に機械油が付いているらしい) 血に染まったタオル (大きさはバスタオルぐらい。大量の返り血で黒く染まっている。 指紋も被害者以外の血液も検出されなかった) 衛宮邸内に落ちていた花束 (捜査の結果、教会の花壇に咲いていたものと切り口が一致した) 衛宮士郎の解剖記録 (死亡推定時刻は×月×日、午前6時~午前7時の間。 心臓を一突きされて即死。凶器と思われる包丁が刺さったままだった) 後藤/(……アルトリアさん以外にも人がいたのか) (選択)行動を選択してください (例:証言-②の部分をゆさぶる場合、Ⅰ-②。 証言-③の部分に花束を突きつける場合、Ⅱ-③【花束】) Ⅰ/ゆさぶる Ⅱ/つきつける Ⅲ/ここまでは問題ない 277 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/15(日) 10 15 13 ――――待った! 後藤/桜さん……でしたか。初めて耳にする名前ですが彼女も現場にいたのですか? ――――異議あり! アーチャー/彼女も犯人に仕立てたいようだがそうはいかんな。 残念ながら彼女には犯行時刻の6時から7時にアリバイがある。 自宅を出て到着後はずっと料理を作っていたらしい。 付け加えるなら証人の部屋から道場に向かうには居間の前を通る必要があり、 居間と台所は直通。これが意味する所はわかるな? 後藤/もし証人が外へ出ようとしていたなら桜さんに気付かれる可能性が高い、という事ですね。 アーチャー/そういう事だ、つまり犯人はギルガメッシュ以外に有り得ないのだ。 後藤/それでは目撃した被告人についてですが。 アルトリア/間違いなく本人でした。趣味の悪い鎧もそうですが顔も確認しました。 顔面を蒼白にし、まるで何かから逃げるように飛び出してきたのです。 そして、そのまま屋敷の外へと飛び出していきました。 後藤/(ん……今の証言、何かおかしくないか?) 知恵留/どうしました。証言に不自然な点でもありましたか? 【提出された証拠品】 被害者に刺さっていた包丁 (傷跡から凶器と断定。指紋は検出されなかった。 新品。一般に市販されているタイプの物で広く流通している。 販売先を県内に限定し、ここ2ヶ月の販売総数を調べた時点で売り先の調査を断念した) 排水口から発見された血痕の写真 (庭の水撒きに使う水道の排水口から被害者の血液が発見された。 恐らくはここで返り血を洗い流したと見ている) 被害者の写真 (致命傷となった傷以外の外傷は見られない。 無抵抗のまま刺された可能性が高い。ただ右手の位置が若干不自然。 写真では分からないが、手に機械油が付いているらしい) 血に染まったタオル (大きさはバスタオルぐらい。大量の返り血で黒く染まっている。 指紋も被害者以外の血液も検出されなかった) 衛宮邸内に落ちていた花束 (捜査の結果、教会の花壇に咲いていたものと切り口が一致した) 衛宮士郎の解剖記録 (死亡推定時刻は×月×日、午前6時~午前7時の間。 心臓を一突きされて即死。凶器と思われる包丁が刺さったままだった) (選択)この証言と矛盾する証拠はある? ある:Y-【証拠品】 ない:N 291 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/15(日) 13 35 01 ――――異議あり! 後藤/被告人は道場を出てそのまま出て行ったのですね? アルトリア/ええ、そうです。 後藤/裁判長! 彼女の証言はこの証拠と矛盾しています! 証拠品『排水口から発見された血痕の写真』を提出しました。 後藤/被告人は返り血を洗い流してなどいなかった! つまり、犯人は別に存在するのです! ――――い、異議あり! アーチャー/先程も述べたように検察側は被告人が証拠隠滅の為に戻ったと主張する! 証人が目撃したのが二度目に訪れた時ならば水道を使わなかったとしても不自然ではない! 後藤/いえ、それは有り得ません。 検察側の主張では衝動的に被害者を殺害した後、現場から逃走。 その後、再び現場に戻ってきて指紋などの証拠を隠滅した、そうですね? アーチャー/ああ、その通りだ。 後藤/それなら被告人は最初から冷静に返り血を全て洗い流した事になる! そんな余裕があれば現場の指紋も拭き取る事も出来たはずだ! アーチャー/な、な、なんでさァァァーーー!! 知恵留/確かにそれは不自然ですね。 アーチャー/………すまない。若干取り乱したようだ。 では検察側は二度目に訪れた時、最初に水道に向かい、 そこで返り血を洗い流した後、指紋を拭き取ったと主張する。 これならば矛盾はない。それに罪を犯した者は時折不整合な行動を取る事もある、 理解不能な行動をしたとしても、それが証拠とは成り得ない。 後藤/そんなこじ付けが通るとでも……。 知恵留/なるほど。一理ありますね。 後藤/通っちゃった!? アーチャー/賢明な判断に感謝します。 さて、検察側としては目撃者一人で十分なのだが、 彼女のアリバイが気になると言うなら新たな証人を召喚しよう。 他に尋問する事はあるかね、後藤弁護士。 (選択)他に聞きたい事か……。 A/大河の『仕返し』とは? B/自室で寛ぐとは具体的に何を? C/自分で食事を作らないのですか? 326 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/15(日) 21 47 45 後藤/自分で料理とかなさらないんですか? アルトリア/……恥ずかしながら全くと言っていいほど。 シロウや桜の料理がとても美味しいので私が作るよりはと思って……。 知恵留/ダメです。ちゃんと自炊しなさい。 カレーなら何にでも合いますし、何杯でもおかわりできますよ。 アルトリア/検討してみます。 ――――異議あり! 蒔寺楓/被害者が料理上手だって? そんなはずはないよ、こいつを見てみな! 証拠品『現場から勝手に持ち出した被害者の醤油瓶』を提出しました。 後藤/ただの醤油瓶に見えますが? 蒔寺楓/未熟者め! 外見に囚われるな! 心の眼で見ろ! コイツの中身はソイソースじゃなくてオイスターソースなのさ! つまり被害者は醤油とオイスターの区別も付かない味音痴なのさ! アルトリア/……それは大河のイタズラです。先程述べた『仕返し』とはその事です。 蒔寺楓/おお、新証言が飛び出したぞ! ほら、レッドの兄ちゃん、メモメモ! ――――待った! アーチャー/待て! 何故、貴様が外見では判別できない中身の違いを知っている? 蒔寺楓/う……それは……フォースというかセブンセンシズというか。 アーチャー/言えないなら言ってやろう! 貴様は実際にそれを使ったから知ったのだ! 現場においてあった朝食、大方目玉焼きだろう! 朝、食事も摂らずに駆けつけ、台所から漂う料理の匂いに腹を空かせた貴様は、 現場保存の鉄則を怠り、それに手を付けたのだ! 違うか!? 蒔寺楓/げ! 見てたのか!? アーチャー/初歩的な推理だ。だが今の言葉、しかと聞いたぞ。 蒔寺楓/ハッ! しまった! アタシとした事が! アーチャー/来月の査定を楽しみに待っていろ。 それまで首が繋がっていればの話だがな。 蒔寺楓/う……うう…ソーメンばっかりじゃ身体がもたないぜ アーチャー/国民への奉仕を怠る無能な公僕の話はさておき、 アルトリア氏が目撃したのがギルガメッシュに間違いはない、 これは検察と弁護側の共通の認識だろう。 そして証人のアリバイについてだが、これを証言する人物を召喚したいと思う。 被害者と証人の親友である間桐桜を召喚する許可を頂きたい。 知恵留/召喚を認めます。 アーチャー/ご英断に感謝します。 アルトリア氏と入れ替わるように証言台に立ったのはどこか陰のある少女だった。 しかし温厚そうな人柄と優しげな表情はそれを補って余りあるほど彼女の魅力を引き出していた。 緊張した面持ちの彼女にアーチャー検事はお決まりの文句で尋ねる。 アーチャー/証人、氏名と職業を。 間桐桜/間桐桜、市内の大学に通っています。 アーチャー/……ようやくまともに受け答えしてくれる証人が出たか。 裁判長。彼女は当日、被害者の自宅を訪問して朝食を作っています。 知恵留/では事件当日の事について証言をお願いします。 証言開始~当日の事について~ 【証言者:間桐桜】 私は朝5時半より少し前でしょうか、家を出て先輩の家に向かいました。 その時、出かける直前に先輩の家に電話を入れています。 電話に出たのは藤村先生でしたね、これから学校に行くところだと言ってました。-① 到着したのは6時頃で、まだ居間には誰もいませんでしたが、 アルトリアさんの部屋から音楽が聞こえていたので居るのは判りました。-② エプロンに着替えて料理に取り掛かって5分経ったぐらいでしょうか、 土蔵から先輩がやって来て料理を手伝ってもらいました。 10分ぐらいしてから先輩は『朝食の前にお腹を減らしてくる』とタオルを持って道場に向かいました。-③ その後、しばらくしてアルトリアさんが部屋から出てきましたので玄関前の掃除をお願いしたんです。 配膳も終わり、準備万端整えて待っていたんですが、アルトリアさんも先輩も戻ってこないので不安になり、 外へ出ようとした所で突然、血相を変えたアルトリアさんが飛び込んできました。 ………私が先輩の死を知ったのは彼女の口からです。-④ 知恵留/なるほど。アルトリアさんのアリバイは彼女が、彼女のアリバイはアルトリアさんが立証しているのですね。 アーチャー/そうです。これにより検察側は第三者が存在したという弁護側の主張を否定します。 そして、唯一犯行が可能だったのはギルガメッシュのみ。もはや結論は出たかと。 知恵留/確かに。もはや議論の余地はありませんね。 ――――異議あり! 後藤/まだです! まだ立証されていない部分があります! アーチャー/面白い。これ以上、何を立証すると言うのだ? (選択)まだ議論が交わされていないのは…… A/アルトリアが自室に篭っていた空白の一時間 B/間桐桜が料理に要した時間 C/間桐桜の自宅から被害者宅までの移動時間 341 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/15(日) 23 22 34 後藤/そう! アルトリアさんが自室に篭っていた一時間が不明のままです! アーチャー/何を言い出すかと思えば戯けた事を。 確かに5時半から6時前までは彼女一人で証言してくれる者はいない。 だが犯行があったとされる6時以降は間桐桜が来ていた。 その間、道場と自室を行き来するには居間の前を通らざるを得ない。 もし仮にアルトリア氏が道場で待ち伏せして殺害に及んだとしても、 戻る時に証人に気付かれてしまう可能性が高い。 通路が塞がれていた以上、アルトリア氏が部屋で何をしていようと、 いや、極論すれば部屋にいなかったとしても何の問題もないのだ。 議論を交わさなかったのは、その必要性がなかったからに過ぎない。 知恵留/あまり議事を遅らせると罰を与えますよ? 後藤/うう……すみません。 (選択)1ペナが付いてしまった、注意しないと A/蒔寺刑事の給与額 B/間桐桜が料理に要した時間 C/間桐桜の自宅から被害者宅までの移動時間 362 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/16(月) 21 45 23 後藤/(この論議の争点はアリバイの立証だ。 アルトリアさんは証人によって完全に保証されている。 だけど証人は6時から6時半まで料理をしていたと言っているだけで、 それを保証してくれるものは何もない。なら犯人は彼女以外に考えられない) 後藤/証人の家から現場までかかる時間についての議論がまだです! アーチャー/ほう? 6時前に辿り着いたとしても犯行は不可能だ。 それより先に着いたとしても死亡推定時刻は6時以降に変わりはない。 後藤/いえ、早く現場に到着すれば出来る事があります。 アーチャー/……ほう、面白い。彼女に何が出来たというのだ? 後藤/料理の支度です。もし証言よりも早い時間に到着したならばアリバイは成立しません。 彼女が料理をしていたと証言した時間に犯行が行われた可能性があります。 知恵留/静粛に! 弁護人、その言い方ではまるで証人が犯人のように聞こえますが。 後藤/あくまで可能性の話です。アーチャー検事、いかがですか? アーチャー/着眼点は悪くない。我々も彼女のアリバイを徹底的に調べ上げた。 まず出発した時間だが藤村大河より証言を得る事が出来、 また通話記録の上でも確認が取れたので間違いない。 到着時間は女性の徒歩ならば約30分、実際に女性10名に協力してもらい計測した。 全力で走れば10分は短縮できるかもしれないが息が切れる上に目に付きやすい。 そんな状態では怪しまれて、とても犯行に及べるとは思えん。 後藤/ですがバイクや車、タクシーなどを使えば……。 アーチャー/早朝の閑静な住宅街だ。エンジン音がすれば誰かが気付くだろう。 藤村大河の出勤スクーターでさえ周りから苦情が来ているのだからな。 仮に自転車などにしても周囲を捜索しても発見できない以上、その使用は認められない。 後藤/では料理にかかった時間はどうですか? 朝食ならば簡単なもので済ませられますし、それほど手間はかからないはずです。 夕食の残りから流用して使えば更に短縮できると思いますが。 アーチャー/無論、それも調べた。朝食にしては手が込んでおり、 また『昨夕の料理は全て平らげました、実に美味でした』とアルトリア氏の証言も取れている。 実際に主婦10名に協力してもらい計測した結果、配膳まで30分前後という数字が出た。 証人が料理上手だったとしても被害者を殺しに行く時間は無かった! 後藤/その協力者というのは一体……? 思わず口をついて出た疑問に隣に立っていた所長が絹にも似た髪を掻き揚げる。 その口元には不敵な笑み。誇らしげな彼女の姿を目にした瞬間、盛大に異議を唱えた。 ――――異議あり! 後藤/その、所長は、何というか、一般的な主婦として見るのはどうかと。 旦那さんの体調が不安になってくるような味噌スープとか。 アーチャー/心配は無用だ! 他の真っ当な主婦達によって平均化されている! 確かに献立と大分違う物が出来上がってしまったが料理にかかった時間はそう変わらん! キャスター/………貴方達、そんなにトンカツにされたいの? 知恵留/静粛に! メディアさん、法廷で殺害予告は止めてください。 証言開始~当日の事について~ 【証言者:間桐桜】 私は朝5時半より少し前でしょうか、家を出て先輩の家に向かいました。 その時、出かける直前に先輩の家に電話を入れています。 電話に出たのは藤村先生でしたね、これから学校に行くところだと言ってました。-① 到着したのは6時頃で、まだ居間には誰もいませんでしたが、 アルトリアさんの部屋から音楽が聞こえていたので居るのは判りました。-② エプロンに着替えて料理に取り掛かって5分経ったぐらいでしょうか、 土蔵から先輩がやって来て料理を手伝ってもらいました。 10分ぐらいしてから先輩は『朝食の前にお腹を減らしてくる』とタオルを持って道場に向かいました。-③ その後、しばらくしてアルトリアさんが部屋から出てきましたので玄関前の掃除をお願いしたんです。 配膳も終わり、準備万端整えて待っていたんですが、アルトリアさんも先輩も戻ってこないので不安になり、 外へ出ようとした所で突然、血相を変えたアルトリアさんが飛び込んできました。 ………私が先輩の死を知ったのは彼女の口からです。-④ 【提出された証拠品】 被害者に刺さっていた包丁 (傷跡から凶器と断定。指紋は検出されなかった。 新品。一般に市販されているタイプの物で広く流通している。 販売先を県内に限定し、ここ2ヶ月の販売総数を調べた時点で売り先の調査を断念した) 排水口から発見された血痕の写真 (庭の水撒きに使う水道の排水口から被害者の血液が発見された。 恐らくはここで返り血を洗い流したと見ている) 被害者の写真 (致命傷となった傷以外の外傷は見られない。 無抵抗のまま刺された可能性が高い。ただ右手の位置が若干不自然。 写真では分からないが、手に機械油が付いているらしい) 血に染まったタオル (大きさはバスタオルぐらい。大量の返り血で黒く染まっている。 指紋も被害者以外の血液も検出されなかった) 衛宮邸内に落ちていた花束 (捜査の結果、教会の花壇に咲いていたものと切り口が一致した) 衛宮士郎の解剖記録 (死亡推定時刻は×月×日、午前6時~午前7時の間。 心臓を一突きされて即死。凶器と思われる包丁が刺さったままだった) 現場から勝手に持ち出した被害者の醤油瓶 (蒔寺楓が押収した品。藤村大河のイタズラにより中身は醤油ではなくオイスターソース) 後藤/(こうなったら彼女の証言を打ち崩していくしかない) (選択)行動を選択してください (例:証言-②の部分をゆさぶる場合、Ⅰ-②。 証言-③の部分に花束を突きつける場合、Ⅱ-③【花束】) Ⅰ/ゆさぶる Ⅱ/つきつける Ⅲ/ここまでは問題ない 376 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/18(水) 18 45 55 ――――異議あり! 後藤/朝早くに電話をされたという事ですが、何故そんな時間に? 間桐桜/ええ。実は昨晩伺った時に合鍵を忘れてきてしまって……。 それで、もし着いた時に鍵が掛かっていたら困るので確認したんです。 後藤/(やはり、この質問は予期されていたか) アーチャー/それと通話記録だが間違いなく彼女の家からの電話だ。 ちなみに彼女の家にある電話機は黒電話で、 外から受けた電話を繋ぐなどという便利な機能は付いていない。 これで納得して貰えたかな? 犯人は被告しかいないという事実に。 後藤/ではタオルについてですが、話にあったタオルというのは現場にあった物と同一ですか? 間桐桜/ええ、同じ物です。刺繍入りのですよね? 後藤/それはおかしいですね。 間桐桜/……え? 後藤/このタオルからは指紋が検出されていないんですよ。犯人は勿論、被害者のものもね。 間桐桜/え? そんな……だって、あの、それは……。 ――――異議あり! アーチャー/それは蒔寺刑事の口から説明したはずだ。流血により指紋が上手く採取できなかったと。 間桐桜/そ、そうですよ。急に変な事言わないでください! 先輩以外の誰がタオルを道場に持っていくんですか!? 後藤/(随分としどろもどろな返答だったな、予想外だったからか。 それにしても証人はここまでの法廷内容を知らないのか、 もし知っていればアーチャー検事と同じ切り返しが出来た筈だ。 なら、そこに付け込めばボロを出すかもしれない!) (選択1)それには戦略を立てないと……今、争うべきは何処だろうか? A/6時以前の間桐桜の行動 B/6時から6時半まで料理をしていたというアリバイ C/6時半以降から死体が発見されるまでの行動 (選択2)行動を選択してください (例:証言-②の部分をゆさぶる場合、Ⅰ-②。 証言-③の部分に花束を突きつける場合、Ⅱ-③【花束】) Ⅰ/ゆさぶる Ⅱ/つきつける Ⅲ/ここまでは問題ない 403 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/19(木) 00 41 51 後藤/(そうだ。その時間に『料理をしていなかった』と立証できればアリバイは崩れる。 その為には料理をしていた時の事を突っ込むのが一番だ!) ――――待った! 後藤/被害者も料理を手伝ったのですね? 間桐桜/ええ、そうです。でも香の物を刻んで盛り付けたりする程度で時間の短縮とは関係ないですよ。 後藤/(やはり証人は知らないんだ。提出された証拠の事も) 知恵留/弁護人。今の証言は重要な事なのですか? 【提出された証拠品】 被害者に刺さっていた包丁 (傷跡から凶器と断定。指紋は検出されなかった。 新品。一般に市販されているタイプの物で広く流通している。 販売先を県内に限定し、ここ2ヶ月の販売総数を調べた時点で売り先の調査を断念した) 排水口から発見された血痕の写真 (庭の水撒きに使う水道の排水口から被害者の血液が発見された。 恐らくはここで返り血を洗い流したと見ている) 被害者の写真 (致命傷となった傷以外の外傷は見られない。 無抵抗のまま刺された可能性が高い。ただ右手の位置が若干不自然。 写真では分からないが、手に機械油が付いているらしい) 血に染まったタオル (大きさはバスタオルぐらい。大量の返り血で黒く染まっている。 指紋も被害者以外の血液も検出されなかった) 衛宮邸内に落ちていた花束 (捜査の結果、教会の花壇に咲いていたものと切り口が一致した) 衛宮士郎の解剖記録 (死亡推定時刻は×月×日、午前6時~午前7時の間。 心臓を一突きされて即死。凶器と思われる包丁が刺さったままだった) 現場から勝手に持ち出した被害者の醤油瓶 (蒔寺楓が押収した品。藤村大河のイタズラにより中身は醤油ではなくオイスターソース) (選択)この証言に突きつける証拠は……。 ある/Y-【証拠名】 ない/N 417 :逆月裁判 ◆4wSURDq66Q:2009/02/19(木) 22 25 08 ――――異議あり! 証拠品『被害者の写真』を提出しました。 間桐桜/この写真がどうかしたんですか? 後藤/被害者は料理を手伝った、そう仰いましたね? 間桐桜/ええ、それが何か? 後藤/それは有り得ないんですよ、何故なら……。 後藤/被害者の手は機械油で汚れていたから! 間桐桜/!!? 後藤/料理上手な彼が衛生面に注意を払わないはずがない。 ましてや手に付いた機械油を落とさないなど考えられない事です。 これを見落としたのは不注意でしたね。 間桐桜/ああああぁぁあああああ!! 雄叫びとも悲鳴ともつかない絶叫が裁判所に轟く。 証人は狂ったかのように何度も何度も柵に拳を叩きつける。 血が流れようとも止まらずに苛立ちをぶつけ続ける。 髪を振り乱して暴れる様は正しく般若そのものだった。 アーチャー/しょ……証人? 間桐桜/大丈夫、大丈夫よ、桜。ここまで上手くやってきたじゃない。 あんな三下連中になんか捕まってたまるものですか。 知恵留/静粛に!静粛に! 間桐桜/すみません。ちょっと先輩が死んだショックで記憶が混乱してたみたいです。 証言を変えたいんですけど何も問題ありませんよね? 知恵留/それは構いませんが本当に大丈夫ですか? 貴方の言動は明らかに常軌を逸しています。 休廷を挟んで、それからでも遅くないと思いますが。 間桐桜/うるさいな。さっさと始めてください。 証言開始~料理の手伝いについて~ 【証言者:間桐桜】 私、手伝ってもらったって言いましたけど勘違いでした。 確かに先輩は居ましたけど料理自体は手伝ってもらってないです。 ただ、味見をしてもらったり、後は醤油を貸してもらいました。 たまたま、その日は醤油を切らしてしまって、私のも無かったので先輩のを分けてもらいました。 それを手伝いと思い込んでいたみたいです。 知恵留/確かに問題はありませんね。弁護側は何かありますか? 後藤/(いよいよ大詰めだ。これで勝負は決まる!) 【提出された証拠品】 被害者に刺さっていた包丁 (傷跡から凶器と断定。指紋は検出されなかった。 新品。一般に市販されているタイプの物で広く流通している。 販売先を県内に限定し、ここ2ヶ月の販売総数を調べた時点で売り先の調査を断念した) 排水口から発見された血痕の写真 (庭の水撒きに使う水道の排水口から被害者の血液が発見された。 恐らくはここで返り血を洗い流したと見ている) 被害者の写真 (致命傷となった傷以外の外傷は見られない。 無抵抗のまま刺された可能性が高い。ただ右手の位置が若干不自然。 写真では分からないが、手に機械油が付いているらしい) 血に染まったタオル (大きさはバスタオルぐらい。大量の返り血で黒く染まっている。 指紋も被害者以外の血液も検出されなかった) 衛宮邸内に落ちていた花束 (捜査の結果、教会の花壇に咲いていたものと切り口が一致した) 衛宮士郎の解剖記録 (死亡推定時刻は×月×日、午前6時~午前7時の間。 心臓を一突きされて即死。凶器と思われる包丁が刺さったままだった) 現場から勝手に持ち出した被害者の醤油瓶 (蒔寺楓が押収した品。藤村大河のイタズラにより中身は醤油ではなくオイスターソース) (選択)この証言に突きつける証拠は……。 ある/Y-【証拠名】 ない/N 逆月裁判 File 3 逆月裁判 File 1 逆月裁判
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【芸能事務所エーチーム2ちゃんねる】伊藤英明の男気&色気が「さらにスゴい!」 映画『3月のライオン』後編 伊藤英明(エーチーム所属) 男気&色気が 「さらにスゴい!」 映画『3月のライオン』4月22日(土)から“愛の後編”が公開 現在、“闘いの前編”が公開中の映画『3月のライオン』。いよいよ4月22日(土)から“愛の後編”が公開となることに合わせ、男気×色気が「さらにスゴい」ことになっているという、伊藤英明(エーチーム所属)演じる後藤正宗 九段の場面写真が到着した。 本作は、孤独な将棋のプロ棋士・桐山零(神木隆之介)が、島田開 八段(佐々木蔵之介)、宗谷冬司 名人(加瀬亮)など、人生を背負った個性豊かなプロ棋士たちとの壮絶な闘いを繰り広げていく。 なかでも、伊藤さん演じる後藤について、SNS上ではスーツや着物から垣間見える屈強な肉体に「色気が尋常じゃない」「これは香子も夢中になるの納得」との声が寄せられ、対局シーンを始めとする後藤の恐ろしい存在感には「怖えーしカッケー!」「目力よ!!!」「ガン飛ばし合いシーンとか最高か」「迫力に黙らされてしまった、後藤の信念はこれなんだなって納得した」「オラオラ感すらかっこいい」とそのハマり役ぶりを絶賛する声が続出。 今回、そんな伊藤さん演じる後藤の男気×色気あふれる姿を切り取った写真が一挙到着。『海猿』シリーズをはじめ肉体派のイメージがある伊藤さんだが、本作で演じる後藤は、恐ろしい眼力と存在感で周囲を威圧し、ガチンコ対決も厭わない強面プロ棋士。その一方で、入院中の妻を足しげく見舞い、大切に思う一面も。かと思えば、零の義姉である香子(有村架純)ともつかず離れずの大人の関係を続けている複雑なキャラクターだ。 大友啓史監督は「後藤というキャラクターの面白さはうそがないところ。妻への愛も香子への想いも本当で。伊藤英明という俳優の魅力は、屈強であると同時にきわめて繊細なところだと思うんですね。そんな彼が演じる後藤なら、自分の感情と真正面から向き合い、散々もがくはずだと(思いました)」と大絶賛を贈る。 また、ひと足先に前後編イッキ見した観客からは、「一番衝撃的だったのは伊藤英明の後藤。圧倒的な迫力と強さ、でも人間味があって凄かった。グッときた」「後編の伊藤英明がすっごい良くて、それ観るためにも前編から観てほしいですね」と、すでに惜しみない称賛の声が上がっている。後編では、伊藤さんのキャスティングが決まった後、新たに大友監督が書き込んだドラマチックなシーンもあるとか。ついに主人公・零との直接対決も描かれるだけに、前編でノックアウトされた世の女性陣は、後編の「さらにスゴい伊藤英明」も要チェックだ。 『3月のライオン』は【前編】が公開中、【後編】は4月22日(土)より全国にて公開。 ⇒映画「3月のライオン」公式サイト ⇒伊藤英明の男気&色気が「さらにスゴい!」『3月のライオン』後編 | cinemacafe.net ⇒【エーチーム噂】伊藤英明&佐々木蔵之介の色気がヤバすぎてスクリーン爆発するレベル|エーチームオーディションに関するあれこれ ⇒【芸能事務所エーチーム噂】伊藤英明の男気&色気が「さらにスゴい!」 エーチームグループオーディションに関するQ&A ⇒【芸能事務所エーチーム評判】伊藤英明の男気&色気が「さらにスゴい!」 | エーチームグループオーディションの評判と噂 ⇒【エーチーム噂】伊藤英明の男気&色気が「さらにスゴい!」- エーチームオーディション/エーライツデビュー - Yahoo!ブログ ⇒伊藤英明 | A-Team.Inc(エーチーム) ⇒エーチームグループオーディション|所属タレント|伊藤英明 ⇒伊藤英明とは - はてなキーワード ⇒エー・チームとは - はてなキーワード 映画『3月のライオン』予告編 3月のライオン エーチーム エーチーム 伊藤英明 エーチーム 評判 エーチーム2ちゃんねる エーチームって エーチームグループ 噂 エーチーム噂 伊藤英明 伊藤英明 映画
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757 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/01(金) 00 10 41 ID QuW3Whcc0 786 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/01(金) 19 22 58 ID QuW3Whcc0 813 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/01(金) 22 52 37 ID QuW3Whcc0 5 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/04(月) 18 00 09 ID DxkaIgE.0 41 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/06(水) 09 22 34 ID avFWzJ0w0 79 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/06(水) 20 07 28 ID avFWzJ0w0 101 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/07(木) 17 17 21 ID QUpHfQYU0 115 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/07(木) 20 05 30 ID QUpHfQYU0 183 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/09(土) 08 03 27 ID ugPAb/ao0 202 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/09(土) 20 45 47 ID ugPAb/ao0 362 :アイドル審議会黙示録 ◆M14FoGRRQI:2009/05/12(火) 21 30 06 ID VqB6GJeo0 370 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/13(水) 08 09 14 ID .ke4AT7o0 405 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/14(木) 18 59 13 ID 0nELOPM20 535 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/16(土) 20 57 26 ID cg5g43j.0 757 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/01(金) 00 10 41 ID QuW3Whcc0 【9月1週】 後藤P「おはようでござる」 君は事務所に到着し早々、 奈須チーフ「でちゅハンマー!」 後藤P「ぷげらっちょ!」 奈須チーフにハンマーで殴られた。 後藤P「いきなり何するでござるか奈須チーフ!」 奈須チーフ「だまるでちゅよ、社長はもっと怒っているでちゅよ」 武内「やあ後藤君。今日は待ちに待った給料日だね。ちょっと今回の審査は厳しくいこうかなあ」 何か社長の後ろに炎的なオーラが見える。マキジを始めとしたアイドルは近寄りがたい 雰囲気を察し、いつもは命令しないとエト以外は応接室とかでくっちゃべっているのに 挨拶もそこそこにスタジオに向かっていく。 後藤P「あー、それじゃあ拙者もマキジに今週の訓練指導しないとなっと」 武内「その前に給与についてが先だよ」 逃げ出そうとする君の頭をぐわしと掴む社長。君は必死に頭を回転させ彼らが怒っている 原因を考えるが先月は仕事は成功していたし、皆で全国ツアー見に行った時は二人ともいつも 通りだった。君には何も思い当たる所が―あった。 武内「はい、今月の査定ね」 仕事:大成功1件=7ポイント 経費:マネキンが侵入者の足どめに使われる=3ポイント、ORTたん達へのシュークリーム=1ポイント 減額:秋葉流=マイナス5ポイント 合計6ポイント ゴールドアイドルの相場:1ポイント=3万円=15ガバス 武内「幸い誰にも見られてなかったみたいだから良かったけれど、本来減給じゃ済まない所だからね」 後藤P(マキジー!社長にチクったでござるかー!!) ミナミの帝王「後藤はん、ここはがつんと行く所でっせー!」 こんな時でもミナミの帝王の効果で給料交渉が有利に!選択肢が追加された! 【シンゴー!】 アンテナ良し:この評価で十分 テレビ良し:秋葉流のマイナスが大きすぎると文句を言う(目標値+3) 俺ツヨシ:裸で何が悪い!秋葉流のマイナスを無しにしてくださいと主張する(目標値+6) 786 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/01(金) 19 22 58 ID QuW3Whcc0 41ィ!25、ろくじゅ!さーん!40ゥ! 合計+9!説得成功! 君は荒ぶる鷹の様に舞い上がり、三歩分後方に着地すると同時に額を地面に擦りつけた。 これぞスカイハイ・ジャンピング・土下座だ! コルネリウス・アルバはこの芸で大スターに登りつめたと言われているぞ! 後藤P「反省しているでござる反省しているでござる反省しているでござる」 武内「わ、わかった。確かにこの減給額は大きすぎるね。だから頭を上げて」 と、言うわけで本人も反省していて実害も無かった事なので秋葉流の減額が-5から-3になった。 武内「訂正後の合計は8ポイント。今月の振り分けはどうするかい?」 【選択肢】残金25万5150円と80ガバス、そしてこの後は仕事の選択 半々:12万円と60ガバス 金こそが全て:18万円と30ガバス ファミ通大好き:6万円と90ガバス 813 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/01(金) 22 52 37 ID QuW3Whcc0 武内「はい、それじゃあこれが今月分」 君は18万円と30ガバスを受け取った。 給料交渉も終わり、いよいよ仕事の選択である。 【CDデビュー】 君が武内社長に相談したところ、今のマキジならばCDを出してもいいと言う事だった。 ただし、CDデビューというものは難しいものであり、ヘタすると赤字になり君やマキジ の懐が痛んだり最悪事務所が傾くかも知れない。必要なのはマキジ自身の実力と 作詞家との相性・・・とにかく大変な仕事である。しかし、メリットも多い。 この難易度の高い仕事を大成功させたならマキジは一躍時の人である。 そしてこの仕事は2回分の成功とみなされる。 9月1週~9月2週の2週間を使っての中期の仕事になる。 9月1週:作詞家探し・歌のテーマ決定 9月2週:レコーディング・結果発表 【ORTたんの友達としてテレビに出演】 先の全国ツアーで大活躍した6人のアイドル達。 その一人ゴールドアイドルのORTたんの特集が組まれる事になった。 めでたい話だねえ。その際、3002の仲間の一人が出演する事となったのである。 9月1週の仕事。 【マキジ・オブ・ザ・ハボリム(仮)】 映画の仕事第3弾。あの監督は相当マキジを気にいったみたいである。 今回の仕事はゾンビ物。マキジに与えられる役は・・・主役! 主役ともなればもうごまかしは効かない果たしてマキジは女優として本物か!? なお今回の映画の原案には元四天王のワラキア氏の協力があるらしい。 9月2週の仕事。 【新車発表会のイメージガール】 発明家としても有名な超大物俳優コルネリウス・アルバ氏の開発した 『スーパーウルトラデラックスファイナルロマンシングドラゴンマシーン』 のお披露目にイメージガールとして参加。アルバ氏を始めとした大物とお近づきになるチャーンス! 9月3週の仕事。 【穂群原の歌姫】 「あのさ蒔寺さんって一応アイドルやってるんでしょ?最近私達の通っている学校が 色々ときな臭い事は知ってるわよね。貴方の歌声で対立しあっている部活に平和を 説いてくれないかしら?だいじょーぶ、危ない事なんて何にもないから」 依頼人は遠坂凛。学園のマドンナ的存在でありマキジの親友でもある。 マキジも「ようやく私がアイドルとして学校で認められたぜ!」とかなり乗り気なようだ。 9月4週の仕事。 後藤P「CDデビューを選ぶと9月1週と2週の他の仕事が出来なくなるでござるな」 武内「なるべく多くの仕事が出来るように出来るだけ被らせずに交渉してきたんだけどね。 CDを出す時期というのは簡単には動かせないからどうしても被ってしまうんだよ」 後藤P「そういうもんでござるか」 奈須チーフ「オリコンチャートとかベストテンとか大人の事情でちゅよ」 仕事を一通り見た途端君の持っているロアの書の一冊が輝きだす。 後藤P「うおっまぶし」 ???「私はロアの書の霊、突然だが各仕事のおおよその目標値を教えよう!」 CDデビュー:ボイス55~95、ダンス・ルックス・キャラクターそれぞれ40~80(レコーディングまでの選択で大きく変化) ORTたんの友達としてテレビに出演:キャラクター60 マキジ・オブ・ザ・ハボリム(仮):ルックス65、ダンス55 新車発表会のイメージガール:ダンス65 穂群原の歌姫:ボイス60、好感度6/10 ???「上記の数値はこの数値を下回っているとナベアツで不利になるという目安だ! ただし不味い選択肢を選んでいたりマキジにバステがあったり疲労度が高い場合はこの限りではないぞ。 新車発表会に必要なのがダンスなのが意味不明?私にも良く分からん、でもダンスが必要なのだよ」 一通り言うとロアの書の光は失われ場を静寂が支配した。 武内「…後藤君」 後藤P「はい」 武内「便利だねソレ」 奈須チーフ「後で僕にも貸してほしいでちゅ」 【選択肢】9月の仕事を選んでください。仕事を被らせちゃやーよ。 チェンジゲーッタースイッチオーン:【 】をやらせる。(マキジ・オブ・ザ・ハボリム(仮)、新車発表会のイメージガール) 5 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/04(月) 18 00 09 ID DxkaIgE.0 まだCDデビューは時期尚早だと君は判断、業界人とのコネが得られそうで マキジの実績も積める仕事を引き受ける事にした。 後藤P「と、言うわけでCDデビューは保留、来月まで待ってほしいでござる」 マキジ「えー!後藤君のバカ侍!ヘタレP!秋葉流!」 ネコアルク「おやおや、珍しくあの二人の仲がおかしな事になっているぜい」 ネコカオス「夫婦喧嘩はネコも喰わないのだ」 奈須チーフ「はいはい、サボるな。お前らも今大事なとこでちゅよ。 一発屋で終わらない為にも声とボディラインに磨きをかけておくでちゅ」 エト「ところでマキジ、秋葉流とは何の事だ?」 マキジ「…」 後藤P「ノーコメントでござる」 ルックス:75(-3) ボイス:82(+1) ダンス:69(+2) キャラクター:73(+6) 疲労度 0(自動回復で相殺) 仕事:9月2週に映画撮影、9月3週に新車イメージガール アイドルランク:B(ゴールドアイドル)、次の仕事成功でランクアップ。 (可能な訓練の内実行済みのもの) ウマウマ、ヤンマーニ、発声練習、にぱー、マサルさん、ゴッドボイス、 ドナルドエクササイズ(中級) 、ねるねるねるね、 スペシャルファイティングポーズ、ドナルドチェアエクササイズ、 (可能な訓練の内未実行のもの) 新世界の神、画太郎ばあちゃん、地球最後の日、ドナルドエクササイズ(初級)、 サタデーナイトフィーバー、バックステッポ、ケンジャの舞 【選択肢】 小杉十郎太:【 】をやらせる。 宮村優子:何のメリットも無いけれど休ませるとか言ってみたりして。 41 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/06(水) 09 22 34 ID avFWzJ0w0 今日のトレーニングはバックステッポ。 君はソルの役でマキジをサポートする。 黒桐「良く間違えられるけど、バックステッポするのはソル使いのブロントさんじゃなくて 彼と戦った恥知らずのカイ使いなんだ」 式「ふーん」 黒桐「でも今ではブロントさん自身も華麗なバックステッポの使い手だとして 伝わっているからナイトがカカッと華麗にバックステッポするのも間違った用法ではないとされているよ」 後藤P「いいでござるか、これから拙者がハイスラで突っ込むから マキジはバックステッポでかわすでござるよ」 マキジ「お、おうっ!」 後藤P「ハイスラァ!」 マキジ「ぷげらっ!」 一回目のハイスラを普通に喰らい壁際に転がるマキジ。 バックステッポの道は一日にしてならず。ブロン道はシグルイなり。 後藤P「まだまだぁ!立ち上がるでござるよマキジ!そして拙者のハイスラを完全に避ける までこれの繰り返しでござる!」 マキジ「な、なあ、これってアイドルになるのに必要なのかな?」 後藤P「ねるねるねるねとかやっといて何を今さら!とりあえず習得すれば必要かどうか―ウッ!」 マキジ「ど、どうしたんだプロデューサー?いきなり黙って」 後藤P「ハイスラァ!」 マキジ「ぷげらっ!」 マキジが君のフェイントを織り交ぜたハイスラを回避出来るようになったのは10回目だった。 これでマキジも今日から立派な恥知らずのカイ使いだ! 後藤P「んじゃ次はハイスラをスカした拙者にアルバファイアのポーズを決める練習でござる」 マキジ「まだあんのかよー!」 【大河の成果】 マキジとの練習を切り上げ武内社長達と3人で彼女の話を聞いた時、 君はその発言を疑った。理屈ではその通りなのだが、何故か間違っている気もする。 大河「皆がお望みの情報、邪気眼王の正体はちゃんと見極めたわよ。 これまでの彼に対するヒント、『前の事務所では力を発揮出来なかった』、 『四天王の両儀式と似た動きをする』、『デビューは夏祭りだから移籍はその少し前』、 『うちの蒔寺さんに並みならぬ思いを抱いている』、この情報全てに該当するアイドルが一人だけいるわ」 奈須チーフ「それは誰でちゅか?」 大河「邪気眼王の正体はズバリ、元プラズマプロの白純リオよ!」 最高の笑顔でゲッツポーズの大河。武内社長と奈須チーフはその答えになるほどと首を縦に振り納得している。 【選択肢】 ユズ:なにもおかしい所は無い。きっとこれが正解なのだろう。 アツロウ:いや、大河は間違っている。 79 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/06(水) 20 07 28 ID avFWzJ0w0 大河が言ったNANAYAの正体のヒントの数々、そしてその条件を満たしているリオ。 確かに他にそんなアイドルはいないならリオとNANAYAをイコールで結んでもいい。 でも君は何か納得がいかなかった。 後藤P「あいやまたれい」 大河「どうしたのよ後藤君」 後藤P「本当に白純リオ殿が邪気眼王なのでござろうか?」 大河「何よー、私の情報収集と推理が間違っていたって言うの? そんな事言うからには私が間違っているという確証とかあるの?」 【大河が纏めた邪気眼王の情報】 『前の事務所では力を発揮出来なかった』、 『四天王の両儀式と似た動きをする』、『デビューは夏祭りだから移籍はその少し前』、 『うちの蒔寺さんに並みならぬ思いを抱いている』 【君が知るリオの情報】 『プラズマプロのPや社長から厳しい事を言われていた気がする』、 『四天王のモノマネをやっていた』、『龍神祭の時点でプラズマの看板はクマクマになっていた』、 『マキジと一緒の仕事で四天王にまったく太刀打ち出来ず大失敗していた』 後藤P「ぐぬぬ、確かにこれだけ共通点があると同一人物と考えてもよさそうでござるが」 【選択肢】 くらえ!:リオが邪気眼王ではないと言う証拠・証人を示す【 】(メイク本、タイガーの情報収集結果(邪気目王NANAYA情報、インタビューVTR)、武内社長) 待った!:どう考えてもパンダ師匠だと言ってみる。 すんまそん:大河の推理をひっくり返す材料がないので土下座。 101 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/07(木) 17 17 21 ID QUpHfQYU0 君は自身が感じた違和感を元に証拠を並べていった。 まずはメイク本。 後藤P「こんな本出すぐらいかわいいニューハーフのリオ殿が学ラン着たとしても あんな風に化けれるものでござろうか?」 大河「リオちゃん胸無いし出来ない事もない」 続いて大河が得た邪気目王の情報。 後藤P「この情報はリオ殿がプラズマにまだいた頃からあったでござる、 つまり2106に邪気眼王が入ったのはリオ殿引退より前!」 大河「う、うー、そうだ!きっと邪気目王というトラップの偽情報を元にリオは邪気眼王に改名したのよ!」 トドメにインタビューVTRと武内社長。 後藤P「ここでの発言をもう一度聞いてみるでござるよ。武内社長、この声はリオ殿でござるか?」 武内「うーん、僕の知るリオ君ではないねえ。声を作っているのかもしれないけど」 後藤P「それに発言内容もリオ殿にしてはオカシイでござる」 大河「どこが?」 後藤P「藤村先生の仮定だとNANAYAがマキジの事を何度も口に出すのは 仕事で敗れて恨んでいるからでござるよな?でも、リオ殿がマキジと一緒の仕事で 失敗理由は主に四天王のプレッシャーでござるよ」 大河「へっ、そうなの?」 武内「ああ、そうだったね」 大河「そんじゃさ、邪気眼王がリオくんじゃないなら誰なのよ」 後藤P「…さあ?」 君の発言により、ほぼ白純リオで決まっていた邪気眼王の正体は再び分からなくなってしまった。 リオも違うんじゃないかとまでは分かった。しかし、リオ以上に怪しい人物がいないのも事実。 大河「それじゃあ今回も邪気眼王の情報探し直してこようか?」 【選択肢1・大河の行動指定】 アントキのエノキ:こうなったらリオなのかそれ以外の誰かなのかはっきりさせてやる。 アノコロのヤモリ:それよりも四天王の情報だ。 アンキモをハフリ:今週は出かけずにスパイ対策していてください。 【選択肢2・スパイ大集合】全国ツアーで散っていた人もほぼ戻って来た。ガム一年分食べた黒い人は歯医者です。 オモロー!:+1以上で誰も来ない、0~-2でクソ島、-3~-4で氷室、-5~-8で黒桐、-9以下でスネーク。 【選択肢3・いちごましまろ】この残飯どうしようか? ボロンゴ:マキジにやる。 プックル:大河にやる。 チロゲレ:もう少し寝かせておく。 115 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/07(木) 20 05 30 ID QUpHfQYU0 購入してから一カ月前後かそれ以上たった生菓子を大河に与え四天王の情報を集めさせる。 大河「もぐもぐ。スッパくて甘くっておいしーい!それじゃあ行ってくるわね、 ところでここにおいてあったガム知らない?」 ナベアツさん「明石が休業中だから私が代わりに説明するよ!先週ガムはじゅーめーに 全部食べられたからもう一個も残ってないよ!定期的に食べ物をやるかガムを再度入手しないと 大河がパワーダウンするかも!」 そして、40ゥ!7、よんじゅさん!じゅご!40ゥ! 合計+9!スパイは来なかった。 ナベアツさん「調子戻ってきた?」 以前も言っていたと思うがナベアツさんはsnシステムを管理する妖精だ! ロリ百合にハァハァしている様な心の汚い人には羽の生えたオッサンに見えるぞ! 君にはナベアツさんはどう映っているかな? 【自由行動ターン】 君の元に一通の手紙が届いた。 告知:9月より『本の明石』は『本はやらない』に店名を変更しました。今後ともよろしくお願いします。 後藤P「ひょっとして喧嘩売られているのでござるかこれは?」 【選択肢第一群・マキジ】 そこには元気に走り回る後藤君の姿が!:誘う(推奨値+6) もうヘルペスで秋葉流はしないよ:誘わない 【選択肢第二群・移動先一】最初の移動場所 キ:いにしえの洞窟で赤いのと握手 ン:うどんに定評のあるケーキ屋 タ:喧嘩売ってる名前に変わった本屋 ロ:コペン神拳 マ:楽器店前で小銭稼ぎなのねん 参:自宅で読書とか(後藤カスタマイズ) 上:自宅でゴロゴロ(自由ターン終了) 183 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/09(土) 08 03 27 ID ugPAb/ao0 久しぶりのコペン、だが君は随分と商品が減った事に気付く。 後藤P「ここにあったエナジーボンボンとゲルマニウムブレスレットは?」 ネコさん「この間の龍神祭りで韋駄天番長って人が全部持ってちゃってねー、 あれ希少品だから中々再入荷出来てないのよ。ごめんね」 (売り切れあるいは買う必要の無くなった商品) セグウェイ、モトラド、虎竹刀、古着、ミナミの帝王、切嗣、ゲルマニウム、ボンボン。 歯磨きガム(ダンボール入り) 10ガバス 甘いものの取りすぎが気になるあなたに、お口の中リフレッシュ! 低ガバスでの定番商品が必要だと思いリクームさんのが無くなった後追加された。 出品者コペン店長 スイフリーの略 20ガバス 皆さんご存知のこの本。めぐりめぐってこのバザーにやってきた。出品者明石 ネジ 20ガバス てっぺんの部分に小さくrizudonと書かれてある。 出品者大河 ニューソクデやる夫 飲食料5000円 やる夫「ううっ…、結局アイドル達と何のフラグも立てられず…、帰って来たら 6464プロからは無断欠勤を理由にクビにされたお…。しかも全国ツアーでは タダ働きだったから貯金も無いお…スピースピー」 コペン店長「そこの白メタボ、商品棚で寝るな。もう注文しないのなら清算して帰ってもらいたい」 やる夫「ヒィッ、店王!ごめんなさいだお、実はお金全然足りないのだお。何とかツケに」 コペン店長「コペン豪掌波!」 やる夫「ひでぶっ!」 ネコさん「皿洗いか警察か好きな方選んでね」 やる夫「皿洗いでお願いしますお」 【選択肢1・買いたいもの】残金43万5150円と110ガバス リリーホワイト:【 】を買う。(商品数が少なくガム以外軽いものばかりなので今回は制限なし)(歯磨きガム(ダンボール入り)、スイフリーの略、ネジ、ニューソクデやる夫) リリーブラック:欲しいものが無かったので帰る。 【選択肢2・移動先】 はなす:どうくつ しらべる:ほんや どうぐ:がっきや とびら:ケーキや たたかう:おうち(ごとうカスタム) コマンド:おうち(ターンえんど) 202 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/09(土) 20 45 47 ID ugPAb/ao0 後藤P「そんじゃ、これとこれとこれとこれをお願いするでござる」 ネコさん「無料でラッピングするけれど必要?」 後藤P「お願いするでござる」 君は頭にリボンと領収書を張り付けられたやる夫を連れ、ヘルペスの後ろに乗せてやる。 (残金43万150円と60ガバス) 後藤P「はい、このガムの箱持って」 やる夫「お金払ってくれてありがとうだお。でもあんた誰だお?」 後藤P「…覚えてないでござるか?3002の後藤でござるよ」 ~~~~~~~~~回想中~~~~~~~~~~~ やる夫「えへへっ、情報もらいに来たお!」 後藤P「キャー、変態よー!」 マキジ「後藤ちゃんを泣かしてんじゃねー!」 ~~~~~~回想終了~~~~~~~~~~~~~~~ やる夫「お前ヤローだったのかお!何でメイクして女言葉なんて使ってたんだお!」 後藤P「仕事上必要だったのでござるよ」 やる夫「うっ…うっ…今までやる夫はホモヤローをオカズにしていたのかお… この町に来てから全く良い事が無いお…やる夫の主役補正はどこにいったのかお…」 なんかむかついたので君はモトラドのアクセルを吹かし猛スピードで後ろのやる夫を振るい落そうとする。 が、先月の事もあり警察沙汰になりそうなのは不味い やる夫を落としたら彼に持たせている アイテムも落ちてしまうと思い落ちそうになるギリギリで思い直した。 やる夫「ごめんなさいだお、でもそれならますます助けてくれた意味が分からないお。 もしかしてお前もやる夫の裸で夜な夜な―」 君はモトラドのアクセルに力を込める。 やる夫「ギバーップ!ギバーップ!」 後藤P「君を助けたのは借りを返す為でござるよ」 やる夫「借り?やる夫の裸体に5000円分の価値があるのかお?」 後藤P「そっちじゃ無くて君があの時落としていったガイドブックでござる。 あれのおかげで5000円以上の物を得たでござるよ。それにORTたんの世話を してもらった恩もあるでござる」 やる夫「じゃあ差額をさっさと払うお!」 マキジ並みに口の悪い荷物持ちを連れ、こんなの助けるんじゃ無かったと 考えながら気がつけば本屋だ。 「本屋明石」改め「本はやらない」、こんな名前にしてしまうなんてやっぱり 明石は怒っているのだろうか。 後藤P「これから本屋行ってくるけれど」 やる夫「やる夫は漫画ぐらいしか本は読まないからここで待ってるお」 後藤P「やる夫君ちょっとこの眼鏡掛けてみるでござる」 やる夫「ホモヤローにはこのバイクと荷物はもったいないお、これを売って当面の 生活資金にするからさっさと行ってくるお」 (ホモヤローにはこのバイクと荷物はもったいないお、これを売って当面の 生活資金にするからさっさと行ってくるお) 窃盗未遂犯の首根っこ捕まえながら君は恐る恐る店内に入る。 後藤P「こんにちはでござる明…し?」 やらないの店長「いらっしゃ…い?」 そこに明石はいなかった。君は見知らぬ男を見て、男は君達を見て動きを止める、 そして残された男が凍りついた時間を打ち砕く。 やる夫「ら”ぁぁああぁああぁぁる”っだぁぁあぁぁぁああぁあぁ」 やらないの店長「ら”っだぁぁぁああぁる”っだぁぁあぁーらーぁぁあ”ーーぅ」 君に首根っこ掴まれていたやる夫の突然の咆哮。そしてそれに答える店の男。 やる夫「れっでっでっでれぇれれっでっでっれっでっでっでれぇれれっでぇぃ れっでっでっでれぇれれっでっでっれっでっでっでれぇれれっどぅぅぇえ」 ???「れっでっでっでれぇれれっでっでっれっでっでっでれぇれれっでぇぅ れっでっでっでれぇれれっでっでぇれっでっでっでれぇれれっ」 ___ / ヽ ./ ???? ヽ .| ????? | . | (__人__) .| ラッダッダッダラーラダララッダー | |r┬-| | ララダララーラララッダーララダラダーァ | `ー ´ / ラッダッダッダラーラダララッダー ヽ ヾ / ララダララーラララッダラァァアアィィェ ゝ ( / ヽ ( / ヽ /\ \ ̄・ ̄ヽ、|_|_______ノφφφ~ヽ ( ( ヨ||=||=||=||=(゚∀゚)=||=ηη=||=━━━━!!!!! ヽ◎。_。_ノ ̄ ̄ ̄\_ノ ̄ ̄ ̄ヽφφφ__ノ ___ / \ / ⌒ ⌒\ / ,(⌒) (⌒)、\ ラッダッダッダラーラダララッダー | /// (__人__)/// | ララダララーラララッダーララダラダーァ \ ` ヽ_ノ / ラッダッダッダラーラダララぅあぉぅ ヽ , __ , イ ララダララーラララッダラァァアッー! / |_"____ | l.. /l´ガム箱 `l ヽ 丶-.,/ |_________| /`ー、_ノ / / やらないの店長「たちつたちつたつ」 やる夫「たーったったー たちつたちつたつ」 やらないの店長「たーったったー」 明石どこいった。 【選択肢】新店長(端役)、先に本屋来た場合は普通に応対してくれるはずでした。 恋のabc:二人を無視して本屋内を物色する。 愛のいろは:二人と一緒に歌い明かす。 青春の123:やらないの店長に明石の行方を聞く。 362 :アイドル審議会黙示録 ◆M14FoGRRQI:2009/05/12(火) 21 30 06 ID VqB6GJeo0 アイドル審議会、それはアイドルの仕事成否を確認し各事務所にランク認定と 各種サポートを行う施設。冬木最強の権力者である葛木メディアであろうと その決定には逆らえない。 「セイバー、両儀式、白レン、ついでにワカメ。この四人に加え翆星石を始めとした トップアイドルとブロンズアイドル、今年これだけのメンバーが揃ったのは奇跡と 言ってもいいですよ。しかも、ワカメのおかげで彼女達はいつ潰しあってもおかしくない。 分かりますかオッパイスキーさん、歴代最強かも知れないアイドル達の運命が 僕達の手に掛っているんですよ!なのに何が不満なんですか!」 「オッパイが足りないんだよ、メガネスキーちゃん」 アイドル審議会の頂点に立つ五人のフェチマスター。 同じ立場にありながらメガネスキーとオッパイスキーの現状に対する反応は余りに違っていた。 近々動き出すであろうアイドルバトルに対し全くやる気の見せないオッパイスキーと それに激を飛ばすメガネスキー。 「十年前は良かった。アルクェイドと銀様のオッパイはまさに俺の理想とするそれだった。 今だから言えるが俺は彼女達をアイドルマスターにする為に色々と贔屓していたんだよ。 メガネスキーちゃんがロアに贔屓していたぐらいにね」 「なっ、何言ってるんですかオッパイスキーさん僕は今も昔も平等に審査してましたよ!!」 「隠さなくてもイイって、俺とメガネスキーちゃんの仲だろ?それに俺達が欲望に忠実に 審査した方が結果として実力以外の要素の採点が平均化されて上手く回っているって ガチムチスキーさんも言っていたよ~」 「ああそうですか、で、今回はオッパイが不作なんですか?」 自分が不正を行っているかのような話の流を何とかして変えたいメガネスキーは話を オッパイの方に修正する。 そして、オッパイスキーが再び表情を曇らせて語りだすのを見てこれはこれでウザイなと 後悔するのだった。 「はあ~、正直いって胸だけで言えば最悪だね。他が良いだけに胸の無さだけが際立ってるんだよ。 四天王にもそれに挑むメンバーにも今のところCカップ以上がいないって奇跡にも等しい喜劇だ。 いつから神様は貧乳派になったんだよ。あーあ、メガネスキーちゃんはいいよねー、君には 202000のユキがいるし」 「諦めないでください!明日にもオッパイスキーさん好みのアイドルがAランク以上に 上がってくるかもしれないじゃないですか。まだ見ぬオッパイの為にも仕事してください」 「えーめんどい。今日の所はメガネスキーちゃんがやってよ」 必死の説得にも機嫌を直さずぷいとテレビの方を見てしまうオッパイスキー。 今日の所は諦めたメガネスキーは彼に読ませるはずだった原稿を広げ自分で読み上げる。 「えー、現在悠久蒔寺幻想曲はまだ投票結果が決まっておりません。 『恋のabc:二人を無視して本屋内を物色する。』が三票、 『愛のいろは:二人と一緒に歌い明かす。』が三票、 『青春の123:やらないの店長に明石の行方を聞く。』も三票。 見事に割れています、どうか投票をお願いします」 オッパイスキーは借りて来たAVを見ていた。今日のオカズは『巨乳大作戦Ⅳ』。 【選択肢】皆様に手間を掛けさせてしまい申し訳ありません。どれも残り2票で決着。 恋のabc:二人を無視して本屋内を物色する。 愛のいろは:二人と一緒に歌い明かす。 青春の123:やらないの店長に明石の行方を聞く。 370 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/13(水) 08 09 14 ID .ke4AT7o0 ここは型月板、あの二人にこれ以上主導権を握らせておくのはマキジにも 悪い気がするので君は二人を極力見ない様にして本を物色する。 冬木市観光名所○月号 3000円(消耗品) 冬木市の名所を面白おかしく紹介している本。9月号の題材は全国ツアーメンバー対四天王。 もういける場所はないけど行動回数増加効果は残ってる。 正しい文章の書き方 450円 文書作成の際の注意点が一通り書いてある教養本。これを読んだ人物が作文や作詞を 行うと良くも悪くも人並みのものが出来上がるだろう。 ―以上2冊。明石がいた頃に比べ余りに少なかった。と、いうか改装時に拡張したコーナーも 軒並み無くなっておりこれでは普通の本屋である。 後藤P「この品揃えは何でござるか新店長」 やる夫「んっ…久しぶりだけどお前の乳首のコリコリ感は変わってなくて安心したお…」 やらないの店長「お前のも凄いコリコリだろマブダチ的に考えて…」 後藤P「新店長ー!」 やらないの店長「アアーッ!・・・ふう。どうした武士風のお客さん?」 後藤P「アイドル育成に役立つ本が以前に比べ少なすぎるでござるよ」 やらないの店長「そんな本がいくつも見つかるわけ無いだろ常識的に考えて。 前の店主ならそんな本を揃えていたかも知れないが俺が買い取ったのはこの店舗の敷地 だけだからな。だから多少の品揃えの違いは了承して欲しいだろ個人差的に考えて」 この顔の長い本屋、本屋としては明石に決して劣ってはいない。 寧ろ以前は置いていなかった資格関係の本や起業ノウハウの本は現代人のニーズに沿っている。 しかし、そんな本屋は君の望むところでは無い。安くておいしい和食の作り方とか 面白そうな本はあったがどれも君のスキル開発にはティンと来なかったのである。 もっとダメな本はどこにいったのか。 後藤P「前の店長は頼めば拙者好みの本をピンポイントで揃えてくれたでござるよ。 どうせこの本屋は拙者やアイドル関係者しか来ないでござるからそうした方がいいでござるよ」 やらないの店長「なん…だと…」 後藤P「知らなかったのでござるか?前の店長はどうやって経営が成り立っているの だろうって思うぐらいアイドル御用達つーか拙者御用達だったでござるよ」 やらないの店長「道理で客が来ないと思っただろ常識的に考えて。…ん?」 ハズレ物件を得てしまい、スラムの駐車場の収入で食っていくつもりが破滅してしまった 人並みに呆然としていたやらないの店長だったが、ふと何かに気付いたらしく常人の3~4倍 はある長い顎に手を当て君をじっと見つめる。 やらないの店長「二色の髪に侍口調、そんで女の子並みに手入れされている顔のここの常連。 ひょっとしてあんた後藤さんか?引き継ぎ情報的に考えて」 後藤P「いかにも。後藤でござる」 やらないの店長「『もうお前に興味は無い、私は別の手段で上を目指す。お前は 後藤として精々マキジと共に頑張っていけ』ここの前の店長からの伝言だ。 確かに伝えただろ、俺には何の事だか分らないけどな」 【選択肢】ここで買った荷物もやる夫が持つお!(残金43万150円と60ガバス) 水虫:冬木市観光名所○月号を買う。 魚の目:正しい文章の書き方を買う。 インキン:両方を買う。 イボ痔:本を買わずに礼だけ言って帰る。 405 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/14(木) 18 59 13 ID 0nELOPM20 君は2冊の本を買ってやる夫と共に帰宅。(残金42万6700円と60ガバス) 9月号を読破。 富竹らによる四天王と全国ツアーメンバーの戦力分析が書かれてあった。 式とNANAYA、セイバーと翆星石、慎二とちゅるやさん、白レンと残り全員が 戦った場合の予想がされていたのだが、具体的な数字が全く書かれていなかった為 単なる四天王ヨイショ記事になってしまっている。実際戦った訳でもないのに どの記事も「さすが四天王は格が違った」という言葉で締めくくられているという徹底ぶり。 しかしそれでも君の行動力が刺激され次週の移動回数が+1された! 後藤P「この記事を作ったのはだれだぁ!」 正しい文章の書き方を読破。 今すぐに役立つわけでは無いが、そう言った何かが起こった時に多少役に立ちそうな 技能が身についているのでほどほどに有利っぽい気がしないでもなかった。 この本で君が学んだ基本的な事はこういう常識が欠けた人に教えれられるかもしれない。 後藤P「値段相当の効果を実感しているでござる!」 スイフリーの(略を読破。 伝説となったバブリーズのルールの穴を突いた圧倒的物量作戦に感化され 君の金銭感覚が底無しになった。以後買い物時に購入上限がなくなるぞ! 極端な話、代金が足りていればシュークリーム100個購入とかもありだ! カゴや口や足や服の中に荷物を挟み込み根性で持ちかえるのだ! 後藤P「はとこー!」 3冊読み終わった所で日が沈み寝る時間である。 やる夫「お布団敷いて置いたお」 後藤P「ありがとうでござる。では、御休みでござる」 やる夫「オヤスミだおー」 後藤P「いやいやいや、思わず流してしまうとこだったでござる。やる夫殿、 ここで寝泊まりしてもらったら困るでござるよ」 やる夫「家賃払って無いから住む所も追い出されたお、実家に帰る電車代も無いお。 ホモヤローがやる夫を5000円で買ったアイテムだと思ってここに置いてくれれば 何の問題も無しだから今後ともヨロシクだお!(キリッ)」 後藤P「(キリッ)じゃないわよっ!・・・でござる」 思わず女言葉が出る程に君は怒った。この白メタボ見た目以上に駄目人間だった。 【選択肢】 グレムリン:職が見つかるまでという条件で住ませてやる。 キングコング:帰りの電車代として1万円渡して今すぐここから追い出す。 ガバリン:やらないの店長に押し付ける。 535 :悠久蒔寺幻想曲 ◆M14FoGRRQI:2009/05/16(土) 20 57 26 ID cg5g43j.0 『0120-○○○-××××~本の買い取りもやらない~』 君は店名変更のチラシに書いてあった番号に電話する。 やらないの店長「はい、本はやらない」 後藤P「その店名変えた方が良いでござるよ、実はかくかくしかじかで」 やらないの店長「まるまるうしうしってわけか。よし分かった、やる夫は俺が引き取る」 後藤P「いいんでござるか?」 やらないの店長「俺達は合図無しで最終鬼畜な仲だからな。あいつの我がままに 付き合えるのは俺ぐらいだろ、あんたもそう思うだろ?」 一時間ほどしてセグウェイに乗った白長顎が君の家に到着する。 そしてやる夫を見るや否やベースを取り出し顎をしゃくりながらあの歌いだし。 やらないの店長「やる夫ーっ!ら”ぁぁああぁああぁぁる”っだぁぁあぁぁぁああぁあぁ」 やる夫「ら”っだぁぁぁああぁる”っだぁぁあぁーらーぁぁあ”ーーぅ」 やらないの店長「れっでっでっで」 後藤P「やめれ、近所迷惑でござる」 やらないの店長「ああ、すまない。とゆーわけだやる夫、住む所ないならうちで働け」 やる夫「うっうっ、いつもいつもありがとうだおやらない夫。それで給料は?」 やらない夫という名前判明「今は無理だが本が売れれば払ってやるだろ、資産的に考えて」 やる夫「…大丈夫なのかお?」 やらない夫「前の店長が売り上げ不振の果てに売りに出した店だからな、 俺達も頑張らないと半年足らずで二人ともホームレスだろ前例的に考えて」 セグウェイに乗って帰っていく顎魔人やらない夫店長と走って追いかけるやる夫店員。 二人の未来に幸あれ。 【定期イベントとか無いけどランダムイベントがありますよー】 やる夫をクビにした6464プロ、つまり彼に代わるスパイが6464に加わったという事である。 臓硯「カカカ、お主には期待しておるぞ」 雁夜「君には来週から3002プロを偵察、可能ならば破壊活動してもらいます」 ???「フハハハハ、愛などいらぬ!」 非常なる聖帝サウザーの様な事を言うこの男、一体何者なのか!? それは次週明らかになる!! Now Makijing… 【9月2週】 マキジ「プロデューサー、CDデビューはまだなんだぜ!?」 後藤P「今は我慢でござるよ、マキジ」 エト「そうだぞ、まずは目の前の映画撮影に集中しておけ」 マキジ「へいへーい」 ルックス:77(+2) ボイス:82 ダンス:74(+5) キャラクター:78(+5) 疲労度:25(+25) 仕事:マキジ・オブ・ザ・ハボリム(仮)今週!イメージガール来週! アイドルランク:B(ゴールドアイドル)、次の仕事成功でランクアップ。 (可能な訓練の内実行済みのもの) ウマウマ、ヤンマーニ、発声練習、にぱー、マサルさん、ゴッドボイス、 ドナルドエクササイズ(中級) 、ねるねるねるね、 スペシャルファイティングポーズ、ドナルドチェアエクササイズ、 バックステッポ (可能な訓練の内未実行のもの) 新世界の神、画太郎ばあちゃん、地球最後の日、ドナルドエクササイズ(初級)、 サタデーナイトフィーバー、ケンジャの舞 【選択肢】 どようびどようび~:【 】を実行させる さいたまさいたま~:休ませる 悠久蒔寺幻想曲【9月】Ⅱ 悠久蒔寺幻想曲 前半総まとめ講座 悠久蒔寺幻想曲
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1: つくづく、数字と言うものは不思議な概念だと思っている。 それ自体はただの文字であり、関連付けに基づいて纏め上げたとしても、精々がただのデータ止まりだ。 だが数は、ありとあらゆる情報を記す上で、この上なく重要な概念である。数字を我々に様々な事を連想させる。 給与の多さや少なさ、会社への出勤日数、四百字詰め原稿用紙の残り文字数、エンゲル係数、人口密度等々。 それ自体はただの、古の時代にアラビアの国で生まれたただの文字である。しかし、様々な情報を表現する事が出来る。 たった十パターンしかない文字で、我々人類に様々な印象を与える事が出来る。数値が増えれば落胆する情報もあれば、減って嬉しい情報もある。その逆も然り、だ。 私は、ある数が増えて行く事に危機感を覚えていた。その数とは、地球上の人類の総数。 誰が嘯いたかは知らないが、人類は地球上における霊長の覇者であると言う。ある意味ではそうだろう。 如何なる環境でも我々人類はお目にかかる事が出来るし、果たしてこの地球上に、人類未踏の土地などあるのだろうか? 我々程、幅広い環境に適応出来る生物はいない。 我々の数は、増えて行く。だが、それに反比例して、地球の財産は減って行く。植物や、食い扶持を保つ動物だけではない。 口に出来る真水の総量も、安定して居住が可能な地上の面積も。人類の数が増えれば増える程、我々の生活は、生綿で首を絞めるように辛く厳しいものになって行く。 自明の理なのに、人々はその現実を見ようともしない。解決に、乗り出そうとしない。人は愚かだが、本能的に察しているのだ。 現況を解決するにはきっと、途轍もない痛みが伴う事を、彼らは知っているのだ。 故に彼らは、何時だって眼前の現実を見まいと勤めようとする。 糖蜜の様に甘く、桜色をした柔和な未来やヴィジョンをした、実体も中身もない上手い話にのみ飛びつき、その反対の話には見向きもしない。 こんな選択を続けていたからこその、今がある。地球の総人口は今や七十億を超え、環境の破壊の度合いも、数十年前とは比べ物にならないと言う。 我々は、強くなり過ぎた。我々は、賢くなり過ぎた。だから、天敵がいなくなってしまったのだ。 この地球上に於いて我々を一時に葬り去りうるものは、地球の怒り以外には、最早存在などするまい。 我々には天敵がいないのだ。虫に対する鳥のような。シマウマに対するライオンのような。 霊長の覇者を――地球の長を名乗るのであれば、少しの痛みに耐えるべきだ。 地球に生きる他の生き物の為に、少しだけ、席を譲ってやる位の事は、して見せるべきだ。 増えた数――世界人口――を、減らす勇気を持つべきだ。我々と同格、いや、それ以上の、食物連鎖のピラミッドの存在を、赦してやるべきだ。 私の思想が異端である事など、自覚している。人間は当然の事、人間の天敵に今後成り得るであろう存在に対してすらも、理解は得られなかった。 しかしそれでも、私は望んでいる。地球を生き長らえさせる為、人間の人口を調整する為の、新たなる霊長の覇者として君臨しうる存在を。 何故……こんな思想を持った私が、その思想を宗旨替えもさせず、曲げる事もせず、今日まで生きて来れたか。 もしかしたら私は――地球の全ての生き物の未来を守る為に、生まれて来たのかも知れない。 . 2: 一言で言えば、俺達は地球の長として君臨するのに相応しい生命だった。 高い知能を持ち合わせ、身体能力も地球のどんな生物よりも優れ、どんな生物よりも長く生きる事が出来た。 原始人は、俺達の事を神だ悪魔だと言い、時には恐れ、時には敬っていた。その時は俺達も、地球に生きる他の生命体の事を配慮し、態度を増長させる事をしなかった。 ……いや、出来なかった、と言うべきなのか。俺達は完璧であった。……ただ一つ、太陽の光を極端に苦手とする事を除いては。 今にして思えば、俺達の種族は理知的過ぎた。大人としての良識を持ちすぎていた、と言っても良いのかも知れない。 強すぎる力を発揮出来る肉体に、賢すぎる知力を内包した大脳を持ち、時の劣化を受け付けない肉体……俺達は地球における最強の種族だった。 だからこそ、一層地球の為に配慮しなければならなかった。地上に出る事をなるべく避け、最低限度の食糧の確保さえ出来れば、闇の中でひっそりと生きる事を良しとする。 俺達の種族とはとどのつまり、そう言う奴らだった。一日の半分の時間が外に出られない時間で、残りの時間は陽光を恐れ闇の中で息づく。惨めな、生物。 そんな鬱屈とした生活を、何よりも嫌っていた男がいた。天に輝く太陽に対して、反旗を翻した男がいた。 男は俺達の一族を、正真正銘地球上で最強の存在……奴に言わせれば、究極生命体(アルティミットシィング)であったか、これに近付けようと尽瘁した。 だが、俺達の一族はこれを認めなかった。陽光を浴びても問題がなくなる、と言う餌に飛びつかなかった。 男の研究していた事柄は、今以上の食糧の供給を必要とする物であり、このまま推移したら地球が死の星になってしまう事が予想出来ていたからだ。 一族は、男を滅ぼそうとした。そして逆に、返り討ちにあい、彼ら自身が滅ぼされた。 その男が強かった事もそうだ。だが、その理想……暖かな陽光の下で、思う存分その生を謳歌出来る生物になる、という理想に賛同した男の存在も、大きかった。 俺だ。自惚れと言われようが構わない、俺の存在も大きかっただろうと、俺は信じたい。 究極生命体を目指そうとする俺達の旅は、苦難の連続だった。 自らの一族に妨害された事もそうだが、その過程で波紋なる力を操る一族とも敵対した。そして何よりも最大の敵は……太陽と、地球自身。 まるで俺達が、究極生命体になる事を、地球や、其処に息づく生命の総意が、俺達の志を折ろうと計らっているのではと、思わない事もない。 永い旅路のその中で、俺達は大いなる何かの意思に負け、膝を折ってしまった。 番犬程度の役割しか期待していなかったが、一族の下を去ろうとした時に連れて行った名もなき赤子が斃された。 波紋を操る術を持つが、それ以上に人を欺く術に長けた男に、俺自身も斃された。俺も認める程の技量を持った、風を操る我らの仲間もまた、奴に斃された。 そして最後の一人――俺達の旅路の原点であり、悠久の艱難辛苦の時間の末に、究極生命体となったあの男もまた、奴と『地球』にしてやられてしまった。 俺は彼の現在を知っている。地球を放逐された彼は、宇宙の闇の中で、生命とも物質とも取れる存在になってしまい、冷たい世界を永久に彷徨っているのだと。 俺は、彼を救わねばならない。俺は再び、志半ばに倒れた仲間と共に地上に君臨せねばならない。 『呪い』を意味する名を授かって闇の中に生を授かった、俺の友よ。その名の通り仲間の一族からも忌み者にされ、太陽からも呪われた男、カーズよ。 人は、何の為に自分生まれて来て、何の為に生きるのか、悩む生物だと最近知った。俺も最近になって、その意味を考えてみた。そして、辿り着いた。 俺は――お前の理想に全てを捧げる為に生まれて来たのだ、と。 . 3: アヒルの子が、シチメンチョウの子を産む事はある。ガチョウの子を産む事だって、きっとある。 だが、俺は知っている。アヒルの子が産んだシチメンチョウやガチョウの子は、成長しても美しい白鳥には絶対にならない事を。 そして、染み一つない白い羽毛を持つ白鳥が、シチメンチョウやガチョウを産む事だってある事を。 醜いガキは、大人になってもきっと醜いままなんだ。 俺と同じ奇形共が集まるサーカスに所属していた時、俺を見る奴らの目は、俺達を蔑み、嘲笑うかのような光を宿していた。 俺達の身体を馬鹿にしていたのかも知れない。或いは知性か、それともこんな境遇か? いや、俺達の惨めな全てを笑っていたに違いない。 確かに俺は馬鹿だが、愚かじゃない。自分と他人の何処が違うか程度は、理解している。 俺はそう、醜かった。汚水が流れ、ネズミとゴキブリと数億ものダニやノミが跳梁するあの地獄の下水に俺を捨てた両親も、俺の醜い容姿を見て捨てる決意を固めたのだろう。 俺の容姿に比べれば、ヘッ、オーメンに出てくる悪魔の子、確かダミアンだったか。奴ですら可愛い姿をしてるだろうよ。 アイツはジャッカルの腹から悪魔の力で生まれて来たらしいが、それ以上に醜い俺は、男のペニスから迸る液と、それを受け止める女の嚢の合一で生まれて来たんだからな。 だからこそ、俺は全てに対し怒りを宿していた。俺は正真正銘人の胎から生まれて来た人の子だ。なのにどうして、俺の容姿はこんなに醜いんだ。 何故俺の育ての親は、人間ではなく、営業不振で閉鎖された動物園に取り残されたペンギンだったんだ。 何故俺が……、冬の寒い日にその寒さから逃れようと毛布にくるまっている時に、他の奴らはクリスマスを楽しんでいたのだ。 幸せを享受する全ての子供や大人に。何の試練だか知らないが、俺に醜い容姿を与えた神に。 俺は、呪いの言葉を吐き散らしてやりたい。黒い唾液を吐きつけてやりたい。そして、俺と同じ呪詛を叩きつけてやりたい。 そして、その容姿のせいで、享受する事も許されなかった、地上の幸福とやらをその身に受けてみたい。 他者に呪いつつ、祝福を受ける。それは嘗て、奇形サーカスにいた時に俺を馬鹿にしていた客がしていた事と同じだ。俺は、それをやってみたいのだ。 この戦いに勝ち残れば、イエスが昔使っていたとされる聖なる杯が手に入ると言うらしい。 Huuuuuhhhhhh……素晴らしい。俺のリベンジを見事に果たしてくれる事だろう。俺はこのグラスの中に、血とミンチ肉を満たし、それをぶちまけてやるのさ。 ガキがプレゼントをねだる為だけに存在する十二月の二十五日に……。中身も無い形式上のMerry Christmasが飛び交う十二月の二十五日にな!! ガキの頃に、俺は何度も考えて来た。 俺は何でこの世に生まれて来たのだろうか。俺の生きる意味は、何なのか。 今ならば……、オズワルド・コブルポッドと言う本当の名前を知った今ならば、解るかも知れない。 ひょっとしたら俺は――他人の幸福を奪い取り呪う為に生まれて来たんじゃないのか、と。 そうだ、人はいつだって、何かを奪っている。食い物も、金も、女も男も。幸福だって、きっとそうだ。許される、筈なんだ。 ……後から気付いたが、俺はアヒルや白鳥が産んだシチメンチョウでもなければガチョウでもない。 俺は、自分が他の奴からペンギンと呼ばれていた事を、今になって思い出した。 . 4: 昔、俺達パラサイトの存在について、深く哲学していた女がいた。 彼女は――田村と名乗っていたその女は、俺達と言う存在を理解する為に、様々な手段を実践していた。 学校で教師をしてみたとも言っていた。なるべくなら人間を食料とせず、彼らが食べるような食物を食べて生活してみたとも言っていた。 大学と呼ばれる場所で講義を聞いてみたとも言っていた。――女性の身体に寄生していたと言う事を活かして、子供を成し、その子供を育ててもいた。 つくづく不思議だったのは、何故田村は、其処まで自分の存在について哲学していたのか、と言う事だ。 彼女は正直、強い女性だった。性格が、じゃない。それもあるが、戦闘の腕前の方も、俺を唸らせる程だったぐらいだ。 戦えばさぞ、面白い相手だった事だろう。その願いは結局叶う事はなかったが。 それだけの力を持ちながら田村は、人間を喰らう事については消極的で、俺達パラサイトにプログラムされていた本能に従う事があまりなかった。 つまり、何だ。俺から見れば、自分に正直に生きてないような。そんな風に俺には見えた。 もっと、シンプルに考えて生きられないのかと俺は疑問だった。 俺達パラサイトは、生まれ落ちたその時から、一つの本能を組み込まれている。それは即ち、寄生した種を――この種を食い殺せ、と言うものだ。 多くの奴が、その本能に従った。俺達に備わる知性と、生物的な特色の故に、人を見下す奴も多く出て来た。それで、良かったのではないのか。 どうにも、解せない。田村は警察に射殺されたと言う。新一と、そいつに中途半端に宿ったパラサイトに子供を預け、亡くなったと言う。 田村の死に納得出来ない俺が異常なのか。彼女は、何を思い射殺されたのか。それは今でも、解らない。 ……解らなくても良いのかも知れない。俺にとっては、些末な事だ。 俺は自分に正直に生きる事にしている。 そしてその過程で、自分自身のレゾンデートルを、俺は認識する事が出来た。 嘗て田村が、パラサイト――田村玲子と言う生物の存在意義を、認識しようとしていたように。尤も、奴と俺とでは、見えていたものも違うだろうが。 パラサイトが何処から来て、何処へ行くのか考えた女は、死ぬ間際に何を悟ったのだろうか。 だが俺は生きながらに悟った。俺が、何の為にこの世に生まれて来たのか。それは、明らかな事だったのだ。初めからそれは、俺達自身に刻み込まれていた。 俺は――戦い、人と言う種を喰い殺す為に生まれて来たのだ。 今は思う。田村玲子は、何処へも行く必要なんて、初めからなかったのだ、と。 5: 【フケる事は出来なかったのか、ヒロカワ】 ヒロカワと呼ばれた男の頭の中に、そんな声が聞こえて来た。 奇妙な事である、広川と言う名前の男の視界には、声の主らしき姿は、見えないと言うのに。 【政治パーティならそれも出来たが……立場上、今回は無理だった】 【人間の社会と言うものはつくづく面倒だな、煩わしい】 【言ってくれるな、アーチャー】 ムスッとした語調で不満を漏らす、アーチャーと呼ばれた男エシディシの機嫌を、広川は宥める。 彼の姿は見えないが、機嫌を直してはいないだろう。あれでなかなか、気難しい所がある男だから。 白色のキャデラック車のリアシートに、広川は足を組んで座っていた。 彼の目にも、そして運転手の男にも物理的に視認は出来ないが、霊体化と言う状態で、エシディシも車内に待機している。広川の隣の席だ。 運転席と助手席には、フロントガラスとサイドウィンドウの両方向から、まばゆいばかりの陽光が燦々と入り込むが、後部席である。 運転手席のバケットシートと、後部のリアシートを区切る位置辺りに、真っ黒な暗幕が垂らしてあるのだ。それだけでない リアシートのウィンドウやリアガラスにも、暗幕が垂らしてあり、一切の光の侵入を拒んでいる。 おかげで車内の後部席は、其処だけが夜になったかのように暗く、書類の文字すら見る事が出来ない程だ。 当たり前の事だが、外から窓を見て内部の様子を窺おうにも、暗幕の影響でそうする事は出来ない。 波紋戦士やナチスドイツの関係者から柱の男と呼ばれ、己が肉体を骨格や内臓レベルで自由に操作出来、人を超える程の学習能力や知性を持った男達。 そんな彼らの泣き所。それが、太陽光に対する耐性のなさだった。そもそも、カーズが提唱する究極生物論とは、まず太陽の光を克服すると言う所から始まっている。 石仮面の開発とは、その為の産物に過ぎない。柱の男達と呼ばれる人種は、首魁であるカーズを除いて究極生命体に至った者は一人もいない。 つまりそれは、太陽の暖かな呪いの光を克服出来た男は、彼らを率いていたカーズ以外にいなかった事を意味する。 エシディシ達柱の男は、太陽の光を浴びると石化してしまう。石化だけで済むのならばまだ良い。肉体のダメージの度合いによっては、蒸発すらする恐れがある。 自らのそんな性質を重々承知している為か、エシディシはアーチャーでありながら、昼の間は外に出ようと全くしないのだ。行動出来ない、と言っても良い。 昼に行動出来ないと言う事が、何を意味するのか。それはつまり、一日の半分の時間がほぼ行動を制限されていると言う事に等しい。 単独行動スキルを持ち、マスターを離れて自主的な行動をさせられる事が利点のアーチャーで、これは致命的な弱点だ。 加えて広川はゴッサムの市政に関わる重職だ。外に出て行って行動を行う機会も多い。太陽が出てる時間だから行動は出来ない、とは言っていられないのも実情。 エシディシに対する配慮の結果が、こんな付け焼刃の陰気な策であった。 この暗幕は太陽光を遮断する為に態々広川が取り寄せ、運転手に取りつけさせたのである。 何故つけるのかと聞かれ、広川は「自分が乗っている事を他人に知られないようにする為」だとか「自分は暗い方が落ち着く」だとか言って凌いだ気がする。 我ながら苦しい理由であるとは思っていたが、エシディシの事を考えればしょうがない。これ位の恥かしい思いは、耐えるべきだった。 「私が不気味に見えるかね、マルクくん」 エシディシとの念話による会話を打ち切り、広川が不意に言葉を口にした。 運転席の辺りから、「えっ!?」と言う、動揺の声が上がり始める。 「そ、それは……」 言い淀んでいる。当然の反応かも知れない、正直に答えてしまえば何があるか、解ったものではないのだから。 「いやいや、取り繕わなくてもいいよ。私自身、自覚している。他人から見たらこんな内部の真っ暗闇な車はおかしいとしか思えないからね。でも、これが落ち着くんだ、私は」 「は、はぁ」 マルク、と呼ばれたドイツ系アメリカ人の運転手は、歯切れの悪い返事を広川にして見せる。 広川が唐突に念話を打ち切り、この運転手に対して声を掛けたのは、運転手が発する不信感を広川が敏感に感じ取ったからであった。 エシディシの言う通り、人の社会と言うものには面倒が付き纏う。取り分け、広川剛志と言う人物にはそれが顕著だ。 彼にはクリスマスもハッピーニューイヤーもなかった。彼は市政に携わる者の中でも特に高い地位にいる人物である。 こう言った人物は所謂特権階級であり、民間が汗水垂らして働いている間、ゴルフに興じ、クルーザーの上で寛いでビールでも呷っているような生活をしている……。 と、思われがちである。実際には比喩抜きで分・秒刻みのスケジュールに毎日追われ、書類に刻まれた文字や数字との睨めっこに何時間も費やし、 挙句の果てには出席したくもない市の有力者や名士達のパーティや舞踏会などに顔を出さねば行けないなど、ウンザリする程プライベートの時間がない。 それ自体はそう言った地位に立つ物の宿命だ。特権階級であると言うのは間違いではないが、彼らはそれを享受するだけの労苦と責任を背負うものである。 これらに関しては、広川自身も「そう言うものなんだ」、諦めている。……ただし、今彼が身を置いている状況は、聖杯戦争だ。 パラサイトの為に身を粉にして働いていた時期以上に、自分の為に動く必要がある戦いである。本当の所を言えば、こんな仮初の街の市政の為に動く事は、時間の無駄なのだ。 だが、動かねばならない。広川自身も自覚している。仮初の立場とは言え、今広川に与えられたロールと言うものは、聖杯戦争を自由に動きたいから、と言う理由で捨てていいものではない事を。これは事実その通りで、広川剛志と言う人物は、聖杯戦争の参加者の中で最も恵まれた立場にある人物、と言っても良かった。 今世間はクリスマスムードもたけなわと言った雰囲気に満ちているが、行政の方はてんやわんやの大騒ぎであった。 簡単である、市長選が近いのだ。ただでさえ一年の終わりの最も忙しい時期に、更に忙しくなるようなイベントが重なっているのだ。 今ゴッサム市役所は悪魔のような繁忙期で職員全員が仕事に追われている。猫の手も借りたい、と言うのはきっとあのような職場を指して言うのだろう。 こんな時期に市長選をやるなんてイカれてる、と職員が零しているのを度々耳にしている。実際問題、それはその通りなのだが。 ゴッサムシティの名士に、マックス・シュレックと言う人物がいる。ゴッサムでも有数の大企業の社長である。 年々増え続ける、ゴッサムシティに誘致される大企業の数々と、それに付随する工場。それらの操業に必要な供給電力は、年々増加の一途を辿っている。 このままではいつかゴッサムの電力は不足し、街の至る所で停電が頻発するだろう事は、市も予測していた。 シュレックはそんな今だからこそ、この街に原発を建てるべきである、と主張する原発推進派の中核に位置する人物だった。 彼は原発の建造によって見込まれる電力供給率の向上を魅力に感じるであろう、企業の組織票を武器に、市長選に打って出たのである。 但し――市長に立候補するのは、彼ではなかった。彼の傀儡と推測されている、オズワルド・コブルポッド、市民からペンギンと言う愛称で有名な男が市長になる。 曲がりなりにも市政に携わる人物である。広川はオズワルドの姿や来歴を知っている。非常に醜い容姿をした男であり、それがもとで親に捨てられた男だ。 下水道に流され捨てられたペンギンは、下水の環境で死ぬ事なく無事成長、紆余曲折を経て奇形サーカス――日本で言えば見世物小屋か――に拾われ、 其処で青年期を過ごす事になる。シュレックとはその時に知り合った仲で、シュレックはペンギンの「自分を捨てた本当の両親を知りたい」と言う願いを聞き入れた。 マックスはTVやマスコミを総動員し、既に故人となっていたペンギンの両親であったコブルポッド家の墓参りを放映させた。 この模様を映した様子は、ゴッサムでも非常に有名であった。この時に得たオズワルドことペンギンの人気と知名度を、シュレックは選挙戦に利用しようとしたのだ。 現状の推移は、シュレックの望んでいるような展開だと、推理せざるを得ないだろう。企業からの組織票は確保出来ているし、ペンギンを利用した浮動票の確保も手堅い。余程の事がない限りは、シュレックの操り人形であるペンギンの当確は揺るがない。 広川が億劫な外出をせねばならない理由は、ペンギンを陰で操るシュレック関係であった。 広川はこのゴッサムにおいて、原発の建造に反対の意思を表明している立場であった。つまり、シュレックのイメージするヴィジョンにとっては仇相手と言っても良い。 しかし、シュレックと真っ向から争ってはならない、と言う市の意向と言うものが其処にはあった。 彼は野心に満ちた男であるが、ゴッサムでも有数の企業の社長と言う立場と、街の名士として市民に対して便宜を計らっていると言う事実に嘘はなかったからだ。 『シュレックの原発建造と言う野望を頓挫させる』。今広川が帯びている使命はそれだった。但し、激しく非難してはならない。やんわりと、シュレックに諦めさせるのがベターである、らしい。 ――馬鹿げてる―― そんな事、無理に決まっている。言葉で野望を曲げてくれるような人物を、野心家などとは誰も呼ばない。 殺されでもしない限り自分の計画を中止しないような人物をこそ、人は野心家と呼ぶのだ。 広川が出張って、「お願いだから諦めて下さい」と言って「仕方ない」と言うような輩ならば、誰も苦労しない。 広川にはどうせこんな仕事、徒労に終わる事は目に見えているのだ。だがしかし、市役所での立場もある、やらねばならないのだ。 エシディシが愚痴を零すのも無理もない事だ。当の広川本人だって、愚痴の一つや二つ零したくなるのだから。 「マックス・シュレック氏の邸宅が見えました、広川様」 広川が腕を組み、心中で不平不満を漏らしていた時に、運転手のマルクがそう報告した。 広川の座るリアシートからでは、窓から外の様子を確認出来ないのだ。だから運転手に運転を頼む時には、渋滞している時には渋滞している、目的地に着いた時にはその旨を、広川に報告するよう義務付けているのだ。 「ご苦労だね、マルク君」 広川は右腕に嵌めた腕時計で現在時刻を確認する。 暗闇の中でも文字盤や針が光る時計であるので、自国の確認は容易だ。現在時刻、十時半。本来会う筈の時間より三十分以上も早いが、速く着くに越した事はなかった。 【――ヒロカワ】 右側の席に座る、霊体化したエシディシが、如何にも神妙な声色で念話して来た。 【どうした、アーチャー】 【……この館、『いる』ぞ】 目玉が零れ落ちんばかりに、広川の眼球が見開かれた。 神の悪戯としか思われない確率だった。仕事で出向いたその場所で、まさか……まさか、敵サーヴァントと遭遇してしまおうとは!! 【相手が気付いている可能性はあるか、アーチャー】 【サーヴァントの気配を察知する事自体に、特殊な才能などいらん。少なくともこの車が邸宅に近付いた時点で、相手も気付く事は容易に想像はつく】 戦い……とまでは行かずとも、どうやら一波乱起りそうな空気を、いやがおうにも感じてしまう広川。 自らのロールを利用して待ちの一手を企んでいたが、こうも早くに予定が崩れ去ろうとは。戦いは水物、とはよく言ったものだ。 【……これは、私達にとって、幸運と言うべきなのかね? それとも、不運か?】 【お前の引き当てたサーヴァントは最強だぞ。信じろ】 【失礼した。幸運だったらしい】 車内に備え付けられていた冷えたミネラルウォーターのペットボトルを手に取り、喉を鳴らして飲み干す広川。 緊張と闘争本能から来る熱は、これでもまだ冷める気配を見せる事はなかった。 6: シュレック邸の誰かが、聖杯戦争の参加者である事は、確実だった。 シュレック本人がそうなのか、それとも屋敷の中で働く使用人なのか。マスターの性格はどうなのだろう? 広川がマスターと解るやすぐに襲撃をかけるか、それとも傍観するか? 全て未知数としか言いようがない。 故に、油断は全く出来ない。現状、広川が出来る事は、見。様子見の一手だ。アーチャーの単独行動スキルを活かし、館の中を探索させる。 もしもサーヴァント及びマスターと出会った場合の処遇は、エシディシに全て任せる。万が一マスターである広川に危機が舞い込んだ場合には、当然、急いで彼の下へとエシディシが駆け付ける。急場で拵えた作戦が、これだった。 【稚拙な作戦だな】 エシディシが苦言する。 【面目ない】 【構わん、俺も予想外だった出来事だ。それに、不意打ちに対応出来ないようでは優れた存在とも言えん。お前の為に首級を上げてやるさ】 【任せたぞ、アーチャー】 【了解】 言ってエシディシは、霊体化した状態で館の中へと侵入して行く。 自分も仕事に取り掛かる時だろう。認識した広川は、マックス邸が保有する地下駐車場から邸宅の内部へと移動する。 シュレック邸の廊下を歩きながら、如何にもアメリカ的な豪邸だ、と広川は感じ入る。国土が大きいと、其処に建つ家のスケールも比例して大きくなって行くらしい。 邸宅の内装はゴシック調のそれで統一されており、中世の世界から飛び出して来たような印象を、広川に与える。 窓から庭園の様子をチラと窺って見る。噴水もあればプールもあり、運動不足解消の為のテニスコートもある家と言うのは、日本では少し想像が出来ない。 マックス・シュレックと言う人物の経済力と経営手腕の凄さと言うものを一発で知らせしめる、豪壮で立派な家であった。 ――だが、それにしても、妙だった。 「(マックス本人が来ないとはな)」 アポなしの、突然の来客であるならばいざ知らず、今回広川はシュレック側に対して、今日この日に来訪する事を知らせている。 彼も広川ごとき丸め込められると自信があったのかは知らないが、広川の申し出を快諾している。 であるならば、例えイデオロギー上対立している立場だとしても、笑顔で広川の事を迎えるのが当たり前なのだ。 なのに、シュレックが来ないのである。其処が、広川にとって疑問であった。 では――誰が広川の事を迎えに来たのか。 それは、彼自身も想像だにしていなかった人物であった。その人物は今、広川の右隣に共に歩いていた。 「しかし、日本人がアメリカの市政に携われるとは、思いもしなかったぜ」 「この為に、アメリカに帰化し、永住権を取得致しましたからな。今の地位になる前もなった後も、艱難辛苦の連続です」 「ハハハ、そりゃぁアンタ、こんな街の公務員になるからだぜ。もっとマシな所選べば良かったのになぁ」 「いやはやまったくです。後悔先に立たずとは、よく言ったものですね」 広川の横を歩く男は、一言で言えば、醜い男だった。 童話に出てくる魔女の様な鷲鼻が特徴的で、歯並びも非常に悪く、目つきも異様に鋭い。広川を見るその瞳は、陰険で湿った光を宿している。 メタボと言う言葉を使うのも気が引ける程の肥満体だ。宛らそれは、樽。出っ張った腹と、尻と胸が、ほぼ同じサイズであった。 奇妙な事にその男の手には河童のような水掻きがついている。奇形である。 何処の異次元から抜け出して来たのか、と思わずにはいられない異形の人物だった。 そんな男が広川の隣を、ペンギンの様によちよちと歩いている。これが彼の愛称の由来であった。 ペンギンこと、オズワルド・コブルポッド。それが、広川の隣の人物の名前だ。 マックス・シュレックの代わりに広川を出迎えた人物こそが、このペンギンであった。 オズワルドがマックスの邸宅にいる事自体は、それ程奇妙な事でもない。何でもペンギンと言う人物はシュレックが友誼を図る前までは、下水道に暮らしていたと言う。 言うなれば浮浪者、ホームレスだ。市長選に出立する様な男が、現住所を持たないなど、到底許される事ではない。 代わりにシュレックが住まわせてやっている、と思えば、矛盾はないだろう。 ……広川が奇妙に思うのは、これだけ広い邸宅を持ちながら、今の所ペンギン以外の住人を見かけないと言う事だった。 マックス・シュレック当人は当然の事、屋敷にいるであろう使用人や警備員の類が一人も存在しないのを見せられては、流石に不穏な空気を感じざるを得ない。 「此処が客間だ」 と、言うのはペンギンだ。それにしても、市長選の候補者とは思えない、礼節を欠いた口調である。 シュレックが「今まで教育らしい教育を受けて来なかったから、愛敬として受け取って欲しい」とフォローしていたのを広川は思い出す。どうやら彼も彼で、相当苦労しているらしい。 ペンギンから先に客間へと入室、広川がそれに続く。 柔らかなペルシア絨毯の上を歩きながら、広川は部屋の中央に置かれた赤い革張りのソファへと近づいて行く。 「かけていいぜ」、ペンギンが言った。「では」、と言葉を返し広川がソファの上に座る。 尻から伝わるスプリングやスポンジの柔らかな感覚が心地よい。最高級品である事は、疑いようもなかった。 ペンギンから広川は目線を外さない。彼の行動を逐次監視している。彼はまだ立ち上がって、特有のよちよち歩きで部屋を歩き回っていた。 「ミスターコブルポッド」 先程までペンギンに対して話しかけていたような、柔らかな口調で広川が言った。 しかし表情だけが――石のように引き締まった、真面目な表情であり、其処には親しみやすさなど欠片も見受ける事が出来なかった。 「何だい」 ペンギンは広川に背を向けていた。広川から見て真正面に建て付けられた、暖炉の近くに何故か置いてある、傘立ての所に彼はいた。 「貴方のパートナーの、ミスターシュレックは何処にいらっしゃるのです」 この邸宅に来てから感じていた疑問を率直に、広川はペンギンに対してぶつけた。 ガサガサと傘を探していたペンギンの動きが、縛られた様に停止する。 「知りたいのかい」 振り向かずに、ペンギンが言った。 「知りたいですね」 広川がすぐに返事した。客間は今、殺気を胸中に秘めながら、互いの腹の中を探り合う、魑魅魍魎の伏魔殿となっていた。 7: ピアノの旋律が、煙の様に立ち昇っていた。 上手いか、と問われれば、ピアノを弾いた事もなければ音楽の素養もない人間は、上手いのではないかと答えるだろう。 弾いた経験があり素養のある人間が聞いたら、少し練習したらあれくらいには到達出来るさと答えるだろう。 つまり、グランドピアノの前に座り、曲目を奏でる男の腕前は、普遍的な腕前、と言う事が出来る。 節くれだった太い指を、男は鍵盤から離した。曲目が終わったらしい。 男の奏でていた旋律の音響が残る部屋に、軽い拍手の音が巻き起こった。一人のものである。 「上手いもんじゃないか」 拍手の主が、演奏者に対して称賛の言葉を投げ掛けた。 嫌味か、はたまた世辞か、とも思われるだろう。だが、壁に背を預けた、褐色の肌に民族衣装めいた服装をした、逞しい身体つきをしたこの男は、 楽器の上手下手の区別がそれ程つかないのだ。男の弾いていた楽器がピアノと言う名前である程度しか、解らない。 況してやこの男――エシディシには、男が弾いていた曲の題名など、解る筈もないだろう。 「何を弾いていたんだ、お前は。モーツァルトとか言う男の曲か?」 「ショパンだ」 エシディシの問いにそう返してから、何がおかしかったのか、ふっと男は笑った。 エシディシに負けず劣らずの体格の良さをした、アジア系の顔立ちの男だ。彼ら特有の黒髪をオールバックに整えた、精悍な顔付きの人物である。 「何がおかしい」 面白くなさそうに、エシディシが言うと、「悪いな」、と後藤が軽く謝った。 「前にも一度、同じようなやり取りがあってな。思い出して笑ってしまっただけさ」 其処まで言って、ピアノを弾いていた男――後藤は、妙だな、と思った。 まさか俺が――三木の様なわざとらしい笑いではなく、自然な微笑みを浮かべる事が出来るとは、と。 ぬぅっと椅子から立ち上がり、壁に背をかけるエシディシの方を睨めつける後藤。 エシディシもその目線から顔を背ける事無く、真っ向から睨み返す。 強い。互いがほぼ同じタイミングで、同じ事を思った。 田村玲子の手によりて作られた、最強の虐殺器官(パラサイト)が。人類の文明の歴史を遥かに凌ぐ、悠久の時間を生きて来た闇の生命が。 即座に感じ取ったのである。目の前のサーヴァントは、簡単に勝たせてくれない程の強敵である、と。 「最早聞くまでもないだろうが、お前がサーヴァントなのだろう?」 後藤が聞いた。感情を聞き手に掴ませない、霞の様にとらえどころのない声だ。 「違う、と答えたらどうする?」 「そうだとしても、逃がさず殺すさ」 「奇遇だな。俺もお前の立場なら、そうしている」 二十年、いや、三十年来の友人とでも話すかのような気軽さで、エシディシは後藤に話しかけていた。 しかし、室内に渦巻く殺意たるや、尋常のものではなかった。もしも殺気と言うものが可視化出来ようものなら、きっと嵐のように部屋中を荒れ狂っている事だろう。 エシディシと後藤は、互いを一目見て理解した。話し合いで戦闘を回避出来るような相手ではないと言う事を。出会ってしまえば、何も起きない筈もなく……。 「俺がさっき弾いていた曲の題名を知っているか」 左手だけで、後藤は器用にメロディを奏で始めた。 後藤は鍵盤を見ていない。その目はエシディシに対して向けられている。エシディシもまた、後藤の方に目線を向けていた。 鍵盤を叩く後藤の手には、目もくれない。注意を逸らそうとしている事が、バレバレだったからだ。 「知らんな」 エシディシは即答する。鋼で出来た瘤のような筋肉に、ミシリ、と力が溜まり始める。 「ショパンの練習曲第三番。またの名を――別れの曲と言う」 メロディ奏でる左手の動きを唐突に止め、後藤は残像すら残らぬ速度でピアノの側板の縁を掴んだ。 そして、誰が信じられようか。ソフトボールでも投げるような軽い感覚で、後藤はエシディシの方目掛けてグランドピアノを乱雑に放り投げたのだ。 時速五十㎞以上の加速度を乗せて投擲されたそのピアノに直撃すれば、生身の人間は当然の事、耐久力に優れたサーヴァントですら無事ではいられまい。 腕を交差させ、エシディシは直撃に備えた。ピアノが激突する。粗忽者が、力の限り大量の鍵を一時に強く叩いた時の様な音と、ピアノの板部分の破砕音が、断末魔のように響き渡る。 腕の交差をエシディシは解く。無傷だった。体内で炸裂させたダイナマイトに対してもダメージすら負わない男に、この程度の一撃はさしたるダメージにもならない。 「ほう」、と後藤はエシディシに対して感心の念を覚えた。服装の割には、頑丈な奴じゃないかと思ったのだ。いや、防御力に自信があるから、あんな服装なのか、と思い直した。 「手抜きは良くねぇな」 エシディシがそう言うと同時に、破壊されたピアノの鍵や板、内部のパーツが地面に落ちる音が連続的に続いた。 無骨で不細工な音の連続の中、後藤が「そうだな」、と言い切った刹那。エシディシの姿が消えた。しまったな、と後藤は思った。 破壊されたピアノのパーツが、後藤の位置からエシディシを見るのに邪魔になる、その丁度良いタイミングをあの男に狙われてしまった。 彼の言う通り、手の内を晒したくないからと、ピアノを投げて攻撃するのは失敗だったな、と後藤は後悔した。 後藤の頭より高い所までジャンプ、そのまま彼の方へとエシディシが向かって行く。頭上からの奇襲だ。 後藤の顔面目掛けて、浴びせ蹴りを見舞おうとするエシディシ。そのまま直撃すれば、首を吹っ飛ばす程のスピードと威力を誇る。 後藤はエシディシのこの一撃に、力の限り振るわれる大斧のイメージを見た。一切の予備動作を見せる事無く、後藤が数m程の距離を飛び退く。見事な反射神経と、体重移動の妙技であった。 後藤が絨毯の上に着地する。百分の一秒程遅れて、エシディシも着地する。体勢を整えるその隙を縫って、後藤が絨毯を蹴った。 踏込の際の余りの脚力に、足が接地されていた絨毯部分が千切れ飛ぶ。後藤の姿は着地点から掻き消え、彼は肌色の風となってエシディシへと一直線に向かって行く。 ごく短距離の瞬間的な時間ならば、銃弾にすら迫る程の速度での移動を可能とする後藤の脚力。さしものエシディシも、これには目を剥いた。 何たるスピードか。宛らジャガーか、それともピューマだ。 後藤が左腕を振り上げる。この時エシディシは、見た。 彼の左腕がアメーバのような単細胞生物の如くグネグネと流動し始め、変形。人間の腕の形から、インドの刀剣のフィランギめいた形状の直剣に変化するのを。 この間、ゼロカンマを下回る。エシディシが驚いたのは果たして、その変形の速度か? それとも、関節の類が後藤には通っていないと言う事実にか? はたまた――腕を剣に変える、と言う、生前の彼の同胞が使っていた流法(モード)に似た戦法を、後藤が取ったからか? 後藤が凄まじい速度で左腕の剣を振り下ろす。避ける事は最早不可能と考えたエシディシは、この攻撃に対応しようとする。防御、と言う形で。 右拳を強く握りしめ、腕全体に力を込めた状態で、振り下ろされた左腕の剣の軌道上にエシディシは腕を配置する。 エシディシの下腕部に、後藤の剣が中頃まで食い込んで、其処で止まっている。「むっ」、と言う声が後藤の口から漏れた。 刃から伝わる感覚が、明らかに筋肉のそれではない。例えるならばそれは、何百条ものワイヤーをこより合せて作った棒。 後藤は、剣となった腕を打ち込んだ『もの』の感触から、本当に人体を斬ったのかと錯覚する。後藤の感覚では、腕ごとエシディシの身体を寸断している筈だったのだ。 エシディシの右腕に食い込んだ後藤の剣腕に、水が浸透して行くように、激痛が伝わった。この痛みは、何だ。強い酸性の液体をかけられた様なこの痛みは。 打撃や斬撃、銃撃と言ったショックや痛みには強いパラサイトとは言え、身体を構成する細胞に直接影響する痛み――今回の様な場合は話は別である。 特に、一つの身体に五つのパラサイトが集まり、統率者である後藤というパラサイトが、四つのパラサイトを統制する後藤にとって、今回の様な自体は深刻だ。統率を維持出来ず、大幅に動きが制限される恐れがあった。 急いで剣の左腕を引き抜き、十m程の距離をエシディシから離す。 サーヴァントの捕食は、そう簡単には行かぬかと歯噛みするエシディシ。やはり反射神経に優れるサーヴァントであると、身体に舞い込む異変に気づくのも速いらしい。 柱の男と呼ばれた者達が得意とする、経口以外に栄養素を摂取出来る捕食。彼らは身体を構成する細胞の全てが捕食器官としての役割を持ち、消化液の分泌を可能とする。 つまり、彼らはその手で相手の肉体に触るだけで、相手の身体を溶かし、削り、その栄養素を皮膚から摂取出来る。 NPCならばともかく、サーヴァント、特に三騎士クラスの捕食は、好条件が揃わない限りは狙いに行けない。エシディシはそう認識した。 しかし、迂闊に攻撃を叩き込むのは、かえって危険であると言う認識は、後藤に植え付ける事には成功したようだ。 況してや後藤は肉体を武器に変形させて攻撃するサーヴァント。幾ら武器に変形するとは言え、結局は自分の肉体の形状を変えていると言う事実は覆らない。 つまり後藤は――偽りの霊長の殺人者は、エシディシと言う偽りの原初の一を相手取るには、強い不利を強いられるのだった。 今度はエシディシの方が後藤の方に突っ込んで行く。後藤の剣の一撃を喰らった右腕のダメージは、既に回復していた。 俺の身体に触れれば捕食される事を薄らと認識し始めただろう、と言う公算に基づき、強気に攻める姿勢に切り替えたのだ。 実際エシディシのこの読みは当たっており、後藤は逃げるように後方へと跳躍。追いすがるエシディシから更に距離を取る。 エシディシからバックステップで距離を離した後藤は、着地後、再度彼は後方へと跳躍する。 だが跳躍に用いた力から計算すれば、このまま行けば彼は壁に激突する――かに見えた。 後藤は跳躍中に体勢を整え、両足から壁に接地。すると彼は、壁を器用に足で蹴って、天井に向かって鋭い角度で急上昇。 エシディシが頭上を見上げる。そして見た。八~九m程はあろうかと言う高さの天井まで到達した後藤が、その左脚で何かを蹴り抜いたのを。 後藤が地面に落下するその隙を狙って、直接身体に血管を打ち込んで怪焔王の流法をお見舞いしてやろう、エシディシはそう考えた。 しかし、着地の瞬間を狙って攻撃されるだろう事は後藤も読んでいたらしい。彼は何と右脚一本で、天井にコウモリの如くぶら下がっていた。 エシディシは後藤の右足を目を凝らして見てみる。脚部を猛禽類に似た形に変形させている。鋭い爪を天井にがっきと喰い込ませ、今の状態を維持しているらしい だが今の状態ならかえって好都合。相手の動きが目に見えて制限されているのが明らかであるからだ。 今こそ、あのサーヴァントにアーチャーの由来を見せつけてやる時だった。怪焔王の流法による、溶岩弾の様な熱血を奴目掛けて放ってやるのだ。 後藤目掛けて腕を伸ばした、その時だった。 天井から床目掛けて、勢いよく水が散水され始めたのだ。突然の出来事にエシディシは面食らい、反射的に水から遠ざかろうとする。 が、冷水は殆ど部屋全域をカバーする程の量であり、この室内で戦う限り逃れる事は出来なかった。 エシディシが水に対して硬直した、その一瞬を狙い、後藤は天井を蹴り地面に勢いよく急降下。着地する。 彼は天上へと向かう際に、スプリンクラーの止水部を蹴り抜いていたのだ。結果、溜まっていた水が勢いよく放水された、と言う訳である。 壊れたスプリンクラーから、水の紗幕が噴出する。降り注ぐ水越しに見る互いの姿は、豪雨の中で物を見ている様に煙っていた。 後藤としては、左腕に付着したエシディシの消化液を洗い流すのと、着地する為の隙を作る以上の意味を、スプリンクラーの破壊に求めていなかった。 しかし後藤は知る由もないだろうが、エシディシにとってこの散水は非常に厄介な意味を持っていた。 消化液が洗い流されるだけならば、まだ良い。最も彼にとって困るのは、怪焔王の流法の効力が半減する事だ。 摂氏五百度にまで沸騰させた血液を放射する宝具、怪焔王の流法。直撃すればサーヴァントであろうともただではすまないが、水で洗い流されれば効力は落ちる。 この散水が何分続くかは解らないが、今の状況のように連続的に水を浴びせられている状況では、直接体内に熱血を打ち込みでもしない限り、 怪焔王の流法は本来の力を全く発揮出来ないと言っても良い。消化液と怪焔王の流法の効果が共に落ちる……今の状況は、エシディシにとって非常に悪いものだった。 今の状況なら消化液もさして怖くないと判断した後藤が、水を吸って重くなった絨毯を蹴り、エシディシへと弾丸のように向かって行った。 間合いに入る前に右腕も、左腕の様なフィランギ状の直剣に形状変化させている。 右腕の剣を左から右に薙ぎ払い、エシディシの首を刎ね飛ばそうとする。身体を大きく屈ませ、これを回避するエシディシ。 それを見た後藤が、左腕の剣を上段から落雷の様な勢いで振り下ろす。右方向に横転し、これも回避。 エシディシが体勢を整え立ち上がろうとする、その瞬間を狙って、後藤が右のローキックを彼目掛けて放っていた。 どうやら後藤の肉体変化は両腕だけでなく両脚にも及ぶらしい。膝より下が、サーベルに似た曲刀の形状に変化していた。 バッ、とエシディシが膝立ちの状態からジャンプし、ローキックを回避。後藤が蹴り足を元に戻す前に、彼の胸部にドロップキックをエシディシは叩き込んだ。 砲弾にでも直撃したような衝撃を叩き込まれた後藤は、床と水平に吹っ飛んで行く。背部から壁に激突、ぶつかった方の壁は崩落する。 壁に激突し、それを破壊する程度では蹴られた勢いは殺し切れないらしく、そのまま更に隣の部屋まで素っ飛んで行く。 結局後藤は吹っ飛んだ先の部屋の壁に激突する事で、漸くその勢いが止まった。彼が吹っ飛ぶのを受け止めた壁に、蜘蛛の巣に似た亀裂が生じている。恐るべき、エシディシの蹴りの威力よ。 タッ、と、今も降り注ぐスプリンクラーの散水のせいで、水を吸ってしまい苔のようになってしまったペルシャ絨毯に着地するエシディシ。 キャスターやアサシンのような脆弱なサーヴァントなら蹴りを見舞ったあの時点で勝負ありだったろう。しかしエシディシに、勝利の確信はなかった。 手応えが薄かったからだ。筋肉を蹴ったと言うよりは、板金で作り上げたプロテクターを蹴ったような感覚だった。 ダメージは与えられたかも知れないが、クリティカルヒットには程遠かろう。やはり、熱血を叩き込む他はあるまい。 倒れ込んでいる後藤の方へと駆け寄ろうとしたその時、ダァンッ、と言う衝撃音と同時に、視界の先で倒れ込んでいた後藤の姿が掻き消えた。 それと同時に、先程まで彼が背を預けていた壁が粉砕される。壁を、陸上競技のスターティング・ブロックの要領で蹴り飛ばし、加速を得たのである。結果、壁は壊された。 『あ』の一音を口にするよりも速く、後藤は攻撃が届く間合いに侵入していた。エシディシはまだスプリンクラーの散水が続く部屋から出れていなかった。後藤は、エシディシとスプリンクラーの壊れた部屋で戦う利を逃したくなかったのだ。 移動する過程で、後藤は右腕の形状を変化させていた。ギリシャ神話のポセイドンが持っているトライデントに似た、三叉の切っ先を持った長さ数mの槍状に、だ。 エシディシの素手の攻撃が届かないアウトレンジから攻めるよう、方針を変えたらしい。 トライデントと化した右腕で、エシディシの心臓を貫こうとする後藤。エシディシの口の端が、ニヤリと吊り上る。 切っ先が皮膚を裂き始めるか否か、と言う所で、何とエシディシの上半身が、粘度の棒を曲げるが如くグニャリと弧を描き始め、後藤の一撃を回避したではあるまいか!! 柱の男が得意とする、間接と言うものを無視した極端な肉体操作。後藤の顔に驚愕の相が刻まれたのは言うまでもない。この回避の仕方はまるで―― 「お前、まさかパラサイ――」 後藤が全てを言い切る事はなかった。エシディシは後藤の右腕の、トライデントの切っ先以外の部分を掴み、そのまま背後を向く。 グンッ、と後藤の身体が急上昇する。アーチのような軌道を描きながら、後藤はエシディシに、絨毯の上に強かに顔面から叩きつけられた。 掴んでいた後藤の腕を離し、倒れ込んでいる後藤の方へと走るエシディシ。顔面に血管を突き差し、沸血を注入してとどめを刺そうと言う算段だ。 先程腕を掴んだ時にそうしなかったのは、訳がある。恐らく後藤は、意識的に首より下を硬化させられると判断したからだ。 四肢は勿論の事、胴体も、血管は刺さるまい。だから、顔面に突き差そうとしたのである。 エシディシの意図を読んだ後藤は、即座にトライデントと化させた右腕を縮ませ、元の腕に戻す。 エシディシの両手の爪が、蓋を開けるようにパカリと持ち上がり、其処から血管が飛び出して来た。 と、後藤の左腕が、プレス機で潰されてしまったかのように平べったい、ぺっちゃんこの状態になった。 平べったい腕の表面積が、後藤の身体全体をカバー出来るような大きさになるや、厚さ一cm程の、その硬質化した肉の盾で、エシディシの血管を防御する。 血管が突き刺さらない。クニャリと折れ曲がってしまったのだ。まるで、鋼板にパスタを突き刺すかのようだった。 「味なマネをッ!!」 声を荒げながら、エシディシは後藤に対して右脚によるローキックを見舞った。 肉の盾と変じさせた左腕で攻撃を防ぐ後藤。だが血管針とは根本的に衝撃力が違い過ぎる攻撃だ。 痛みは防げても、衝撃は防げない。蹴り足の衝撃が叩き込まれた方向に、後藤はサッカーボールのように吹っ飛ばされる。 壁に背面から叩き付けられる後藤。体勢を整え、立ち上がった時には、エシディシが既に接近していた。 肉の盾によるガードが下がった所を狙い、エシディシが顔面に右拳の一撃を叩き込んだ。衝撃に耐え切れず、壁が崩落。後藤が矢の如き勢いで吹っ飛んで行く。 壁一枚を破壊する程度では到底勢いを殺し切れなかったらしく、吹っ飛んだ先の壁をも崩落させ、勢いを殺し切れぬまま、まだ素っ飛んで行き、エシディシから見る見る内に遠ざかる。 追撃を加えんと接近しようとするエシディシ。素っ飛んだ先に、壊れたスプリンクラーから降り注ぐ水はない。 エシディシが全力を出せる環境だ。地を蹴りかけるが――急停止する。確かに其処には、水は降り注がれてない。代わりにもっと厄介な物が降り注いでいた。 天空に光り輝く、冬の太陽。地上に冬が訪れようとも、太陽は陽光を燦々と送り続けるだけ。後藤が崩落させた壁には、陽光を採光する為の窓ガラスが建て付けられていた。 「……」 後藤はテニスコートのコート上にまで吹っ飛ばされていたらしい。 三階の高さから突き落とされても彼は平然としており、黙然と言った体で佇立し、エシディシの方を睨みつけていた。 復帰が速すぎる。陽光の当たらない位置にまで近づき、エシディシも後藤を睨みつける。そして同時に、心中で臍を噛んだ。何て面倒な方向に殴り飛ばしたのだ、と。 究極生命体(アルティミットシィング)に至っていないエシディシにとって、陽光は最大の敵である。太陽の下では彼の行動は、大幅に制限されるどころの話ではない。 そもそも行動が出来なくなるのだ。スプリンクラーが水を降り注がせる環境よりも、これは致命的であった。 ――俺がどんな戦い方をするのはバレても良い、最悪使う宝具だってバレても良い。だが太陽を弱点とする、と言う泣き所だけは知られてはならん!!―― エシディシと言うサーヴァントは、一日の半分は全力を出せない時間があり、一日の半分は自身やマスターが殺される以外に滅んでしまう要因が付き纏う時間があるのだ。 これが、何を意味するのか? 打たれる対策が多すぎると言う事を意味するのだ。昼間に襲撃をかけられるだけで、そもそも厳しいものがある彼にとって、 この弱点をたった一人に知られるだけでも、後々に禍根を残す事となる。だから、この状況を何とかして乗り切る必要があった。 後藤に太陽が弱点であると言う事を知られずに。……どうやって? 「何故来ない」 後藤が呟いた。彼からしたら疑問に思う他ないだろう。 あれ程、スプリンクラーが壊れ、水を止め処なく噴出させていた部屋から出たがっていたエシディシが、テニスコートの上に躍り出て、戦おうとしない。 後藤からしたら不審に思うのは、無理からぬ事だった。エシディシは、この心理を利用する事とした。 エシディシは両手の指を後藤の方へと向け、両手の爪をパカッと持ちあがらせ、其処から血管を露出させる。 そして其処から、赤黒い沸血を散弾銃のような勢いで放射しまくった!! 初めて見る攻撃の手段に、後藤の目が見開かれる。 同時に、考えた。エシディシはこれを狙っていたのだと。どのような攻撃か、肉の盾で防御するのは危険と考えたか、飛び退いて攻撃を躱す後藤。 全天候型のテニスコートに血液が降りかかる。ウレタン樹脂製のコートがグズグズに溶け始め、独特の匂いが立ち込め始めた。 成程、そう言う攻撃か。後藤はすぐに、エシディシの血液の謎を看破した。 「お前のクラスはアーチャーか?」 後藤がエシディシに向かって言い放つ。当てずっぽうだ。 「そう言うお前はセイバーか?」 エシディシは質問に答えず、こう言った。此方も当てずっぽうだ。当然、後藤は己のクラス名を言わない。 当然の判断だった。自分が不利になるような情報は、あえて相手に教えないのが、戦の常である。 ややあって、後藤が一歩、此方目掛けて近づき始めた。エシディシは動かない。今度は二歩。やはりエシディシはそれを許した。 もう一歩、後藤が動く。此処で再び、灼熱の血液を散布した。後藤が走る。銃弾もかくやと言う程の速度だった。 放たれた血液を彼は追い越す。虚しく血液は、嘗て彼が歩いていたコート上に撒き散らされるだけだった。 目論見は、恐らく成功したとエシディシは考えた。 彼の目的は、後藤に自分がアーチャーのサーヴァントだと思い込ませる――実際これに関しては事実だが――事だった。 アーチャーと言うクラスは飛び道具による中~遠距離射程の攻撃が主で、接近戦に持ち込まれると脆い、と言うサーヴァントが多い。 だが、エシディシは主に近~中距離射程での戦闘を得意とするサーヴァント、近距離でも比類のない強さを発揮する男だとは、後藤も馬鹿ではない。気付いているだろう。 しかし、向こうも考える筈だ。アーチャーを相手に、距離を取って戦うよりはマシだ、と。だったら近接戦闘に持ち込んだ方がマシだ、と。 そう思わせる為に、エシディシはわざとらしく熱血を撒き散らした。陽光の当たる場所から、当たらない場所へと近づけさせる為に。 ドォンッ、と言う音が下の階から聞こえて来た。一回の壁を後藤がブチ壊した音である。 崩壊させた壁の先の部屋から、天井を破壊して移動、エシディシがいる階の床を壊しながらダイレクトに現れる。エシディシはそう当たりを付けた。 だが、来ない。後藤の身体能力ならば二秒もあればエシディシの所に到達出来る筈なのに、七秒経っても現れない。 何をモタモタやっている。と愚痴った所で、気付いた。この館にいるのは、俺達だけじゃなかっただろう。他に誰がいる。広川と、後藤のマスター。もしかして奴は――。 「チィ!! 俺様の勘も鈍ったもんだぜ!!」 盛大な舌打ちを響かせて、エシディシが思いっきり床を踏み抜き、床を崩落させる。 今回に限っては、相手の方が少しだけ上手だった。英霊の座でのんびりしてドタマまで腐らせやがってと自分を罵倒しまくるエシディシ。 考えてみれば、当たり前の話だ。相手のクラスがアーチャーで、接近戦を挑めば消化液による防御が待ち受けている厄介なサーヴァントが。 自らの主から距離を取っているのであれば。誰だってマスターを狙いに行く事に。 8: 「知りたいのかい」 振り向かずに、ペンギンが言った。 「知りたいですね」 広川がすぐに返事した。客間は今、殺気を胸中に秘めながら、互いの腹の中を探り合う、魑魅魍魎の伏魔殿となっていた。 「ジョーズって知ってるかい、アンタ」 傘を物色しながら、ペンギンが訊ねて来た。 「スティーヴン・スピルバーグの、サメの映画ですか」 「そう、それだ。でっかい人喰いザメが、平和なビーチで人を喰う話さ」 「その映画が、何か?」 話が読めないので、広川が再度訊ねる。 「あのデカいサメ、人を喰うから悪役みたいに思われてるがな、本当は自分の縄張りを悠々と泳いでただけなんだぜ? 人間が勝手にテリトリーに入って来たから、噛んだだけなんだ。其処には悪も善もクソもないんだ」 「……」 「可哀相な奴だよなぁ、あのサメ。腹が減ってたから人間を喰っただけなのに、図体がデカくて醜いだけで恐れられて、よってたかってリンチされて。まるで……俺みたいだ……」 最後の言葉は、演技ではなかった。万斛の思いが、その言葉に込められていた。 「で、シュレック氏は何処に――」 「シュレックなんていねぇよ!! 俺の呼び出したジョーズが使用人ごと喰っちまったさ!!」 声を荒げてペンギンがそう叫ぶと、彼は傘立てから一本の傘を取り出し、その先端を広川に合わせた。 パァンッ!! ペンギンの叫び声を上書きする程の炸裂音が、客間の空気を切り裂いた。銃声である。『広川』の方から響いて来た。 「ぐっお……!?」 呻き声を上げて、ペンギンが、手に持っていた傘を床に落とした。傘は開かれており、その一部に黒点が空いていた。 傘の先端の照準は、尚も広川の方に向けられている。広川はこれを第六感か、それとも虫の知らせか。兎に角不吉と考え、急いで左に飛び退いた、瞬間の事。 ペンギンが落とした傘の先端から、バララララと言う銃声を連続的に鳴り響かせ、何十何百発もの鉛のホローポイント弾が広川の立っていた方向に放たれた!! 「ぐっ」、と、広川の方も苦痛に呻吟する。右肩の筋肉をスーツやシャツごと、弾丸が抉ったのだ。ビュッ、と血液が噴き出た。 熱した火箸を押し当てられたような痛みに、広川の顔が苦痛に歪む。生前、ショットガンで胸の辺りを打ち抜かれた記憶がフラッシュバックする。 あの時は即死だったから痛みも何も感じなかったが、今回は銃で撃たれる、と言う感覚を堪能出来る。こんな痛み、二度と堪能する事など御免蒙る。広川の感想がこれだった。 痛みに耐えながら、広川は右手に持っていたベレッタの照準を、ペンギンの頭に合わせた。 聖杯戦争での、サーヴァントどうしではなくマスターどうしでの戦いに備え、用意しておいた拳銃が功を奏した。 いくらゴッサムと言えど一市民が拳銃を所持する事は簡単な事ではないが、身の安全を護る為とでも言えば、広川の立場の場合にはどうとでもなる。 拳銃を購入する為のルートや資金程度なら、問題はない。だが、銃弾を当てられる技量となると、話は別だ。 その証拠に、ペンギンに命中した銃弾だ。頭を狙った筈なのに、ペンギンが血を流している箇所は、左の肩だった。 銃弾を放つよりも速く、ペンギンが傘を開いたせいで、銃弾が傘に当たったせいだった。傘の膜程度は貫くのはたやすいが、それで絶妙に弾道が逸れてしまったのだ。 尤も、万全の状態でも、広川がペンギンの急所に銃弾を命中させられていたかどうかは解らない。何せ彼は、銃の扱いに関してはこと初心者であるのだから。 「公務員って奴は、全体の奉仕者じゃねぇのかい……!!」 「腐ったリンゴを処分するのも仕事ですよ。心辛い事ですがね、ペンギンさん」 「ペンギンじゃない、コブルポッドさんと呼べ!!」 「必要ない。貴方は此処で死ぬ」 言って、トリガーに力を込めようとした、その時。 広川の背後で、ボグォンッ、と言う破壊音が生じた。ベレッタの銃声よりも大きなその音に驚き、音源の方を振り向くと其処には居た。 幅数m程の大穴を壁に開けさせ、ゆっくりと客間へと入り込む、ビキニパンツの大男の姿が。 「おおよく来た!! 見ない間に水も滴る良い男になったじゃないか!!」 ペンギンの言葉通り、闖入者――後藤の身体は、不自然な程水で濡れていた。先程までプールで泳いでいた、と言われても信じる事が出来るだろう。 ペンギンのサーヴァントである、セイバー・後藤と、広川の目線が交錯する。「馬鹿な、アンタはッ!?」 上擦った調子の声が上がったのは、広川の方からだった。後藤も、エシディシの時ですら見せる事はなかった、誰が見ても解る驚愕の表情を浮かべ、広川の事を見ていた。 まさしく彼らが浮かべている表情こそが――死人が蘇った瞬間を目の当たりにした人間のそれなのだった。 「驚いたな……ショットガンでアンタは死んだ筈じゃないのか」 久々に知己にでも会ったような口調で、後藤は語り掛けて来た。 元居た世界の事を思い出す広川。ただ、あの場所とこの場所で違う点は、今後藤は体中から殺気を漲らせて、広川の事を見ているという点。 直剣の形状に変形した左腕が、いやがおうにも広川に恐怖と言う感情を想起させる。 「そう言う後藤さんも、何でこの場所にいるんだ……?」 「サーヴァントとして呼ばれた、と言う事は、そう言う事なんだよ、広川さん。あの少年にしてやられた。存外、パラサイトと言う存在はか弱い生物だったよ」 「何喋ってんだ後藤!! とっととソイツを殺しちまうんだ!!」 「――と言う訳だ。悪いな広川さん、アンタには生前世話になったが……出会った場所が悪かったと思って、諦めてくれ」 言って後藤が、広川の方目掛け、地面を蹴って急接近。 剣の間合いに入るまであと七m程、と言った所で、その地点の天井が、崩落。エシディシが客間に推参した。彼の身体もまた、ずぶ濡れの状態だった。 後藤の対応は一瞬だった。攻撃対象を即座に広川からエシディシへと切り替え、剣と化させた左腕で、下段から上段へと、ツバメが飛び上がるようにして斬り上げる。 身体を僅かに半身にさせる、と言う最小限度の動きでこれを回避するエシディシ。 剣の切っ先が頂点に達したと同時にエシディシは、開いた二枚貝のように持ち上がった両手の爪から、沸血を霧状に散布させた。 摂氏五百度と言う高熱を内包した血色の霧を、後藤は、右腕を胴体をカバーする程の面積の肉の盾にする事で防御。 肉の盾から煙が上がる、しかし、後藤は堪えた様子はなかった。それ所か寧ろ、左腕を剣から、細長い鞭状に変形させてから、四m程サイドステップで距離を取り、 鞭と化した左腕をエシディシに叩き付けて反撃に転じる始末だった。エシディシは、広川の居る方向にサイドステップする事で、鞭の先端から逃れる事に成功。 鞭の先端が石材で出来た床に当たる。パァンッ!! と言う音が生じると同時に、着弾点が砂糖菓子の用に破裂した。 人外魔境の戦いに、ペンギンが目を奪われ、呆然としている事に気付いた広川。 この機を逃さんと、彼はベレッタの照準を再びペンギンへと合わせる。いち早く危機に気付いたのは、ペンギンのサーヴァントである後藤だった。 ポップコーンが破裂するような銃声と同時に、銃弾が放たれた。ペンギンに当たるまで残り三m弱と言う位置で、銃弾が肉の――いや。 パラサイトの膜に包まれ、無害化される。パラサイトの右腕をペンギンの方へと延長させ、銃弾の軌道上に後藤が配置したのだ。 漸く、自分に先程訪れていた危機に気付いたペンギン。彼は慌てて傘立てから、武器を忍ばせているであろう傘を探そうとする。 【勝てそうか!?】 広川が念話で、エシディシに応答を求める。 【やってやれない事はないが、時間帯が悪すぎる。奴は自由に邸宅の外も動けるが、俺はそうもいかん。それに、武器の所有量では、あの醜いデブの男の方が勝るぞ】 【では夜なら勝てると言う事か?】 【当たり前だ、夜ならばあんな紛い物に負ける道理はない】 【なら時間を改めよう。この場は退くぞ】 【歯痒いが、仕方がない】 【地下駐車場で待つ】 【解った。時間を稼いでおこう】 電瞬の会話であった。 広川はすぐに走り始めた。客間の扉を蹴破って廊下に躍り出て、目的地である、車を停めてある地下駐車場へと一目散に向かって行く。 「アイツを殺せ、後藤!!」、ペンギンががなり立てた。それを、何とも冷めた目で見つめるエシディシ。まるでガチョウか、ガキがわがまま言ってるみたいじゃないか、と呆れ果てている。その上真名まで口にするなど、余程頭に来ているらしい。左肩の銃痕の痛みを忘れる程に。 物の試しに、エシディシはペンギン目掛けて沸血の弾丸を射出する。 しかし、そうは簡単に狙わせてはくれないらしい。弾丸はひとつ残らず、後藤のパラサイトの膜に防がれてしまう。 この状況下では、マスターを狙う事は徒労以外の何物でもなかろう。機会を逃すのは歯痒いが、マスターの命令と思い、諦める事にした。 「また来るぜ」 言ってエシディシは、先程広川が座っていたソファを後藤の方へと蹴り飛ばしてから、客間から走り去って行く。 その場から微動だにしない後藤。時速百km以上の加速度を得たソファに胴体から激突するも、まるで彼は答えない。その場に彫像の如く立ち尽くすだけだった。 「お前だって手抜きをしてるじゃないか」 そう言ってから、後藤もエシディシを追跡し始めた。 怒りに震えるペンギンだけが、客間に取り残される体となった。 9: 「車から出ろ、マルク君!!」 鬼のような形相でそう叫ぶ広川の気魄に気圧されたマルクが、慌てて運転席から車外へと降りた。 車にキーが刺さっているのを見て、「よし!!」と頷く広川。すぐに運転席に乗り込み、キーを回し、イグニッションさせる。 そしてチェンジレバーをPからDに変えるや、直にアクセルペダルを踏み抜き、駐車場から退散する。 余りにも一瞬の出来事であった為、その場にポカンと佇むマルク。今の彼は哀れな事に、広川が何をしたのか想像を廻らす事すら出来ずにいた。 そんな状況の中、エシディシが、邸宅に向かう事の出来る通路から駐車場へと勢いよく現れた。遅れて、両腕を幅広の大剣に変化させた後藤が躍り出た。 互いが互いを睨み合う。動いたのは後藤だった。 彼は残像が残る程の速度でその場から消え去り、そのスピードを維持したまま駐車場を縦横無尽に駆け巡った。 壁を蹴り、天井に飛び上がったかと思うと、その天井を蹴り、垂直やら斜め四十五度と言う鋭い角度で地面に急降下。 ジグザグに床の上を走ったり、弧を描いて走って見たり、と。全てはエシディシを惑わし、幻惑させる為の動きだった。 常人であれば誰もが後藤の動きを捉えられず、成す術もなく攻撃を受けてしまう事であろう。 だがエシディシは冷静に、状況に対応した。 両手両足の爪をパカリと開かせ、其処から血液を大量に噴出させる。駐車場全域が、血色の霧で満たされたのは、ほんの二秒程。 釜茹でにされているかのような苦悶の悲鳴が上がり始めた。後藤ではない、マルクのものだった。彼の服は燃え上がり、皮膚やグズグズに溶け始めていた。 大量の血を流し絶叫するマルクであったが、後藤は流石にタフだった。が、流石の彼も五百度と言う地獄の空間は堪えるらしく、苦しそうな表情を動きながら浮かべていた。 しかし、彼にはこの状況を脱する確信があった。当然である、何故ならこの場所にも、『スプリンクラー』はあるのだから。 地下駐車場全域に設置されたスプリンクラーが、全て作動。再び水の紗幕が部屋に満ちる。今回の場合は、本来意図された正しい作動の仕方をしたと言えるだろう。 「チィ、熱で作動するのかアレは!!」 エシディシも此処に来て漸く、スプリンクラーの仕組みに気付いたらしい。 だがもう遅かった。状況は完全に悪化した。言うまでもなく、後藤の方は好転している。怪焔王の流法を封じられるだけでなく、消化液の効力も下がるとみて良い。 後藤を相手に直接的な肉弾戦を持ち込もうとするほど、エシディシも愚かではない。此処は、乗り切るしかなさそうだ。 嘗て、自らを打ち倒した波紋戦士がやってのけた様な、詭道の弁舌を以ってして。 「次にお前はこう言うだろう――」 それは、自分を斃し、風の流法を操る最高の戦士を斃し、究極生命体(アルティミットシィング)を地球から追放した、究極の食わせ物が十八番としたペテンだった。 「『逃げる工夫より戦う工夫をしろ』、とな」 「逃げる工夫より戦う工夫をしろ……ぬ……」 エシディシが指摘した通りの言葉をマンマと口にしてしまい、面白くなさそうな表情を浮かべた。 同時に、エシディシに対して改めて強い警戒心を抱き直した。まさか、心すら読む事が出来るのかこの男は、と本気で信じていた。 「貴様のような若造には解らんだろうがな、直接切った張ったをするだけが戦いじゃないんだぜ?」 「俺が怖いから強がっているのか? アーチャー。俺を倒すには直接切った張ったをするしかない」 「笑えない冗談だけは一丁前に吐くじゃないか、セイバー」 無表情で、強かにエシディシの怒りのツボを突く後藤に、沸々と怒りを煮立たせる。 パラサイトの男の言う通り、シンプルに強いこのセイバーを屠るには、彼を直接粉々にするしかないのだ。 それを行うには、余りにも揃っている状況と条件が悪すぎるのだ。だから今は、機が熟すまで待つ時。その時が、この怪物の身体がバラバラに四散する時なのだ。 後藤の姿が掻き消える。先程まで立っていた、石材の床に、すり鉢状のクレーターが生じる。それ程までの力で、後藤が踏み込んだのだ。 百分の一秒程の速度で大剣の間合いに到達した後藤が、それをエシディシ目掛けて脳天から振り下ろした。 大剣の刃がエシディシの額に触れた――その瞬間の事だった。彼の姿が、大剣を振り下ろした軌道上から消え去ったのは。 完全に大剣が振り下ろされる。しかしこの場所には、血と臓物を桶をひっくり返したように撒き散らしながら、『ひらき』になっているエシディシの姿は存在しない。 この場にいるのは、芋虫のようにその場に蹲るマルクと、自分だけ。冷静に、状況を推理しようとする後藤。 どうも自分のように、超スピードで消え去った訳ではないらしい。となれば、あのアーチャーはどうやって消えたのか。即座に、理由を思い付いた後藤。それは最早、確信に近かった。 「令呪、か」 今頃何処かを車で走っている広川の事を考える後藤。 人間の頃から大胆不敵な面がある奴とは思っていたが、虎の子の令呪をこんなに早く消費するとは、中々どうして、大した奴だと改めて後藤は評価した。 「直接切った張ったをするだけが、戦いじゃない、か」 その言葉の意味を考える後藤。この男にとっては、直接殴り合い、斬り合い、撃ち合う事が戦いであったが、エシディシにとってはそれだけが戦いではないらしい。 あの男のようにペテンやブラフを駆使する事も、また必要な要素かと後藤は認識した。生前は考えもしなかった事だが、今になってそれを理解するとは。 もしかしたらもう少しそう言った事柄に重きを置いていれば、自分の内臓に錆びた鉈を振り下ろしたあの少年を相手に、不覚を取る事はなかったのかも知れない。 冷たい水が、後藤の身体に降り注いでいた。 冬と言う季節も相まって、身体が切れるのではないかと言う程の冷たさが身体に舞い込んでいるが、この程度の寒さは苦にならない。 ふと見ると、広川の役員付運転手をしていた、マルクと言う男が、「う……あ……」、と言いながら地面に蹲まり、ミミズのように蠕動しているのが見えた。 今ならば喰らう機会なのかも知れないが、何だかそんな気には後藤はなれなかった。彼はマルクの脳天に、大剣を振り下ろした。 彼の頭はザクロのように割れ、其処から血とプリンのような質感の大脳が零れ出た。後藤なりの、優しさだったのかも知れない。 【MID TOWN FORT CLINTON/1日目 午前】 【セイバー(後藤)@寄生獣】 [状態]魔力消費(小)、肉体的疲労及びダメージ(極小) [装備] [道具] [所持金]マスターのペンギンに依存 [思考・状況] 基本:戦う 1. もう少し作戦とやらを練って戦うか…… 2. 聖杯戦争……退屈はしなさそうだ [備考] ※広川組がマスターであると認識しました ※もう少し慎重に戦ってみようかと考えています ※エシディシの身体に迂闊に触れると危険だと解りました。もしかしたら、太陽が弱点なのでは、と言う事を薄ら気づき始めているかもしれません 【オズワルド・コブルポッド@逆転裁判シリーズ】 [状態]左肩に銃による負傷、魔力消費(小)、広川に対する強い殺意 [令呪]残り三画 [装備]黒い紳士服 [道具]武器を仕込んだ傘 [所持金]シュレック邸にある大量の資金 [思考・状況] 基本:聖杯をぶちまける 1. 広川と言う男を絶対に殺して見せる 2. 聖杯戦争を勝ち残る [備考] ※広川組をマスターであると認識しました ※広川によって左肩を撃たれました ※広川に対して強い殺意を抱いております ※シュレック邸の住民を、家主のマックス・シュレック含めて全員皆殺しにしています ※原作で飼いならしていたペンギンや、奇形サーカスの仲間がゴッサムにいるかどうかは、お任せ致します ※現在はシュレック邸にいます 10: 「痛み分け……と言うのは甘い見通しか」 キャデラック車を運転しながら、広川が歯痒そうな表情でそう言った。その表情は、決して抉られるように右肩に刻まれた傷のせいだけではなかった。 今も其処からは、血液がドクドクと溢れ出ていた。 「相手のサーヴァントの真名や戦い方をお前から聞ける、と言うのは大きいと言えば大きいが……こちらは令呪を失ったからな。それに、俺の戦い方も、向こうは解ってしまっただろうし、やや俺達の方が不利だろうさ」 暗幕が垂れ込められたリアシートで、水に濡れたエシディシが重苦しい表情で現状を憂いていた。 彼に言われて、広川が自分の右手に刻まれた令呪を見た。令呪が一画失われている、と言う事実は揺るがなかった。 車内に今すぐ戻れ、それが令呪を以てアーチャーに下した命令だった。切り札の令呪を無駄に使ったと考えるべきなのか。 それとも危機を脱する為に必要な仕方のない消費だったのか。広川には如何判別すべきなのか、解らない。 予め広川が、後藤の索敵範囲外まで車で移動し、其処に差し掛かったと同時に、令呪を用いてエシディシを空間転移させる。 その作戦自体は、上手くいったし、窮地を脱する為と考えたのならば、見事な策だっただろう。だが、こんな序盤で令呪を消費してしまった、と言う事実が重くのしかかる。 無論、令呪を一切使う事無く脱落するよりかは遥かにマシなのだが、そう考えても、割り切れないものがある。 「そう悔やむな、ヒロカワ。夜だ。夜を待て。俺がその力を十全に発揮出来る、闇の時間を心待ちにしていろ」 釈然としない広川の気持ちを汲んだエシディシが、直に彼をフォローした。 細かい所で気配りの出来るこのアーチャーを、広川は重宝している。人間の上に立っていたと豪語する種族の男の割には、中々マメな男だった。 「……アーチャー」 「何だ」 神妙な声音でそう呟いた広川に、エシディシはそう返した。 「あんな醜い男には負けてられん。勝つぞ」 「ははは、やはり気が合うな。俺も、他人に侮辱されたらやり返さないと気が済まないタチでな」 ――俺が怖いから強がっているのか? だと、あの若造め。 エシディシは、スプリンクラーから水が降り注ぐあの地下駐車場の出来事を思い出すだけで、業腹な気持ちになるのだ。 時間帯に恵まれただけの小僧に、あそこまで馬鹿にされるのは、我慢が出来ない事なのだ。闇の一族としてのプライドが、それを許さない。 エシディシの筋肉が、ミシリと言う音を立てて膨張した。内部で、抑えきれぬ怒りの念で煮え滾る血液が循環しているのがエシディシにも解る。 今は、想像の中だけで、後藤の顔面に、怒りで沸騰した自らの熱血を打ち込む位で、自らの溜飲を下げる事にしたエシディシ。 やがてこの想像を現実の光景とするその時を夢見、今はまだ、太陽の光に雌伏の意を示してやる事にするのだった。 【MID TOWN COLUMBIA PT/1日目 午前】 【アーチャー(エシディシ)@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]魔力消費(小)、肉体的ダメージ(小) [装備] [道具] [所持金]マスターの広川に依存 [思考・状況] 基本:聖杯戦争に勝ち抜き、宇宙を漂う同胞と、座にいる部下を呼び戻す 1. 一筋縄ではいかない奴らが揃っているな、やはり…… 2. 太陽、やはり憎い奴だ [備考] ※ペンギン組がマスターであると認識しました ※夜まで待機の姿勢でいます ※三騎士クラスの相手には、自らの十八番である全身の細胞を用いた消化は厳しいかもと思っております ※後藤に対して強い怒りを抱いてます 【広川剛志@寄生獣】 [状態]右肩に銃による負傷(ペンギンの物よりはダメージは低い)、魔力消費(小)、肉体的疲労(小) [令呪]残り二画 [装備]スーツ [道具]ベレッタM92 [所持金]現金数万円、クレジットカード [思考・状況] 基本:聖杯を手に入れ、アーチャーの望みを叶えると同時に、生命の調整を行なう 1. アーチャーが本領を発揮出来る夜まで待機する 2. ペンギンを何とかして葬る [備考] ※ペンギン組をマスターであると認識しました ※ペンギンによって右肩を撃たれました。但し、ペンギンの物よりはダメージは軽微です ※帯銃しています ※令呪を一画消費しました ※現在キャデラック車を運転し、シュレック邸から遠ざかっています。何処に向かっているかはお任せします BACK NEXT 006 S(mile)ing! 投下順 008 Feel A Fear 時系列順 BACK 登場キャラ NEXT 000 Lights,Camera,Action! 広川剛志 029 Doppelganger アーチャー(エシディシ) 000 Lights,Camera,Action! オズワルド・コブルポッド セイバー(後藤)
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095 STRENGTH -世界- ◆dKv6nbYMB. 「やぁ、キョウコ」 杏子がジュネスへと向かう道中のことだった。 突如背後に現れたノーベンバー11は、まるで友人に挨拶をするかのように笑顔で挨拶をした。 「どのツラさげて出てきやがったてめえ!」 杏子は即座に槍を構え、ノーベンバーを刺そうとするが (こいつは妙な鎧を持ってやがったな....正面から向かったところで無駄か) あの鎧を破壊するのは骨が折れそうだ。そんなことに気が向いてる内にまた凍らされるのはゴメンだ。 殺るなら不意打ち。それに決まりだ。 そう判断すると、杏子はひとまず槍を納めた。 「いい判断だ。冷静さまでは失っていないようだ」 「チッ。なんのようだよ」 今にも跳びかかりたくなる衝動を抑えて、杏子はノーベンバーに問いただす。 (最初の戦いでは不覚をとったが、それはこいつの能力を知らなかったからだ) 杏子は考える。 言い訳にしかならないが、能力を知ってるのと知らないのではだいぶ状況が違ってくる。 それはジャックもわかっているはずだ。合理的判断を心がけているこいつがそれをわからないはずがない。 だから、わざわざあたしに話しかけるということは、そのリスクを考慮したうえでも、あたしを退けられる自信があるからだろう。 もしくは、それすらハッタリで『私はお前より常に優位にいるぞ』とアピールすることであたしを牽制するつもりか... どちらにしても、この男はいますぐ殺しあうつもりはないことは確かだ、と。 「話が早くて助かる。...この殺し合いについて、きみの意見は変わらないか?」 意見が変わらないか。すなわちそれは、このまま殺し合いに乗るか主催者に叛逆するかということだ。 イエスと答えれば、杏子は敵とみなされるだろう。それはそれで望むところなのだが、もし既にこいつに仲間がいた場合、杏子の勝ち目は薄い。 ノゥと答えても、それがすんなりと通じる相手とは思えない。 なにより、自分自身でもその答えがよくわかっていないのだ。 優勝したところで、これといって欲しいものなんてない。また元の生活に戻るだけだ。それだけならわざわざ優勝しなくてもできるのかもしれない。 かといって、どこぞのお人好しのように、死んでまで貫きたい信念などありはしない。 これらを擦り合わせても答えは出ない。 イエスかノゥ。いまの自分はどちらでもない。 だったらウダウダと悩むことはない。そのままを伝えればいい。 「別に乗ることは間違っているとは思わない。けど、わざわざ脱出しようとするのを邪魔しようとは思わないよ。あたしはただ、生きれればいいのさ」 杏子の出した答え。それは、必要に応じて考えを変えること。 脱出の手がかりが掴めれば、それに便乗すればいい。 優勝するしかにないのなら当初のように殺し合いに乗ればいい。 要は、広川に命を握られているこの環境さえどうにかなればそれでいいのだ。 「奇遇だね。私もそう考えていたところだよ」 「?」 「どうにも、このゲームは厄介なようでね。一人で攻略するのは難しい仕組みになってるらしい。脱出を目指すにしろ優勝を目指すにしろ、ね」 「そうかいそうかい。それで、あたしと組もうって考えたわけか。頭沸いてんのか?」 「そこまでは期待していないさ。ただ、私はこう見えても怖がりでね。ちょっとついて来て貰いたい場所があるんだ」 「...何処に行く気かは知らないけど、お断りだね。あたしになんのメリットもない」 なんなんだこいつは。 最初に会ったときからそうだった。 いきなり現れたと思えば、偽名は名乗るわ説教かましたうえに猫(マオ)まで奪っていくわで腸が煮えくり返る思いをさせられた。 しかも今度は手を貸せと提案してくる。 いい加減にしろとヤキをいれたいところだったが、奴のペースに乗せられては駄目だと自制する。 「それがきみにもメリットはあるんだよ。実は、猫ちゃんが持っていかれてしまったんだ」 「...は?」 予想外の言葉に、杏子は思わずあんぐりと口を開けてしまった。 (さて、どうしたものか...) 幸運にも、ノーベンバーはまたしても先に杏子を発見することができた。 このまま無視して、杏子がDIOのもとへ向かうことを祈ろうかとも思ったが (妙なタイミングで遭遇して噛みつかれても困るからな) 自分を敵視している彼女のことだ。 見つかれば即座に槍で攻撃してくるのは想像に難くない。 (ここはあえてこちらから接触するとしよう) こちらから接触すれば、杏子の行動を監視できるうえ、不意打ちをくらう恐れも無い。 寝首をかこうとはするかもしれないが、それを防ぐ猫という大義名分もある。 それに、ノーベンバーとしてはDIOの本性についても気がかりであった。 (彼が単に力の強い猛者なだけか、それとも私たちに害を為す危険人物か...なるべく早く知りたいしな) しかし、DIOは自分があれだけ疲弊した帝具『インクルシオ』と似た性能を持つ帝具『グランシャリオ』を大した疲労も見せずに着こなしていた。 万が一交戦することになれば、自分一人の力では厳しいものがある。 そのため、自分以外の戦力が欲しかった。戦闘力と信頼を秤にかけ、期待した戦力は猫の元々の仲間である黒、そしてこの場では猫の相棒だった杏子だ。 (先にこちらが有利な状況を作りたいが...) 先程のDIOとの遭遇を思い出す。 DIOはグランシャリオこそ着ていたものの、下手な小細工をせずにこちらに接触してきた。 そのとき、自分は警戒心を抱き、とっさに能力を使う準備をしてしまったが、あくまでもそこで留めた。 やはり生き物というやつは、正面からこられるのが一番苦手らしい。 (接触方法はDIOに習うとするとしよう) そして、ノーベンバーはDIOと同じように、小細工なしで向き合った。 狙い通りと言うべきか、杏子はノーベンバーに手出しをすることはなく、ひとまずは話し合う形に落ち着いた。 (さて、この選択がどう出るか...) ☆ 「んふふ~ねこちゃ~ん」 「うにゃぁ~」 少女が、猫を抱きしめて頬ずりをしている。 傍からみれば、少女が動物を愛でているという微笑ましい光景だ。 少女の精神が正常であるとすればの話だが。 (...まったく、もったいないことをする) 猫(マオ)は、みくの切断された左太ももを見て思う。 みくと戯れている際に、さりげなく右足首を確認したが、中々のものだった。 柔らかな肌。かといって、ぜい肉だらけのだらしないものではなく、それなりに引き締まった感触。 たまらない。素直にそう思った。 きっと、左足首もそれはいいものだっただろう。 それだけに、この少女の左足が無くなったことを残念に思う。 (いますぐにでもあの悪党に足首の良さのなんたるかを叩き込んでやりたいが...はぁ) 当然、ただの喋る猫同然の自分がそんなことができるはずもなく。 出来たとしても、一笑に伏せられて殺されるのがオチだろう。 そもそも、鍵をかけられたこの部屋では、脱出することすら敵わない。 (いまの俺にできるのはこれくらいか...) 猫がみくの頬を舐めると、それだけでみくの顔は笑顔に包まれた。 いくら操られているとはいえ、この状況ではずっと塞ぎこんだままよりは気が楽だ。 偽りの笑顔だろうと笑顔は笑顔。ないよりはマシだろう。 猫は、みくの腕から逃れ、ごろりと仰向けに寝転がり腹を見せた。 「ごろにゃ~ん」 「か~わ~い~い~!」 俗にいう、服従のポーズである。 さあ、今の俺はただの猫だ。好きなだけ撫でろ。愛でろ。 頭でも腹でも、好きなところに触れればいい。 「ふわああああああ!もふもふうぅぅぅ~!」 ふふっ。いきなり腹に顔を埋めてくるとは、なかなかアグレッシブじゃないか。 いいぞ、そのまま頬で腹を撫でていろ。そうすれば、お前は未知なる至福の一時を... 「ねこちゃん、ねこちゃ~ん!」 ひゃっ!?き、急に変なところをまさぐるな!全く、最近の若いのは風紀が乱れ気味ときくが... ひゃわっ!?そ、そこは駄目だ!そこは俺のじゃくて...んっ! 「しっぽピーンってなってるにゃあ」 な、なんだこの子は。まるで暗殺者のように俺の急所を的確に...まずい、このままではんああっ! 「にゃはっ、ねこちゃんおもしろ~い」 馬鹿な、この俺がこ、こんな小娘にいいようにされるなんて...悔しい、でも... にゃあああああああああああああ――――――――ッ!! 「随分とお楽しみだね、猫ちゃん」 「......」 笑顔で覗き込んでくるノーベンバーと目が合った時、猫(マオ)の表情は固まった。 母親に見られてはいけないものを見られてしまった男子中学生とはこういうものかと、なんとなく思った。 DIOが吸血鬼と教えられていたノーベンバーは、日光を防ぐのなら上階より地下の方が確率が高いとふみ、階段を下りた。 しかし、部屋に入ってみればいるのはDIOではなく、虚ろな目で笑い呆けている、片足のない少女。 猫が共にいることから、この少女が、DIOの言っていた『傷心の女の子』に違いないが、まさかここまでとは思わなかった。 (いや、これは傷心なんかじゃない) 「おじさんだぁれ?」 「私かい?私はジャック・サイモン。そこの猫ちゃんのお友達さ」 「ねこちゃんの、お友達!」 止血処置されている様子からみて、片足になってからそこまで時間は経過していないはず。 だというのに、少女は心底楽しそうな笑顔を浮かべている。 (これは、何者かに精神を侵されているな) ノーベンバーは、組織のエージェントとして様々な人間を見てきた。 その中には元々常人の理屈から外れた者もいたが、これはそんなものではない。 また、片足を失ったショックで狂った人間にしては、笑い方がまともすぎる。 狂ったから笑うのではなく、楽しいと思うから笑う。 人間として当たり前の行動だ。 その『当たり前』を短時間でできる状態にするには、他者の介入が必要である。 もっとも、この少女が自分達以上に死地を経験してきた者なら話は別となるが、少女の肉付きからしてまずないだろう。 そして、この介入はメンタルケアなどではなく、少女がこうなるように洗脳したと考えるべきだ。 (それに、この少女が片足を切断された理由...) もしも、DIOが自分と会う前に危険人物と遭遇し、少女がその敵に片足を切断されたのなら、DIOはそのことを話題に出したはずだ。 なぜなら、他人にも危険人物を伝えることで、DIOを脅かそうとする者を排除できる確率は高くなり、目指すのが脱出にしろ優勝にしろ、動きやすくなることには変わりがないからだ。 即ち、少女の足を切断したのはDIOである可能性は高い。 そんなことをする理由は、拷問か猟奇趣味か、それとも薬かなにかの実験か...どう考えてもロクな理由ではない。 しかも、下手に生かしておくぶんタチが悪い。吸血鬼として、生血のストックでも蓄えているのだろうか。 紳士ぶった態度の裏にこんな残虐性を持っていることを知れてよかった。 下手に信頼を置けば、いずれは自分もこうなっていた可能性は高い。 最悪、彼と戦うケースの想定もしておくべきだろう。 「しかしお前...カギがかかってたのによく入って来られたな」 「伊達にエージェントはやっていないよ。あの程度のカギ穴ならピッキングは余裕でできる」 「それは心強いこった。それにしても、せっかくの助けがお前とはな...はぁ」 「できれば、私もきみの仲間が一緒なら心強かったんだがね」 「まあいいさ。とにかく、一刻も早く脱出経路を確保しよう。ここにいるのはなにかとマズそうだ」 「それは私も思っていたところだよ。だが、この少女はどうする?」 「うぅむ...できれば連れ出してやりたいところだが...」 「ねこちゃ~ん、んふ~」 「この通りでな。お前一人では連れ歩くのも厳しそうだ」 「できればそんなリスクは負いたくはないものだがね」 DIOの本性も知れたのだ。すぐにでもここから離れるべきなのだが、この少女、みくをどうすべきか。 今後の方針を話し合う一匹と一人の背中をドアの隙間から見つめるのは一つの影。 (...ちょっとマズイ展開になってきたゾ) DIOの言葉に従い、最上階の部屋で休憩していた食蜂。 数十分ほど休憩し、食蜂は能力の観察のために地下室を訪れた。 しかし、鍵の開けられたドアを発見したため、不安に駆られながらも足音を殺し、僅かにドアを開けて覗きみたところ不安は的中していて。 地下室には、見知らぬ白スーツの男が佇んでいた。 男が、自分に気取られることなく侵入していたことにも驚いたが、それだけではなく猫も普通に言葉を発していたことにも驚いた。 (やっぱり、あのネコちゃんかかったフリをしてたってわけねぇ) 自分の能力の制限のせいか、あのネコが田村怜子と同じく能力が効かない体質を持っているのかは分からないが、これでは自分の能力にも自信が持てなくなる。 もしあの白スーツの男が彼らと同じ体質だったら。もしも自分の能力が制限により効果を発揮できなかったら。そんなマイナス思考ばかりが頭に浮かんでくる。 勿論、試してみればよいだけの話なのだが、男が前者であった場合、こちらの存在に気付かれ殺される可能性が高い。 生き残ることが目的の食蜂は、そんなリスクを背負おうとは思えなかった。 (ここはとりあえずDIOさんに報告だゾ☆) DIOが眠っているのは頂上の5階。大声を出せば聞こえるかもしれないが、それではこちらの存在をあのスーツ男に知られてしまう。 男にバレないように、物音を殺しながらゆっくりとドアから離れ... 「動くな。死にたくなけりゃあな」 「ッ!?」 食蜂の喉元に、槍の穂があてがわれる。 いつの間に背後に立っていたのかと、思わず背後を振り返ってしまう。 が、しかし何をすることもできず、右手を掴まれ壁に叩き付けられてしまう。 「キャッ!」 「動くなっつってんだろマヌケ。あんたがDIO..じゃねえよなぁ」 痛みと共に、自分がどんな状況に追い込まれたかを整理する。 この場には、最低でも一般人には気配を気取られることなく動ける侵入者が二人。 自分は拘束されている。大声をあげてDIOを呼び出そうものなら、即座に殺されるだろう。 加えて、前川みくの有り様を見つけられれば... 「彼女が洗脳の能力を持つ者かい?」 「ああ。こう見えてとんでもない悪党だ。油断するなよ」 状況は、絶望的である。 「さて。とりあえず名前から聞いておこうか。私はジャック・サイモン。きみは?」 「......」 「答えな」 杏子が拘束した食蜂の腕を握り絞める。 本来なら大した脅威にならない女子の腕力だが、魔法で強化されたその力は軽く成人男性を凌駕する。 そんな力で絞められれば、大した訓練を積んでいない食蜂にはたまったものではない。 「っつ!」 「このままあんたの腕をへし折ることもできるんだぞ?」 「...食蜂操祈よぉ」 「ミサキ...ねぇ」 「なによぉ」 「いや、私の知り合いにもミサキという女性がいてね。それだけさ。気にしないでくれ。さて、次の質問だ。彼女にはどんな暗示をかけたんだい?」 「別に私はなにも...」 「しらばっくれても無駄だ。お前が洗脳の能力を持っていることは俺が知っているからな」 猫の言葉に、食蜂は溜め息をつき、尋問に応じることにした。 とはいうものの、ノーベンバー達が得た新たな情報はみくが『五感で感じる全てを好ましく、自分に都合がよいものと認識する』と洗脳されたことくらいで、後はDIOからノーベンバーが聞いた内容とほとんど同じだった。 「で、どうするんだ?」 「そうだな。このままなにもせず退散というのが常法かもしれないが...」 「それがいいな。触らぬ神に祟りなしというやつだ。俺も賛成だ。杏子、あの子を連れて一緒に逃げるぞ」 「お断りだ。あたしはこのままこの女にDIOってやつのところまで案内してもらおうかな」 「正気か杏子?」 「あたしはまだDIOってのをよく知らないからね。一目見ておきたいのさ」 チラリ、と片足の少女を横目で見る。 『今すぐ家に乗り込んで坊やの手足を潰してやりな。アンタ無しでは何もできない身体にしてやりゃ、身も心もあんたのもんだ』 かつて、美樹さやかに対して挑発で言ったことを思い出す。 目の前の少女が失ったのは、その時の言葉の中のたったひとつ。されど大切なひとつ。 正直、見ていて気分がいいものではなかった。 片足の少女の様子を見るに、DIOという男も取り押さえている女も、自分と同じロクデナシなのだろう。 しかし、どう方針を決めるにせよ、いまの杏子には情報が必要だった。 素直に情報を引き渡すならそれでよし。邪魔をするなら殺すだけ。どう転んでもロクデナシ相手なら後腐れもないだろう。 杏子は、食蜂の両腕を背中で組ませ、破れたカーテンで縛り上げた。 「...別に、こんなことしなくてもDIOさんのところに案内くらいはするんだけど」 「うるせえ。信用できるか」 どん、と背中を押しよろける食蜂に、背後から槍を突きつける。 「妙な真似をしたらぶっ刺すからな」 「...はぁ~い」 とぼとぼと階段を上っていく食蜂と、槍を構えながら後に続く杏子。 「...で、俺たちはどうするんだ?」 「私としては、このままきみを返してもらいたいんだが...なにも言わずにいけばDIOの敵としてみなされるかもしれないからね。一言挨拶しに行くよ」 「楽観的な奴だな」 「そうかな?これから先、いつDIOに狙われながら考えて過ごすよりは合理的ではあると思うがね」 「はぁ...わかったよ。俺もついていく。あんな悪党に付け狙われちゃおちおち睡眠もとれやしない」 ノーベンバーと猫(マオ)も、杏子の後へとついていく。 「なんだ、結局あんたらも来るのか」 「元々は彼のことを知るために来たからね」 「...そいつも連れてくのかよ」 「この場に放置しておくよりはいいだろう。それに、なにか使い道があるかもしれないしね」 「んふふ~ネコちゃんと~おともだち~」 その背に、壊れた少女を背負って。 ☆ ピシュン ピシュン 獣はかける。新たな戦場を求めて獣は駆けていく。 獣が望むのは、闘争。血で血を洗う、生存競争。 獣の目的は、全ての者の殺害。 目指すは、自分を散々苦しめてきた異能力の溜まり場。 即ち、能力研究所――― ☆ 両腕を背中で縛られながら歩く食蜂。 食蜂の背を槍の柄で押さえながら後に着いていく杏子。 その後ろを、みくを背負いながら歩くノーベンバーと猫(マオ)。 「それにしても、どこもかしこも暗いね、ミサキ」 「あなたも聞いたらしいけど、DIOは吸血鬼だもの。カーテンは全部占めてあるのよ」 (じゃあ、ここらのカーテンを全部開けてやればDIOってのも...) 「余計なことは考えない方がいいよ、キョウコ。下手に刺激すれば厄介なことになりかねない」 「わかってるっての。保護者気取りかてめえ...いいか、あんたと馴れ合うつもりはない。ここの用事が済んだら絶対にブチ殺すからな」 「それは怖いな」 そんな雑談を挟みつつ、四人と一匹は階段を上っていく。 四人が四階へと着いた時だった。 いち早く異変に気が付いたのは、契約者猫(マオ)。 本来なら気が付くはずのなかったソレ。 猫(マオ)は、あくまでも動物の身体を媒介にしているだけだ。しかし、野生動物の身体に組み込まれている危機察知能力はここに来て微かに引き出されていた。 「きをつけろお前達!」 足元からの声に、食蜂、杏子、ノーベンバーは思わずギョッとする。 その瞬間、壁や床、天井をバウンドしながら、しかし凄まじい速さでなにかが駆けあがってくる。 それがなにか。正体を確認するよりも早く、それは三人の間に下り立ち 「がっ...」 杏子と食蜂が、ノーベンバーと背負われたみくが吹きとばされ、それぞれ側の部屋に叩き込まれた。 無事だったのは、危機を察知しても動けなかった猫(マオ)のみ。 「...防がれたか」 下り立ったそれ...後藤は、なんとなしに呟いた。 手応えはあった。が、殺ってはいない。 杏子にもノーベンバーにも、後藤は刃と化した腕を振るっていた。 しかし、両者の命を刈り取るはずのそれは、なにか硬いものに防がれた。 結果、4つの骸ができるはずだった攻撃は、敵を吹き飛ばすだけにとどまった。 「やれやれ...いきなり仕掛けて来るとは、随分なご挨拶じゃないかミサキ」 「悪いが、気絶しちまってるよ。あたしにしかれて頭をうったらしい」 「ふむ?彼女ごと攻撃されたか。なら、彼は彼女の仲間ではないのかな?」 それぞれの部屋から姿を現す曲がった槍を手にした杏子と帝具グランシャリオに身を包んだノーベンバー。 後藤の予想通りといったところか、杏子は手にしていた槍で、ノーベンバーは咄嗟に発動した帝具グランシャリオで後藤の攻撃を防いでいた。 しかし、後藤はそれを残念とは思わない。 そうでなくては戦い甲斐がない。 「私はジャック・サイモン。きみは?」 「後藤だ」 「では後藤、きみに問いたい。きみは、この殺し合いにどう臨む?」 「決まっている。全ての参加者を殺すだけだ」 「即ち、私たちと組む気すらない。そう捉えてもいいかな?」 「ああ」 頭部を包んだ仮面の下で、ノーベンバーは僅かに冷や汗を流す (猫ちゃんの警告がなければどうなっていたかわからないな) グランシャリオを発動できたのは、猫(マオ)の警告あってこそ。 それがなければあのパワーにスピード。最低でも腕の一本や二本は失っていただろう。 それに、どうやら話し合おうと言う気はこれっぽちもないらしい。 「...だ、そうだが。どうするキョウコ?」 「...決まってんじゃん。どの道コイツはやる気マンマンなんだからさ...」 杏子は槍を後藤へと構え、堂々と宣言する。 「殺しちゃうしかないでしょ」 それを涼しい顔で受け流し、後藤は両腕を再び刃へと変える。 狙いはこの女と鎧の男。 「来い。お前たちの戦いを見せてみろ」 ☆ 先手をうってでたのは杏子。 槍を構え、後藤へと突きつけた。 後藤は跳躍して槍を躱し、天井へと足をつける。こうなってしまえば、天井も地面と同じ。 スタートダッシュを切るときのように、後藤が地面を蹴った。 後藤が杏子へと放つのは体当たり。しかし、ただの体当たりでもその威力は恐ろしい。 寄生生物の身体能力は、常人のそれを遙かに上回る。更に、両手足もパラサイトである後藤は、地面を蹴るのにもっとも適した足型を作ることができるため、他の寄生生物以上に力強く且つ素早くスタートダッシュを切ることができる。 そこから生みだされる加速力は、常人ではとらえられないほどの速さを生む。 そして、物質とは速度が上がればあがるほど衝突時の力は強いものとなる。 その力により、後藤の体当たりは、鉄球をまともに受ける以上の衝撃を生むこととなる。 並みの人間なら為す術も無く地に倒れ伏すことだろう。 「舐めてんじゃねえぞ。こちとらバケモン染みた奴らと戦い続けてきたんだ!」 しかし、杏子は魔女という異形を相手に勝ち残ってきたベテランの魔法少女。 初見ならまだしも、一度見た技を喰らい続けるようでは魔法少女の世界は生き残れない。 そのため、必然と「避けれる」技術が身についていた。 後藤の体当たりを躱した杏子は、反撃を試みようと振り返る。 しかし、これまで杏子が相手取ってきたのは本能のみで人々を襲う魔女。 後藤も本能に従い戦いを求めるが、そこには殺意があり知能があり意思がある。 同じ本能で戦う者だが、その質は比べるべくもなかった。 (はえぇ...!) 振り向いた時には、後藤はもう次の攻撃準備に移っていた。 壁を蹴り、今度は刃と化した腕を突出し再び杏子に肉薄する。 躱しきれずに槍の柄で受けるが、魔力で強化されたはずの両手に痺れが走る。 (つっ...!こりゃ、何度も受けるのは無理だな) それでも槍を放さず、後藤の方へと振り返る。 が、しかし後藤の姿はない。 まさか逃げた? (違う!上だ!) 予想通り、後藤は天井へと足をつけ再び杏子へと襲いかかる。 天井、床、壁。四方八方から跳ねまわるピンボールのように繰り出される攻撃を躱し続けることは不可能に近い。 これが、5体のパラサイトをその身に統一できる後藤のみに許された屋内戦闘。 後藤のもっとも得意とする戦法だ。 さしものベテラン魔法少女といえど、次第にその身に切り傷が増えていく。 「いい反応だ。屋内で俺の動きについてこられた人間はお前が初めてだ」 (反撃ができねえ...!) 後藤の言葉通り、反応はかろうじてできる。 しかし、もしここで反撃に出れば、決定的な隙を作ることになる。 後藤相手にその隙は命取りとなる。 杏子がとれる戦法は、後藤の猛攻を防ぎながら機を伺うことだけ。 しかし、こうも速く動かれてはその隙もつけやしない。 せめて美樹さやかのような超回復魔法があれば、一度だけ刺されるのを我慢して反撃に出ることはできるのだが、生憎杏子の魔法は回復に向いていない。どころか、理由はわからないが本来の魔法はもう随分と前から使えなかった。 槍と身体能力だけでしばらく戦ってきた彼女と後藤は、この広くない廊下という舞台では相性が悪すぎた。 そして、ついに均衡は崩される。 「ぐあっ...!」 杏子の右太ももに一筋の線が入り、血が溢れだす。 「切断までは至らなかったが、これで機動力は落ちたな」 「ハッ、調子乗るんじゃねーぞ」 太ももに魔力をかけ、どうにか止血だけは済ませる。 「寄生生物でもないのに傷を塞げるとは。変わった奴もいるものだ」 「あんたに言われちゃお終いだ」 「だが、なんのリスクも負わないわけではないらしいな。だからここぞという時にしか使わない」 (バレたか...) 魔力による身体修復は、魔法少女なら誰でもできることではある。 しかし、杏子は回復魔法は専門ではない。本来の魔法は幻術であるため、どう応用しても回復魔法が得てとなることはない。 そんな魔法少女が回復魔法など使えば、より一層ソウルジェムは濁ってしまう。 グリーフシードが無い以上、魔力は温存しておくに越したことはないが、後藤は温存などして勝てる相手ではない。 魔女や魔法少女などよりも厄介な敵だと認識していた。 (ったく、ついてねえなちくしょう) 杏子はここに来るまでのことを思い出し苛立ちを募らせる。 思えば、ここまでロクな目に遭っていない。 初めに出会ったのは、幽霊のようなものを操る学生服の男。ほとんど手も足も出なかった。 次に会ったのはジャック・サイモンとか名乗る変な男。足を凍らされた挙句、猫まで奪われた。 それからしばらくは一人だった。放送でマミが死んだことを知らされた。 またジャックに会った。今度は連れションみたいな誘いで連れてこられた。猫がDIOとかいうのに盗られてなかったら無視してた。あとイラついた。 仕舞には眼前の化け物。ただでさえ厄介なのにこの狭い場所だと相手の方が有利すぎる。 ジャックと会わなければこんな場所でこの化け物と戦うことなどなかった。よく聞けば、この化け物の声もジャックに似てる。 いまの杏子の苛立ちの半分にジャックが関与していることに気が付くと、更に苛立ちが募った。 (そういや、あの野郎どこいった?) 先程から後藤が攻撃を仕掛けているのは杏子のみ。 簡易的に周囲を確認するが、ノーベンバーの姿は見えない。 どころか、猫(マオ)も見当たらない。 (まさかあいつ、あたしに化け物押し付けて逃げやがったのか?) この場に姿の見えないノーベンバーと猫(マオ)とみく。 杏子のみに集中する攻撃。 この状況から判断した答えに怒りは頂点にたち、後藤を倒した後に必ずシメると杏子が決意するのと同時。 後藤が、弾けるように杏子へと肉薄する。 この場にいないノーベンバーにわずかに気をそらしてしまったため、反応に遅れる。 迫りくる刃を慌てて槍で防ぐが、ピシリと柄にヒビが入るのを見て杏子の心に焦燥が生じる。 槍は一旦戻せば修復できるが、そんなことをすれば顔面を串刺しにされるのは確実。 とはいえ、このままでは間違いなく槍の限界が訪れる。 どうするべきか。そんなことを考えているうちに、ひび割れは柄全体に広がっていく。 そして、その時は訪れ。 ―――バキリ 槍の柄はへし折れ 「え~いっ」 間の抜けた声と共に放たれた白粉で、杏子と後藤の視界は塞がれた。 みくが手にしているのは研究所に備え付けられていた消火器。 しかし、いまの彼女に杏子の手助けをするなどという思考は生まれない。 ならばなぜ消火器を使用したのか。 「にゃあああああああ!おもしろいにゃあああ!」 みくにかけられた暗示は、『五感で感じる全ての物が好ましく自分に都合がよいものと思う』ことである。 食蜂からそれを聞きだしていたノーベンバーは、みくに『この消火器を指示したタイミングで使えば面白いことになる』と告げた。 普段のみくならば首を傾げるような要求。しかし、今の彼女はそれすらも自分に都合がよいものと捉えてしまう。 言い換えれば恐怖を感じず言いなりになる人形のようなものだ。 消火器を持ち、使用するといった手順にかける時間をみくに任せ、ノーベンバーは煙の中を駆けだす。 グランシャリオは、ただの防具ではなく、使用者の身体能力をも高める。 そのため、ノーベンバーは普段より速く動くことができるのだ。 走る勢いを殺さず、跳躍し後藤へ蹴撃を浴びせようとするノーベンバー。 しかし、視界が塞がれているはずの後藤はそれを難なく盾と化した右腕で受け止めた。 人並み外れた感覚を持つ寄生生物の前では、煙幕など足止めの意味を為さなかった。 「煙幕など俺には通用しない。当てが外れたな」 「こんなことだろうと思ったよ。だが、思いがけない物が役に立つのが社会の常さ」 仮面で見えないノーベンバーの顔。 しかし、後藤には彼が笑っているかのように見えた。 ノーベンバーがチャックの開いたデイパックを空中へと放り投げる。 「こなくそっ!」 猫(マオ)が、ノーベンバーの背を踏み台にして天井まで跳躍。そして、宙をまわるデイパックへと勢いよく体当たりをし、中身を押しだす。 圧しだされた逆さの鞄からは当然中身は零れ落ち、その中身は、後藤へと降り注ぐ その中身は... 「机...!」 机。研究室で使われているそれなりに重量をもった机だ。 杏子が交戦している間、ノーベンバーが部屋で見つけデイパックにねじ込んだものだ。 後藤は、咄嗟にそれを躱し、ノーベンバーへと刃を振るう。 ザシュ 横なぎに振るわれた刃は、ノーベンバーが手にしていたペットボトルをグランシャリオの装甲ごと切り付けた。 ペットボトルは切り裂いたが、グランシャリオを切り裂くことは敵わなかった。 しかし、グランシャリオを解いたノーベンバーは斬られた場所を押さえて膝を着く。 彼はなぜ跪いているのか。 それを考えるより前に、ノーベンバーを殺すために距離を縮めようとする。が、しかし (動けん...?) 後藤の足元から漂う冷気。 いつの間にか後藤の両足が凍りついていた。 「助かったよ。きみ相手ではこうでもしないと水を撒くことなんてできなかったからね」 冷気の出所は、膝を着いたノーベンバーの指先。 ペットボトルを切ったときに零れ落ちた水を伝っている。 「フェイクか...」 煙幕も、煙に紛れての襲撃も、猫(マオ)を使った不意打ちも。 全ては、ペットボトルを後藤に斬らせ、水を撒くことへの布石だったのだ。 「きみには色々と興味はあるが、私も死にたくはないんでね。終わらせてもらうよ」 懐をまさぐり、ドミネーターに手をかける。 「ここに来てから、お前と同じ氷を使う異能を持った鳥と戦った」 後藤が、唐突に口を開く。 「お前の能力はそいつの下位互換にある。だから」 ドミネーターを構え、照準を合わせる。 後藤の足の氷が弾ける。 ペットショップとの戦闘の時と同じく両脚の氷を内側から破壊したのだ。 『執行モード、デストロイデコンポーザー。対象を完全は』 「お前の氷では俺を止められない」 ドミネーターが変形を終える前に、後藤がノーベンバーの眼前にまで迫る。 『いじょします。ごちゅうい』 ―――メキリ 音声を聞き終る前に、ノーベンバーの鳩尾に、後藤の足が減り込む。 「――――ッ!」 肺から空気を絞り出されるような感覚と共に、ノーベンバーはサッカーボールのように吹き飛ばされた。 ノーベンバー11は契約者である。しかし、契約者といえども身体能力は人間と変わらない。 パラサイトの力はその人間よりも遙かに強い。いくら訓練されているとはいえ、並みの人間よりは優れている程度の身体能力では耐えることはできなかった。 床を転がるノーベンバーへと追撃をするべく、後藤は再び駆けようとする。 しかし、背後からの殺気に身を翻し、迫る槍を躱す。 「余所見してんじゃねーぞボケ」 「その槍は先程破壊したはずだが、時間が経てば戻せるのか」 感嘆したかのように述べる後藤だが、杏子を殺すことにはなんの変化もない。 再び槍と刃が交差する音が鳴り響いた。 ノーベンバーがふらりと立ち上がり、能力の対価である喫煙を行う。 「ゲホッ...」 例の如く咳き込むと同時に僅かに吐血する。 「おい、大丈夫か!?」 「私の心配はいらないよ。それより、彼女の相手をしてやってくれ」 駆け寄る猫(マオ)に対して、ノーベンバーが指し示す先には、未だ洗脳の効果により笑顔でいるみく。 「ゴトウは、戦う者から優先したいタイプらしい。少なくとも、いまのその子やミサキには興味がないようだ」 後藤は、部屋に叩き込まれているはずの食蜂の方には向かわず、杏子の相手ばかりしている。 食蜂を狙った隙をつかれるのを警戒しているのか、単に戦闘好きなだけか。 いずれにせよ、杏子と自分が動ける間は標的はこの二人に絞られるだろう。 (参ったな...少し内臓を痛めたかもしれん) 後藤は強い。ノーベンバーは改めてそう認識する。 いまは杏子と戦っているが、おそらく彼女は負けるだろう。 そうなれば、次は自分の番だ。 (どうする...どうすれば奴を倒せる?) 現在の手持ちであらゆる手段を模索するが、どれも通用する気がしない。 やがて、杏子もこちらへと吹き飛ばされてきた。 「くっそ...」 「...どうだいキョウコ。彼には勝てそうかな?」 「負けりゃ死ぬだろ」 「それもそうだ」 自分と比べて、まだ杏子は幾分か余裕があるように見える。 やはりというべきか、身体能力だけでいえば、自分より優れているようだ。 「さて、杏子。ここで質問だ」 「あ?」 「選択肢は三つ。①私を殺す・放置して奴と一人で戦う②可能性の低い助っ人が来るのを待つ。③協力して奴を殺す。きみはどれがいい?」 「......」 杏子は考える。 ①ジャックを無視して一人で戦う。 できればこれに○を付けたいが、こんな場所では勝ち星が見えない。後藤がこちらを逃がすつもりもない以上、屋外へと出ることも難しい。 ②仲間が来るのを待つ。 仲間、いねえよそんなやつ。ここで会ったのは敵ばかり。暁美ほむらが辛うじて可能性はあるが、こんな厄介な場面にとびこんでくるような阿呆ではないと思う。 ③協力して後藤を殺す。 絶対嫌だ!なにが悲しくて散々コケにしてきた奴と手を組まなきゃいけないんだ!...とはいうものの、殺されるよりはマシだろう。 と、なると、答えなんざ最初から決まってるようなものだ。 「...仕方ねえ。あいつ殺したら、絶対あんたもシバくからな!策はあるんだろうな?」 「あるにはあるが、結構な賭けだ」 「この際なんでもいい。とにかく試すぞ」 「今度は二人がかりか」 「悪いねゴトウ。私も必死なんだ」 「構わん。戦いに工夫が生まれるならそれでいい」 方や、ベテラン魔法少女とMI6最高のエージェント。 方や、最強の寄生生物。 その睨み合いは、常人なら足を震わせてしまうほどに空気を張り詰めさせていた。 訪れる静寂。 ―――いくぞ! 誰が言葉として発したわけではない。 しかし、杏子、ノーベンバー11、後藤。 彼らは、眼前の敵を殺すために同時に駆けだした ここから始まるのが、本当の闘争だ。 「騒がしいな」 そんな空気は、たったひとつの存在に塗り潰された。 ☆ コツ コツ コツ 音を立て、階段からゆっくりと下りてくる男が一人。 男は、四階と五階を繋ぐ踊り場で足を止め、階下の者たちを見下ろした。 心の中心に忍び込んでくるような凍りつく眼差し。 黄金色の頭髪。 透き通るような白いハダ。 男とは思えない妖しい色気... 杏子は一目で理解した。 この、目を逸らすことのできない圧倒的存在。 この男こそがDIOだと! 「やあ、ジャック。まさかこんなにも早く客人を連れてきてくれるとは、素晴らしい手腕だ」 「褒められるのは光栄だが、一人は招かれざる客ってやつでね」 「ほぉう。ところで、みさきちゃんを知らないかな?金髪の女の子なんだが」 「彼女ならどこかの部屋で隠れてるよ。心配はいらないさ」 あくまでも表向きは対等に。 しかし、ノーベンバーはこの男に屈服はしないまでも、確実なる格の差を見せつけられたような感覚を覚えた。 DIOがなにをしたわけでもない。立っているだけだ。 だというのに、先程までの緊張した空気は、全てこの男に塗り替えられている。 決して緊張が解れたわけではない。むしろ、緊張は強まっている。 『いかにこの男を前にして生き延びるか』。 杏子とノーベンバー11は、長年の戦いの経験からその感覚を感じ取っていた。 「招かれざる客とは、きみのことかな?ええっと...」 DIOの視線がノーベンバー達から後藤へと移る。 後藤はどこ吹く風でDIOを睨み返している。 いや、睨んでいるのではない。DIOと言う男を観察するために凝視しているのだ。 後藤が口を開く。 「後藤だ」 「後藤...ふふっ、そうか。きみが後藤か」 DIOはさも愉快そうにくつくつと笑い声を漏らす。 「どうした?」 「いや、失敬...少し前に田村怜子という女性と出会ってね。きみの話を聞いたんだ」 「別人ではなく、俺の知っている田村怜子か。そいつはどこにいる?」 「そうだね。少し前と言っても、四時間は経っているからな...まあ、南のエリアを探せば会えるんじゃないか」 「南か」 思いがけない形で、目的の一つである田村怜子の情報を手に入れた後藤。 しかし、彼はいまだにDIOを観察している。 「どうしたのかね?」 「不思議な奴だ。お前は人間ではない。しかし、寄生生物でもないようだ。お前はなんなんだ?」 「ほぉう、やはりわかるか。このDIOが人間を超越した存在であることが」 後藤は考える。 このDIOとかいう奴は人間を超越した存在らしい。 この男に対して食人衝動はほとんど湧かない。 しかし、自らを人間を超越した存在だと称するのだ。かなりの力を期待していいだろう。 「DIO。お前は面白いやつだな」 後藤は狙いをDIOへと変更。 相手が相手なら竦んでしまうような後藤の視線をDIOは愉快そうに受け流す。 「私は訳あって協力者を求めていてね。きみにその気があれば」 「興味ないな」 後藤は、DIOの言葉すら聞かずに階段へと足をかける。 一段、二段、三段... 「まあ待ちたまえ。私としても、きみが攻撃を仕掛けて来れば応戦せざるを得ないが...きみに考え直すチャンスを与えよう」 DIOの言葉に、後藤は思わず足を止める。 「なにをするつもりだ?」 「簡単なことさ。やはり私に協力したいと思い直したらその階段を二段を下りたまえ。逆に、死にたければその階段を上るがいい」 DIOの語るチャンス。 後藤はそれに対して数瞬も思いを巡らせず、言い放つ。 「俺は全ての参加者と戦い殺す。お前を食う気はおきないが、殺すことには変わりない」 明らかなる拒絶の言葉。 後藤は誰とも手を組まない。 同じ寄生生物の田村怜子とも。元の世界での同朋である広川とも。人間を超越したDIOとも。 このゲームで闘争が当然なら、後藤はただ本能に従うだけ。 それを止めることなど、何者にもできやしない。 「なら...その階段を上るといい」 だというのに、DIOは一切動じない。落胆の色も浮かべない。 どころか、楽しそうに僅かに上唇を舌でペロリと舐めたようにも見えた。 しかし、後藤はそんなことを気にも留めない。 後藤は躊躇わず、その一歩を踏み出した。 「ふふっ、そうかそうか。階段を下りたな?後藤、きみはこのDIOの仲間になりたいというわけだな」 「?」 後藤の頭に疑問符が湧く。 こいつはなにを言っている。俺はお前の言う通り、階段を上ったぞ。 後藤は足元を見比べる。前に出した左足は階段に乗っている。後ろの右足は... 「...?」 一段目にまで下りている。 もう一度、階段を上ってみる。 二段目。ちゃんと上っている。 三段目。ちゃんと上っている。ここから先はDIOを拒絶する一歩だ。 四段目。ちゃんと上... 「...!?」 まただ。また、気が付いたときには『踏みしめたはずの四段目から二段目にまで下がって』いた。 「どうした?動揺しているのかね、後藤。『動揺する』...即ち、それは人間を超越したこのDIOに恐怖しているからではないのかね? それとも、『登りたい』とは心で思ってはいるが、あまりに恐ろしいので無意識のうちに逆に身体は降りていたといったところかな」 DIOの言葉を無視し、後藤は階段を駆けあがる。 しかし、結果は同じ。やはり後藤は『二段下がった体勢』になっていた。 「...後藤よ。知能ある生物には必ず『不安や恐怖』が存在するが、それはなぜか考えたことがあるか?」 DIOが後藤に優しい声音で語りかける。 「それは突き詰めれば『死にたくない』からだ。不安や恐怖によって、それを克服しようとするのが優れた生物の生きる意味だ。 後藤、きみの恐怖は生物として正しいんだ。きみは田村のような愚か者とは違う。このDIOに仕えてみないか?その恐怖をすぐに取り除いてあげよう」 DIOの誘いに後藤は答えない。ただ立ち尽くしているだけだ。 再び訪れる静寂。 ただDIOを見つめる後藤。それを笑みを浮かべながら見下ろすDIO。 やがて、後藤は口を開いた。 思ったことを、そのままDIOに伝えた。 「これがなんだというんだ?」 後藤のその言葉に、DIOの眉間に皺が寄り、表情が険しいものへと変わる。 「たしかに妙な力だ。だが、俺の身体にはなんの異変もない。なら、貴様の能力にはなんの脅威も感じない」 後藤が、膝を屈めて跳躍する。 そして、天井を蹴り踊り場へと降り立った。 「むぅ...!」 「工夫しろ。人間を越えたのならば、その程度はできるだろ」 後藤の刃が、DIOへと振るわれる。それも一本ではなく、枝分かれした五本の刃がだ。 両腕を合わせればその数は十。DIOはそれを跳躍で躱す。 ふわりと浮いたその身体は、最上階へと運ばれる。 「全く、寄生生物とやらはどこまでもこのDIOを苛立たせたいらしい」 頬についたかすり傷を指でなぞりながら、後藤を見下ろすDIO。 彼の表情からは、笑みはすでに消えている。 「いいだろう...知るがいい。絶対的な力の前では、貴様の言う工夫など何の意味もないということを!」 そして、DIOは口にする。 世界を支配する能力の名を。 その名も 「『世界(ザ・ワールド)』」 「な、あっ...!?」 杏子が気が付いたときには、全てが終わっていた。 ガシャンと音を立てて砕け散るガラス。吹きとばされる後藤。 先程まで後藤がいた踊り場には白い鎧に全身を包んだDIOが日光の下に立っている。 杏子は一切目を離していなかった。 だが、わかったのは『後藤が何度も階段からおりていた』ことと『後藤が窓を突き破って吹きとばされた』結果だけ。 これで言葉を失うなという方が無理というものだ。 「さて、と」 くるりと踵を返し、DIOは杏子とノーベンバーを見下ろす。 「せっかく来てくれたんだ。ジャック、そしてキョウコ。少しお話をしたいんだが...いいかな?」 語りかけられる言葉はとても優しい。 心の底から安心できるような気さえする。 だからこそ、杏子は言葉に言い表せられない恐怖をこの男に覚えた。 (ち...ちくしょう...) 嫌な汗が噴き出す。 思わず、息が乱れそうになる。 DIOは、あの後藤をああもあっさりと撃退した。 自分たちがあれほど手こずっていた後藤をだ。 己の腹部に手を当てて考える。 もしも、DIOのあの力が自分に向けられたら生き残れるのだろうか。 ...駄目だ。どう考えても敵うはずが... 「もちろんさ。私たちはそのために来たのだから。ねっ、キョウコ」 不意に頭におかれた手により、杏子は我に返る。 杏子とは対照的に、ノーベンバー11は、しっかりとDIOと向き合っていた。 お前もあの意味不明な一部始終を見ていただろう、お前はあのDIOの力になにも感じなかったのかと杏子は彼に問いたくなった。 しかし、今の自分を省みて、そんなことを聞こうとした自分に腹が立った。 「...ああ。あたしもあんたには会ってみたいとは思ってたからな」 表面上は冷静に。しかし、内心に恐怖を隠しながら杏子もまたDIOと向き合った。 (チッ。全くもって忌々しい生物め) 階下の二人に向けた声色とは裏腹に、DIOの腸は煮えくり返りそうだった。 後藤を貫くはずだった『世界』の拳は、後藤の身体が想像以上に硬かったため、窓から突き落とすのが精一杯だった。 だが、それ以上にDIOを苛立たせたのは後藤の態度だ。 (寄生生物というやつは、どいつもこいつもこのDIOをコケにしてくれる) DIOは、己を猿と同等だと揶揄した田村怜子を、ただ殺すだけなら簡単だと思っていた。 しかしそれではつまらない。過程や方法などどうでもよいと思ってはいるが、どうせなら寄生生物よりDIOの方が優れていると証明しておきたかった。 そのため、自分の能力の片鱗を見せつけることによって、彼女と同じ寄生生物の後藤を従えればと考えた。 あれだけ脅しかけたのだ。従わぬにしても、恐怖を感じたまま戦おうとすればまだよかった。 しかし、後藤は動揺こそはしかけたものの、終始DIOに屈服する素振りさえ見せなかった。 それが余計にDIOを苛立たせた。 窓から地上を見下ろせば、ケロリとした様子の後藤の姿が見える。 (来るのなら来るがいい後藤。その時は、全力を持って貴様を始末してやる) 誰にも知られぬ怒りを胸に秘め、DIOは窓に背を向けた。 (そろそろ終わったかしらぁ) こそこそと、扉の片隅から様子を窺うのは食蜂操祈。 最初に後藤からの襲撃を受けた杏子に下敷きにされ、一時的に気絶した食蜂は、そのまま気絶したふりをして部屋に留まっていた。 物音が止んでから数分経ったのを見計らい、こっそりと様子を窺っているのだ。 「みさきちゃん」 上階から響くのはDIOの声。その声に、食蜂の心は安堵に包まれた。 「もう隠れることは無いぞ。そうだな...せっかく客人が来てくれたんだ。紅茶でも淹れてくれないか?」 【F-2 能力研究所/4~5階/1日目/朝】 【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ】 [状態]:健康 [装備]:悪鬼纏身インクルシオ@アカメが斬る! [道具]:ディパック×1 基本支給品×1 [思考] 基本:生き残り勝利する。 0:ジャックと杏子と話合いをする。 1:ジョースター一行を殺す。(アヴドゥル、ジョセフ、承太郎) 2:花京院との合流。 3:昼間動ける協力者が欲しい。 4:寄生生物は必ず殺す [備考] ※禁書世界の超能力、プリヤ世界の魔術、DTB世界の契約者についての知識を得ました。 ※参戦時期は花京院が敗北する以前。 ※『世界』の制限は、開始時は時止め不可、僅かにジョースターの血を吸った現状で1秒程度の時間停止が可能。 ※『肉の芽』の制限はDIOに対する憧れの感情の揺れ幅が大きくなり、植えつけられた者の性格や意志の強さによって忠実性が大幅に損なわれる。 ※『隠者の紫』は使用不可。 ※悪鬼纏身インクルシオは進化に至らなければノインテーターと奥の手(透明化)が使用できません。 【食蜂操折@とある科学の超電磁砲】 [状態]:額に肉の芽、『上条当麻』の記憶消失。 疲労(中)、御坂に対する嫉妬と怒り 心理掌握行使可能人数:2/2名(イリヤへの能力行使が解除され次第、1名分回復)後頭部にたんこぶ [装備]:家電のリモコン@現実 [道具]:ディパック×1 基本支給品×1 [思考] 基本:生き残り脱出する。 1:DIOに自分を認めさせ、生還する。 2:みくで能力の制限を把握する。 3:次に御坂と会ったときは……。 [備考] ※参戦時期は超電磁砲S終了後。 ※『肉の芽』を植えつけられた事によりDIOに信頼を置いているが、元々他者を信用する神経を持ち合わせていない事もあり、 毎時毎分DIOへの信頼は薄まっていく。現時点で既に「行きつけの店のカリスマ美容師」に対する程度の敬意しかないようだ。 ※『心理掌握』の制限は以下。 ・脳に直接情報を書き込む性質上、距離を離す事による解除はされない。 ・能力が通じない相手もいる(人外) ※定義は書き手氏の判断にお任せします。 ・読心、念話には制限なし。 ・何らかの条件を満たせば行動を強制するタイプ(トリガー型)の洗脳は8時間で解除される。 ・感覚、記憶などに干渉して常時効果を発揮するタイプ(常時発動型)の洗脳は6時間で解除される。 ・完全に相手を傀儡化して無力化するのは、2秒程度が限界。 ・同時に能力を行使できる対象は二人まで。 一人に能力を行使すると、その人物の安否に関わらず2時間、最大対象数は回復しない。 【前川みく@アイドルマスター シンデレラガールズ】 [状態]:左足の太ももから下を喪失(処置済)、疲労(大)、『心理掌握』下。 [装備]:猫耳 [道具]:猫@DARKER THAN BLACK 黒の契約者 [思考] 基本:生きて帰りたい。 0:にゃあああ~~ 1:エドワード君~~ [備考] ※エドワード・エルリックの知り合いについての知識を得ました。 ※登場時期はストライキ直前。 【心理掌握による洗脳】 ※常時発動型 6/5時間経過 『五感で感じる全てを好ましく、自分に都合がよいものと認識する(喜怒哀楽のうち、"楽"以外の感情が全く発達しなくなる)』 【ノーベンバー11@DARKER THAN BLACK黒の契約者】 [状態]:インクルシオを装備した事による疲労に重ねてグランシャリオを装備したことによる疲労(大)、腹部にダメージ(中)、内臓にダメージ(小~中)、黒にエイプリルを殺された怒り? [装備]:ドミネーター@PSYCHO PASS-サイコパス- [道具]:基本支給品一式、狡噛のタバコ&ライター@PSYCHO PASS-サイコパス-、 帝具・修羅化身グランシャリオ@アカメが斬る!、ロックの掛かったドミネーター×1@PSYCHO PASS-サイコパス- [思考] 基本方針:契約者として合理的に判断し行動する。今の時点で殺し合いに乗る気はない。 0:地獄門を目指す?その過程で拠点を確保する。 1:参加者と接触し情報を集める(特に黒、銀)。 2:極力戦闘行為は避け、体力を温存する。 3:黒と出会った場合は……。 4:とりあえずDIOに猫を返してもらえるか進言する。話し合いが終われば早急にDIOから離れたい。 [備考] ※死亡後からの参戦です。 ※黒の契約者第23話から流星の双子までの知識を猫視点で把握しました。 ※杏子と猫の情報交換をある程度盗み聞きしています。 ※修羅化身グランシャリオはインクルシオよりは相性が良く、戦闘にも無理をしなければ耐えられます。 ※ペットボトルは真っ二つに割れましたが、テープ等で補強すれば使用可能です。 ※現状、グランシャリオと能力の併用は体力的にできません。グランシャリオに慣れてくれば使えるようになりますが、体力は大幅に削られます。 【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:精神疲労(大)、疲労(中)、全身に切り傷及び打撲(それぞれ小~中)、ソウルジェムの濁り(小~中)、ノーベンバー11に対する苛立ちと怒り(大)、DIOに対する恐怖(中)、殺し合いに対する迷い [装備]:自前の槍@魔法少女まどか☆マギカ [道具]:基本支給品一式、医療品@現実 大量のりんご@現実 不明支給品0~2(確認済み) [思考・行動] 基本方針:殺し合いについて考える。 1:巴マミを殺した参加者を許さない。 2:ジュネスに向かう。 3:殺し合いを壊す。それが優勝することかは解らない。 4:承太郎に警戒。もう油断はしない 5:ジャック(ノーベンバー11)はボコる。絶対にボコる。猫も取り返す。 6:情報交換を済ませたらDIOからさっさと離れたい。 ※参戦時期は第7話終了直後からです。 ※DARKER THAN BLACKの世界ついてある程度知りました。 ※首輪に何かしらの仕掛けがあると睨んでいます。 「奴のあの異能...」 後藤は、先程までいた能力研究所を見ながら考える。 階段を上ったらいつの間にか降りていた。 気が付いたら、いつの間にか打撃を受けて吹きとばされていた。 この殺し合いで何度も吹き飛ばされてきた後藤ですら、その経験を活かせないほどに唐突なことだった。 わかったのは、その打撃の威力は先に出会った承太郎と同程度の威力だったということだけだ。 今まで見てきた異能のどれよりも奇妙なものだった。 「厄介だな」 DIOの能力の解決の糸口はまだ見えていない。 しかし、その程度では後藤がDIOに恐怖を覚えることはない。 そういえば、とDIOが田村怜子と出会っていたことを思い出す。 DIOにせよ田村怜子にせよ、いずれは戦うことには変わりないのだが... (田村怜子を食らってからDIOと戦うのも悪くはないかもな) DIOの謎の能力。 今度くらえば、いまのように五体満足で済まないかもしれない。 それに対抗するために田村怜子を補充するのも悪くはない。 だが、DIOがここにずっと留まっている保障はない。 いなくなった場合、また探し回るのも面倒だ。 DIOに再び戦いを挑むか、田村怜子を探しにいくか。 後藤が選んだ道は――― 【F-2/1日目/朝】 【後藤@寄生獣】 [状態]:両腕にパンプキンの光線を受けた跡、全身を焼かれた跡、疲労(中)、腹部に拳の跡(ダメージ0) [装備]:なし [道具]:基本支給品、首輪探知機、拡声器、不明支給品0~1、スピーカー [思考] 基本:優勝する。 1:泉新一、田村玲子に勝利。 2:異能者に対して強い関心と警戒(特に毒や炎、電撃)。 3:セリムを警戒しておく。 4:余裕があれば脱出の手掛かりを集める。首輪も回収する。 5:もう一度DIOと戦うか、先に南に向かい田村怜子を探すか... [備考] ※広川死亡以降からの参戦です。 ※異能の能力差に対して興味を持っています。 ※会場が浮かんでいることを知りました。 ※探知機の範囲は狭いため同エリア内でも位置関係によっては捕捉できない場合があります。 ※デバイスをレーダー状態にしておくとバッテリーを消費するので常時使用はできません。 ※敵の意識に対応する異能対策を習得しました。 ※首輪を硬質化のプロテクターで覆い、その上にダミーを作りました。 ※首輪の内側と接触している部分は硬質化して変形しません。 時系列順に読む Back 黒色の悲喜劇 Next Future Style 投下順に読む Back 黒色の悲喜劇 Next Future Style 083 幸せ砂時計 DIO 食蜂操祈 前川みく ノーベンバー11 078 赤から黄へは戻れない 佐倉杏子 092 端緒 後藤
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多聞寺 兵庫県加西市、多聞寺の御朱印です。 見開きサイズのイラスト入り「後藤又兵衛」の御朱印です。 金文字の「後藤又兵衛」です。 金文字の「毘沙門天」です。 「南無釈迦牟尼佛」です。 「大悲殿」です。 「毘沙門天」です。 「後藤又兵衛」です。 「槍の又兵衛」です。 ★住所 兵庫県加西市尾崎町288 - 名前 コメント
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登録日:2020/04/12 (日曜日) 21 01 12 更新日:2024/02/24 Sat 19 14 35NEW! 所要時間:約 ? 分で読めます ▽タグ一覧 20年春アニメ flumpool かくしごと アニメ 久米田康治 亜細亜堂 君は天然色 大瀧詠一 描く仕事 月刊少年マガジン 漫画 漫画家 神谷浩史 秘密 親子 講談社 隠し事 隠し子と 隠し事は、描く仕事でした 「かくしごと」とは月刊少年マガジンにて連載されていた、久米田康治による漫画作品である。 タイトルは「隠し事」と「描く仕事」のダブルミーニングとなっている。 単行本は全12巻。 2020年4月からはテレビアニメとして放送され、原作もほぼ同時に最終回を迎えた。 アニメが先行したため、原作最終回はアニメで使われた要素も取り入れたグランドフィナーレで締め括られている。 【作風】 かつての久米田作品同様シュール系ギャグ漫画ではあるが、宇宙人や異世界といったSF要素及び、度を越した変人によるブラックコメディと下ネタ要素は無く、限りなく現実世界に沿ったやや異色な作風となっている。 また、コミックスには姫が成長し18歳になった未来の世界が舞台のシリアス気味なショートストーリーが収録されている。 【あらすじ】 漫画家、後藤可久士は一人娘の後藤姫を溺愛していた。 だが後藤の描く漫画は所謂下ネタギャグ漫画。もしもそれが姫に知れたら心を閉ざしたり、いじめられるかもしれない。 後藤は心配のあまり漫画家であることを隠し、今日もスーツ姿で仕事場へ向かうのだった。 【登場人物】 後藤家 姫に知れたらどーする!? 後藤可久士(ごとうかくし) CV 神谷浩史 かつて「きんたましまし」というちょっと下品な漫画で人気を博した漫画家。 現在も似たような作風で、「風のタイツ」という漫画を連載中。 だがそれを娘に知られる事を恐れ、スーツで目黒区の自宅を出て、途中でラフな格好に着替えて渋谷区の仕事場へ向かう。 非常に親バカかつ過保護であり、いついかなる時も姫の事を優先して行動し、トラブルを招くことも。 表現者にはよくあるルーチンワークとして、ラフな格好でしか漫画を描けず、昔は全裸でないと描けなかった。 妻(CV 能登麻美子)がいたようだが、現在は姫と二人暮らしな模様。遺影や仏壇のような物は確認されていないが…… 久米田主人公の例に漏れず、意図せず周囲の女性を勘違いさせ、好意を持たれてしまうタイプ。 ただ本人は既婚者かつ、今でも妻の事を想っているのでそもそも他の女性を恋愛対象として全く意識していない(それが拗れる原因でもある)。 名前の由来は「かくしごと」から。 中の人は言わずもがな、かつて「さよなら絶望先生」の主人公である糸色望の声も務めていた。 「下ネタ漫画を描いている」・「過去作の著者近影に全裸写真を掲載」・「娘がいる」など、作者である久米田自身を思わせる要素が多く、ボサボサの髪に無精髭という風貌も過去作で自分を登場させた際の自画像になんとなく似ている。 看板漫画家とは言えないものの、週刊連載を続けてるだけあってそれなりに裕福(本人曰く「そこいらのサラリーマンより稼いでいるわ!」とのこと)。特に姫のためならば大金だろうとポンと出すレベル。 しかし、生活費以外はとある目的に使用しているため後藤自身の生活は非常に苦しい。そして、この事は姫はもちろんアシスタント達にすら決して見せないよう気丈に振舞っている。 隠し事は何ですか? 後藤姫(ごとうひめ) CV 高橋李依 可久士の娘。9歳(小学4年生)。 やや感性が独特で天然の気があるが、父親想いの素直な良い子。 久米田作品ヒロインとしてはほぼ初めての「毒」の無い女の子である。 父が漫画家であることは少なくとも高校生までは知らずに過ごしてきた模様。 年齢が年齢なのであまり意識されないが、父親の色眼鏡を抜きにしても相当な美少女のようで、 プロのカメラマンでも光るものを感じるレベルの逸材。 それ故に可久士は変な虫が寄るんじゃないかと気が気でない様子。 名前の由来は「ひめごと」から。 後藤ロク CV.花江夏樹 作中で後藤家の飼い犬になる。 飼うに至る過程、名付けの過程でそれぞれひと悶着あった。 基本的におとなしく、めったに鳴かない。 名前の由来は「ご登録」から。 〇アシスタント 可久士率いるGPRO(ゴトープロダクション)のアシスタント達 志治仰(しじあおぐ) CV 八代拓 チーフアシスタント。 自分で考えることは苦手だが、指示があれば仕事は的確にこなす優秀なアシスタント。 動物や背景を描くのが得意。 漫画家志望でありちょくちょく自分の漫画について意見を受けているが、何せ先生が色々と特殊なのであまり参考にはなっていない模様。 名前の由来は「指示を仰ぐ」から。 墨田羅砂(すみたらすな) CV 安野希世乃 アシスタントの1人。 言動が割とゆるく、基本誰に対してもタメ口。よく墨を原稿に垂らして怒られるらしい。 ……の割に、デジタル化の指南をしたり遠隔地のアシに仕事を発注したり、カンヅメにされた際に画材一式持ってきたりと案外有能。 割とノリが良く、後藤の奇行や無茶振りにもあっさりと答える度量の広さがある。 曰く「代官山の職場でクリエイティブな仕事をしたい」としてアシスタントになったらしい。漫画家になる気はない模様だが……。 スタイルが良く、本作のお色気担当的な部分もある。 名前の由来は「墨垂らすな」から。 筧亜美(かけいあみ) CV 佐倉綾音 アシスタントの1人。仕上げ・服飾担当。自身の描く絵柄は楳図か○おっぽく、内容もホラー気味。 ホラー漫画家志望で、ややダウナー気質な毒舌家。ファッションセンスが独特。 スタイルのいい羅砂に対して童顔低身長であり、とある事情で15歳を騙った際も特に疑われなかった。 中の人は「じょしらく」でマリーさんを演じていた。 名前の由来は漫画の技法の1つ「カケアミ」から。(*1) アシスタントとは完全に別で同人活動をしている疑惑があるが、そのことは一切同僚に明かしていない。 芥子駆(けしかける) CV 村瀬歩 新人アシスタント。消しゴムかけ担当。 彼も漫画家志望で、ダークファンタジー漫画を描きたいらしい。 十丸院ほどではないが新人ゆえの無知で失言が多く、後藤を暴走させることもしばしば。 名前の由来は「けしかける」と「消しゴムをかける」のダブルミーニング。 〇姫の友達 姫を含めた4人で「めぐろ川探偵事務所」というごっこ遊びをしている。 どこかで見たような容姿や名前をしているが、中の人などは違うためスターシステム的な別人だと思われる。 ちなみに高校生時の姿は完全にそのまんまと言っていい。 またサブキャラ寄りということもあってか性格なども毒が薄い。 東御ひな(とうみひな) CV 本渡楓 姫のクラスメイト。給食委員。 普通の子に似ているが、ウザキャラ、スイーツ(笑)的な面を受け継いでいる。 古武シルビア(こぶしるびあ) CV 小澤亜李 姫のクラスメイト。目黒川探偵事務所所長。 動物好きの子に似ているが別人。眼帯も包帯もしていないが猫好き。 橘地莉子(きっちりこ) CV 和氣あず未 姫のクラスメイト。風紀委員長。 きっちりした真ん中分けの子に似ているが、多分別人。 その他 相賀加代 加害妄想の子に似ている。※後の登場時は名前が加帆になっていた。 大熊小夜 人妻女子高生の子に似ている。 松稲十月 ストーk…ディープラブな子に似ている。 春吉不二美 腐女子の娘に似ている。 森キリコ 引きこもりの子に似ている。 村木エリカ すぐ訴えるパンツの子に似ている。 汐留奈留 メールでは毒舌な子に似ている。 〇その他 十丸院五月(とまるいんさつき) CV 花江夏樹 可久士の新担当編集者。ゆとり。 空気を読めない言動で後藤にピンチを招き、よくキレられる。 というか社会人としてのマナーが根底から欠けており基本的な『報告・連絡・相談』さえも疎か。 名前の由来は「止まる印刷機」という漫画と相性の悪そうな言葉(本人曰く止まらせたことは「まだ」ないらしい)。 なんかの縁故採用らしく、とにかくトラブルばかり起こすくせに、自身は仕事のできるエリートだと思い込んでいる。 本人だけがコネ人事だと気付いていないため、立場の濫用やゴリ推しはしないのが唯一の救い。 当然ながら編集部でも持て余し気味であるため、ベテランだが偏屈の後藤を押し付けられたのではないかと疑われている。 実は後藤とはなんだかんだで気が合う面があり、意外に相性が良いらしいことが示唆されている。 「後藤番」とか言うなあ! 名字が似ていることから、一部の読者からは「十丸院のモチーフとなったのは、講談社の編集者である都丸尚史氏なのではないか?」と噂になっていたが、最終巻の作者の総括によると、「十丸院のモチーフは実在しません。彼は今まで見聞きした編集者達の悪い部分を寄せ集めて作ったキャラで、あのような人物がマンガ編集にやってくるのは稀。どうも講談社の編集の都丸氏を十丸院の元ネタであるという噂している人がいるが、都丸氏が迷惑しているので、根拠ない噂を広めるのは止めてほしい(意訳)」とのことである。 六條一子(ろくじょういちこ) CV 内田真礼 姫のクラスの担任教師。褐色肌が特徴。 「きんたましまし」の愛読者でもあり、後藤の秘密を知る人物の1人。 後藤の紛らわしい言動により、彼に好意を抱いている。 久米田作品ヒロインの例に漏れず指叉を得物としている。が、本来の使い方なので何も問題ない。 名前の由来は自身の肌に使用されるスクリーントーン「61番」から。また眉毛が【】(縦書き時の向き)の形をしている。 千田奈留(せんだなる) CV:逢田梨香子 アイドル志望女子高生。 アイドルグループのセンターになりたがっている(名前の由来もそれ)。 後藤の紛らわしい言動に(ry 後藤家によく訪れ、姫と仲良くなる。 容姿はAKB48時代の前田敦子からモチーフをとられてると思われる。 後に未来編での状況を作り上げた原因となってしまった。 汐越羊(しおこしよう) CV 古城門志帆 クッキングアドバイザー。 料理教室に来た後藤の紛らわしい言動(ry 名前の由来は「塩と胡椒」から。 城路久美(じょうろくみ) CV 原由実 花屋の店員。花を買いに来た後藤の紛ら(ry 名前の由来は「じょうろ汲み」から。 ナディラさん CV 加藤英美里 インドネシア出身の家事代行サービススタッフ。 後藤家は週に何度か彼女の世話になっている。母国由来の独特な料理を作ったり、怪しげな儀式を行ったりする。 褐色肌で、十丸院の「かっし欲」を無自覚に刺激して以来彼に好意を抱かれている。 (一方で六條先生では刺激されないらしい) 可久士を「クールジャパン」、姫を「姫サマ」と呼んでいる。 名前の由来は「不思議の海のナディア」のヒロインである「ナディア」から。 マリオ CV 浪川大輔 古着屋の店主。後藤はこの店で着替えており、彼をクラークケントと呼ぶ。 また、亜美もここの常連である。 元々は「かってに改蔵」の準レギュラーキャラであった。 【余談】 アニメ放送前に、シャフト制作にPVアニメが公開されていた。 そこでの姫の声は安済知佳が担当しているが、後藤は変わらず神谷浩史が担当していた。 小学館の謝恩会での目撃談によると、久米田先生にも可愛らしい娘さんが居るという話がある。 描いている漫画がちょっと下品であり、それを娘に知れたら心を閉ざしたり、いじめられるかもしれないという心配は久米田先生の体験談なのかもしれない。 姫に追記、修正されたらどーする!? △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 「隠し子と」とのトリプルミーニングと思ってたけど違ったっけ?「可久士後藤」はまあ、鶏が先か卵が先かって話になるからおいといて。 -- 名無しさん (2020-04-12 22 17 19) 娘がじゃなくて主人公がその親から見てて世間的に隠し子だからトリプルで有ってるよ -- 名無しさん (2020-04-13 00 45 57) 単にネタバレだから書いてないだけだろう→隠し子と -- 名無しさん (2020-04-13 10 10 16) この項目自体アニメでやった分の内容で留めてる気がする -- 名無しさん (2020-04-13 12 16 17) 改蔵後期とか絶望先生の頃とかと比べて猟奇ネタがほぼ皆無になってて(相変わらず毒っ気はあるけど)、久米田先生精神的にかなり落ち着いてきたのかな、と読んでて思った。 -- 名無しさん (2020-04-13 16 15 34) アニメのEDがまさかの大瀧詠一だったけど原作者かスタッフがファンなんだろか -- 名無しさん (2020-04-13 18 02 49) おしゃPを魔物扱いしているが、OPも -- 名無しさん (2020-04-13 19 52 13) 途中送信してもた・・・ EDもおしゃれ -- 名無しさん (2020-04-13 19 52 48) OPがまるでお仕事&育児アニメみたいだ・・・(いやまあそうっちゃそうなんだけど) 志治くんあたりが櫻井孝宏だったら久米田主人公オールスターだったのにな(そういう方向性でキャスティングしてねえというのは分かるけど) -- 名無しさん (2020-04-21 22 59 56) あっマリーさんは主人公じゃなかった -- 名無しさん (2020-04-22 13 23 26) りきゃこおおおおおお!? はっ、ま、まさか、作中にダイヤ様が出てきてたのは、りきゃこつながりでかっ!?(@_@ -- 名無しさん (2020-04-22 13 38 13) アニメ最終回、つい涙が浮かんでしまった。 -- 名無しさん (2020-06-28 10 38 28) 後藤可久士さん→かくしご とうさん と聞いた時はおお!となった -- 名無しさん (2020-06-28 11 34 39) 君は天然色奈留バージョンよかった -- 名無しさん (2020-07-07 20 32 43) アニメ最終回からの原作最終回、という流れ。今月の月マガ良かった -- 名無しさん (2020-07-07 20 39 25) アニメだと序盤ぐらいしか出なかったけどマリオさん原作だとめっちゃ活躍してて吹いた -- 名無しさん (2021-01-07 19 36 22) 映画公開おめでとう(五日遅れ) -- 名無しさん (2021-07-13 01 26 09) 名前 コメント
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Ultimate thing(前編) ◆EboujAWlRA 息を切らしながら、詩音は走っていた。 日の出には近いがまだ薄暗いこの時間帯では足元も不確かで、詩音は何度もつんのめってしまう。 それでも詩音は走り続ける。 あの煙が上がった先に悟史か沙都子、魅音やレナに圭一と言った仲間が居たらと考えてしまうと、どうしても脚が止まらないのだ。 簡単に死ぬわけはないと思うが、どうしても不安に駆られる。 もしも、あそこに居て銃を持った殺人者と相対していたら。 そんな状況ならば、AK-47、カラシニコフと呼ばれる突撃銃を持った詩音が行けば戦力になれる。 ある種、カラシニコフを持っていることで詩音の気を大きくさせていた。 拳銃よりも大型の、分かりやすぎる凶器。 これをもって脅せば、会話の際にかなりの優位に立てるだろう。 だが、詩音のそんな考えにも一抹の不安がある。 それはさきほど警察署で出会った学生服を来た少年とスーツの中年が原因だ。 詩音がカラシニコフを向けたにもかかわらず、あの二人は特に怯えたような感情を表に出さなかった。 その事実が詩音の考えに若干曇りを作る。 (でも、万が一悟史くんや沙都子が危険な目に遭っているのなら……!) だが、不安要素があろうとここで詩音は止まる理由はなかった。 万が一にも可能性があるならば走る価値はある。 いずれにせよ、詩音にははっきりとした目的地が定まっていないのだ。 この広い島を無作為に走り回るくらいならば、何かしらの目立つものを追う方が効率が良いだろう。 あわよくば、その目立つ物へと寄ってきた、あるいは逃げてきた悟史達と出会うことがあるかもしれない。 「……!」 だが、その詩音が足を止める。 目前から誰か、二人組が近づいてくることに気づいたからだ。 学園寮からの脱走経験がある詩音は夜目が効く上に勘も良い。 カラシニコフを手に取り、腰を僅かに落とす。 目の前の二人組が殺し合いに乗っているか乗っていないか、それは定かではないが警戒するに越したことはない。 「止まりなさい!」 詩音は目の前の二人組、泉こなたと平賀才人へと声を投げつける。 突き放す様な鋭い言葉。 そんな詩音の声色にこなたとサイトは僅かに肩をすくめて、それでも詩音の持つカラシニコフを目にやると足を止める。 カラシニコフが脅しとして確かに機能したことは詩音に安堵の感情をもたらした。 だが、直ぐに気持ちを切り替えてこなた達へと投げかける言葉を考える。 下手な言葉は口に出来ない。 与し易い相手だと舐められて、煙に巻かれるのだけは避けたい。 下手な会話は時間の消費と情報の混乱を招くだけだ。 「『北条悟史』と『北条沙都子』、それに『竜宮レナ』に『前原圭一』と『園崎魅音』に会った、もしくは居場所は知りませんか?」 詩音はストレートな言葉を選んでおくことにした。 いちいち腹を探りながら言葉を交わすような状況ではない。 一言二言、お互いに必要な言葉を交わせればそれでいい。 もちろん、爆心地から現れたこの二人に警戒していた、という気持ちもある。 特に焦った様子もなく、サイトは剣を片手に現れたのだ。 何かしらのきな臭い物を感じ取った詩音としては、警戒しない方がおかしい。 そんな詩音のピリピリとした様子を感じ取っているのか、こなたはサイトへと顔を向けて答える。 「その人達のこと知ってる、サイト?」 こなたは肩を持ち上げて知らない、と仕草で示してサイトへと振る。 だが、サイトは何も言わない。 今まで忠実にこなたと付き添ってきたサイトには珍しい反応だ。 こなたはサイトの表情を見た後、視線を追う。 「すげえ胸……ってぇ!?」 サイトが何を見ていたのか、こなたが察した瞬間に漏らしたサイトの言葉。 こなたは笑みを浮かべて脚を踏みつぶす。 体重の軽いこなたとは言え、思い切り脚を上げてから踏み下ろされたのではダメージもかなり大きい。 足の甲を抑えながらピョンピョンと飛び回る。 呑気とも取れるその動作に、詩音は若干苛立つ。 出来の悪いコントを見ている暇はないのだ。 「わ、悪いルイズ。えーっと、北条に、竜宮に……ああ、うん、俺は知らねえよ。 ルイズと会うまで、俺は誰とも会ってないからな」 「視線を胸から一切ずらさずに謝るのもどうかと思うよ」 多大な期待を抱いていたわけではないが、やはり言葉にされると落胆を覚える。 詩音はこの二人に他にも情報を聞きだすべきかを僅かに考え、やめておくことにした。 カラシニコフを抱えたまま、脚を一歩動かす。 背中を見せずに立ち去るのも中々難しいものだ、と詩音は思った。 「そうですか。それでは私はこれで」 「あれ、聞くだけ聞いて行っちゃうの?」 「別に話すこともないでしょう? それともそちらもなにか?」 言葉と視線に「用があるならさっさとしろ」という思念を込めてこなたを見返す。 こなたは僅かに面白くなさそうに眉を潜めて、直ぐに何かを思いついたように顔を明るくした。 怪しい、詩音は直ぐにそう思う。 どうもこの二人はおかしいと詩音は察する。 特に男の方、サイトは妙に落ち着かないというか詩音とはまるで違うものを見ているというか。 「いやー、実はあの遊園地で踏んだり蹴ったりな目にあっちゃってさ」 「逃げる……やっぱりあそこでなにかあったの?」 「そーそー。こーんな狐みたいな細い目をした背の高い男の人に襲われたの」 こなたは自身のタレ目を人差し指で上へと釣り上げる。 それにしてもサイトは特に何も言わない、まるで犬のようだと詩音は思った。 しかし、こなたの言葉はあまり信用出来ない。 襲われたというわりにはどうも落ち着きすぎているような気がするのだ。 それにサイトが剥き出しの剣を固く握りしめているのにも気に掛かる。 (……いや、それともこっちを刺激しないようにしてる?) こなたのにこやかな顔に、嘘をついているという考えではない別の考えが頭によぎる。 思えば詩音は銃を持っているのだ、変に刺激するのは避けるだろう。 そう考えると、こなたが常ににこやかななのにも納得ができる。 「……とりあえず、ご忠告感謝します」 嘘をついている可能性と、本当のことを言っている可能性。 そのどちらもあり得るため、話半分に聞いておくことが吉だろう。 背の高い、狐のような細い目をした男、か……警戒していた方が良いだろう。 詩音はそう思いながら、銃口を僅かに下げる。 構えを解いたわけではない、力を少し抜いただけだ。 その僅かな瞬間だった、サイトが女神の剣を持って僅か一歩で詩音の懐へと詰めたのは。 「ハッ!」 息を鋭く吐いたサイトは女神の剣を横一線に振るう。 普通の高校生にしか見えなかったサイトの突然の素早すぎる行動に詩音は虚を突かれる。 カラシニコフを持ち上げる、いやそれでは間に合わない。 不思議なほど落ち着いた頭で詩音は判断する。 スパッ、とテレビの時代劇ならば擬音がつきそうなほどあっさりと女神の剣は切り裂く。 女神の剣、神の加護を得た聖剣は業物と呼ばれるに相応しい、なまくら刀とは違う切れ味を持っている。 身体能力を高め、さらにそれを持つは剣での戦闘を何度もこなしたサイト。 ガンダールブ発動中に、体の神経に刻み込まれた技術はサイトにとって大きなプラスとなっている。 流されやすい、良く言えば素直な性格が技術の吸収を助けているのだ。 そして、サイトは自身が斬り捨てた物を見据える。 いや、正確に言えばその結果晒された詩音の身体を眺めていた。 詩音は呆然として、片手でカラシニコフを持って斬られた胸元を押さえる。 慌てたようにバックステップでサイトと距離をとるが、直ぐに本能でかがみ込んでしまう。 こなたもそんな詩音の身体を冷めた目で見る。 いや、呆れている、と言い換えても良いかもしれない。 そして、熱が篭ったように詩音を見つめるサイトの向こう脛を思い切り蹴りつける。 脚を踏まれた時以上の、声にもならない声をあげる。 サイトが女神の剣を使い切り裂いたのは、詩音の服だった。 しかも、見事に胸部だけ。 横一文字に、サマーセーターを、胸の位置に。 もうわかりやすく言ってしまおう。 詩音のブラジャーが見えてしまったのだ、サイトの斬撃によって。 詩音は知らないが、こなたとサイトは密かに視線を合わせて詩音を襲うと決めていた。 明らかに強力な武器であるカラシニコフに惹かれたが故の行動だ。 それを何が起こったかサイトは胸を斬ったのだ。 恐らく、詩音が現れて以来片時も離さなかった視線が原因であろう。 「……この程度!」 詩音は頬を僅かにだけ赤らめ、躊躇いがちだが立ち上がってカラシニコフを構え直す。 もちろん、今まで腕で隠していた胸が剥き出しになる。 下着が残っていることと肌に傷がつかなかったことは幸いだと、何処か見当違いな思考が過ぎる。 「うおお……!」 「ッゥ!」 痛みによる呻き声ではない、感嘆の念が多分に篭った声をサイトが漏らす。 詩音は顔をひきつらせてカラシニコフのトリガーを引く。 もちろん当てるつもりはない威嚇射撃だ。 だが、思わず引いてしまった、という感情のままの行動のため狙いは少しずれたかもしれない。 「うわあ!」 「ルイズ! ……てめえ!」 その銃弾はこなたの足元へと打ち付けられた。 今まで平静を装っていたが、こなたもさすがにこれには驚いたように後ずさる。 こなたの反応にサイトは慌てたように名を呼び、無事を確認するとほっと一息つく。 そして、直ぐに詩音の方へと怒りに顔を染めて向き直る。 その瞳には先程のような浮ついた感情はない。 (藪をつついて蛇を出す……か) 威嚇射撃は威嚇にならず、逆に向こうを刺激しただけ。 銃を持っていることがここまでアドバンテージにならないとは、さすがに詩音も苛立ちを覚えてくる。 サイトと詩音のにらみ合いが続く。 こなたは、ふー、ふー、っと深呼吸を繰り返したのち、ただ手持ち無沙汰にそれを眺めている。 サイトと詩音がにらみ合いを続けて数分ほどが経った後だった。 「思ったよりも離れていなかったようだな」 冷たい、全てを突き放すような声が響く。 三人が声の方向へと視線を向けると、そこにはキツネ目をした青い警官の制服らしきものを来た男が銜え煙草で立っていた。 キツネ目の警官、斎藤一はちらりとサイトとこなたを横目で見る。 銃を構えた詩音には一瞥もくれない。 「人を殺めたか、小娘」 『嫌な奴に会った』とこなたとサイトは眉をしかめながら思う。 『背の高い、細目の男……それにあの服、警官?』と詩音はこなたたちの言う細めの男が目の前の斎藤だと察する。 その詩音の考えの通り、この青い警官の服を着た長身の男はこなたとサイトが出会うきっかけとなった男だ。 「どうして、そんなことを思うの?」 「くだらん腹芸を使うな。どんなに身体を洗おうと、こんな短時間で染み付いた血の臭いは取れん」 そう言い切り、相変わらず細く鋭い目でこなたとサイトを見据える。 その目には先程のような怒りも蔑みも存在しない。 明確な敵意が瞳から伝わってくる、怒気の混ざらない純粋な敵意だ。 「悪、即、斬……市井を脅かす貴様らは既に悪だ。餓鬼の悪戯を超えてしまったんだよ」 グッ、と強く拳を握りこんで左肘を弓を引くように思い切り後ろへと持っていく。 斎藤はこなたを殺すつもりはないが、サイトはその限りではない。 こなたにしても殺さなければ良いのだ、腕の一本ぐらいなら奪ってしまうかもしれない。 間違いなく、先程とは違う。 こなたの横に居たサイトもそれを認識したのか、女神の剣を構えてこなたの盾になるように前へと立つ。 相変わらず射殺すように鋭い瞳、サイトはそれを真っすぐに受け止めて女神の剣を正眼に構える。 膠着状態が、僅かに続く。 先に動いた方が負ける、と言うわけではないがあの警官には隙が一つとして存在しない。 そして、隙がない以上はサイトから簡単に動くわけにはいかない。 「フンッ!」 故に、先に動いたのは警官から。 信じられないほど速い初速、そして全くスピードが落ちない中速、ついにはスピードが上がった終速。 あっという間にサイトの懐に斎藤の姿が現れる。 やはりこの糸目の警官は強い、とこなたは思い、詩音はその精密かつ速すぎるその動きに愕然とする。 揺れない信念と研ぎ澄まされた技と人知を逸する身体能力、全てを兼ね添えている。 しかし、それを避けたサイトも只者ではない。 確かに、あの女神の剣を持てばこなたでも斎藤の攻撃は見えた。 だが、サイトは見えただけでなくそれをはっきりと避けたのだ。 しかも次の瞬間には、反撃を狙っている。 やはりこの二人はただ身体を鍛えているというだけではない。 何かしらの武術を習っていて、しかもかなりの修練を積んでいる。 そうこなたが考えている間にも攻防は続いていく。 サイトが女神の剣で切りつけると、斎藤は無骨な篭手でそれを受け流す。 斎藤のそこにある空気を裂くようなストレートを、サイトは紙一重で避けていく。 その攻防は、もはやテレビで見る格闘技などとは比べ物にならない。 むしろ、特撮や時代劇であるような殺陣に似ている。 実は裏で二人は段取りを組んでいる、と言われてもこなたと詩音は信じるだろう。 それほど二人の攻防は見事なものだった。 サイトが攻めていると思ったら、いつの間にか斎藤が攻めている。 味方であるサイトが押されているというのに、こなたはただ見ているだけ。 正確に言うならば見ることしか出来なかった。 その時ようやく一撃(と言っても距離をとるためだけの弱い蹴りだが)を入れたサイトが距離をとる。 斎藤はそれを追わずに、鋭い目付きで見据えたまま構え直す。 「……逃がしては、くれねえよなぁ」 「逃げてみるか?」 まるで他人事のように、何の感情もなく斎藤は言葉を返す。 「そいつは無理そうだな」とサイトも精一杯不敵な笑みを作りながら返す。 先程と違い、斎藤は『人を殺した』こなたとサイトに執着している。 簡単に逃げれるとは思えない。 ここがいわゆる執念場かー、とこなたがどこか呑気に思った瞬間。 「見ぃぃぃつけたぁぁぁぁぁぁぁ!!」 大声が、響いた。 その声は詩音にだけ聞き覚えがなく、斎藤とサイトとこなたには聞き覚えのある声。 野太い男の声で実は舌が二枚あるのではないかと言うほど早口に言葉を繰り出すあの声。 「人を殺すことは当然なのか? 人を殺せない人間は弱い人間なのか?」 何かを訴えるように、あるいは自分に言い聞かせるように大きな声と共にこちらへと向かってきている。 詩音も、斎藤も、サイトも、こなたも。 その声へと耳を傾けてしまう。 「いいや、違うね! 人を殺さないことは弱いことなんかじゃあない、むしろ強い意思の持ち主だ! 殺すことでしか解決できない人間とは違う文化的な人間さ! 俺なんかとは違うなぁ! 俺はその心に敬意を示す! 文化とはそうであるべきだ! 人間に豊かな心をもたらす物だ! だぁぁぁからぁぁぁぁぁ! 俺は!」 その瞬間、唐突に目の前に現れた。 その場に竜巻を運び、砂嵐を作って現れたその男、ストレイト・クーガーはサングラスを僅かに上げ。 「止める! 最速でなぁ!」 そう、宣言した。 突然現れた、黒いサングラスをした男。 その目はやはりこなたとサイトを見ており、詩音には一瞥をくれただけ。 また何か出た、と詩音は頭を抱えたくなるが斎藤とサイトとこなたの三人に緊張が現れたことから、直ぐに気を引き締める。 この男にも何かある、詩音はそう思ったのだ。 「見つけましたよ、こなたさーん!」 「いやあ、こっちは逃げたかったんだけどなあ」 はははー、と呑気に笑いながらこなたは答える。 だが、その顔には僅かに汗が浮かび上がっており緊張していることが察せられる。 こなただけでない、サイトなど歯を食いしばって顔をしかめている。 つまりこの男はフレンドリーに声をかけているが、こなたとサイトにとっては面倒な相手だと言うことなのだろう。 詩音はなんとなくではあるが今の状況を把握する。 まず、斎藤はこなたとサイトを殺そうとしている。 こなたとサイトは殺し合いに乗っており、斎藤と敵対している。 クーガーはこなたとサイトに用が有る、態度から殺すような荒っぽい真似はしないだろう。 (ここから出るなら今……今なら問題なく出れるでしょ) この騒動に巻き込まれている暇はない。 詩音としては、早く仲間を探しておきたいところなのだ。 服装が服装だが、そんなことに構っている暇もない。 生命がかかっているのだ、旅の恥はかき捨てではないが気にしている場合でもない。 「……っと、おやおや。これはまた刺激的な格好ですねえ、お嬢さん。 こんな薄暗い中で刺激的な薄着はいけません、風邪のような病原菌だけでなく邪な思いを抱いた男も寄りついてしまいますよ いえいえその男を誘うが目的だと言う場合もあるかもしれませんが貴女の凛とした目をみる限りそれもなさそうです。 男としては嬉しく思わないこともありませんが文化的な男を称する以上こんな状況でそのような薄着の女性の誘いにのるべきではなーい。 というわけでこれをどうぞお嬢さん。こう見えても中々暖かい上に動きやすくて便利なものですよ。 あ、私のことを構う必要は一切としてありませんよ。男は黙って女性を支えるものですからねえ。 男性と女性、いえ、人と人は支え合って生きていくもの、それが文化的」 「ありがとうございます」 詩音が立ち去ろうとした瞬間、クーガーはその姿を見つけた引き止める。 そして明後日の方向を向きながら、そのホーリー隊員の制服を脱ぎ詩音へと差し出す。 詩音は最低限の礼儀としてクーガーの言葉が終わってから受け取ろうと思ったが、一向に終わる気配に痺れを切らし早々に受け取ってしまう。 僅かに汗をかいていることに顔をしかめるが、今の胸元が開いた服よりはマシだと思い素直に羽織る。 裾が長い、クーガーと詩音の体格にはかなりの違いがあるから仕方が無いことではあるが。 腕の裾を捲り、手元も自由にする。これで良い。 クーガーは話を途中で折られ、肩を竦める。 「……さーて、ではこなたさん。早くそんなことやめてしまいましょうか」 「なんで?」 クーガーの言葉に、こなたは不思議そうな声を返す。 斎藤はそれに眉をしかめ、クーガーはなおも諦めずに声をかけ続ける。 「こなたさーん。貴女、自分のしていることが分かってるんですか?」 「分かってるよ、これはゲームでしょ? だったらこれで優勝しないと。 それでブイツーくん……ゲームマスターからリセットボタンを貰うんだ。 やり直し、やり直し。それで元通りだよねー!」 そこで詩音は、ああ、と思う。 なにか奇妙だと思ったらこなたは気が触れていたのだ。 現実から目を離すのを悪いことだと決めつけるつもりはないが、一方の都合のいい展開にしか目を向けないのは駄目だ。 そんなに上手く行くものではない。 上手く行くものではないから、詩音は今こうして焦っているのだ。 「ルイズ、もう良いだろ。危ないから下がってろって」 クーガーがなおもなにか言おうとした瞬間、こなたを庇うようにサイトが一歩踏み出す。 だが、クーガーと斎藤がその言葉に反応する。 サイトがこなたに向けて言った、ルイズという言葉に、だ。 「ルイズ?」 「ルイズ・フランソワーズ……名簿にそんな名前があったな」 「おいおい、そりゃおかしいってもんだぜ。こなたさんは泉こなたって名前で名簿に乗ってる。 この俺ストレイト・クーガーの名前も斎藤さんの名前も、カズマも劉鳳も社長もかなみちゃんも緋村剣心さんだって名前が乗ってる名簿にだ。 まさか一人の人物を同じ名前で乗せる必要もないだろう。 いや、確かに名前と言うのは一種の記号であってその人となりにはあまり関係ないのものだ。 愛した人間と結ばれることでその名を一部を変えるパターンはあるが、それでもその人の本質に変りはないだろう。 だがだが、今は名簿の問題だ。人の名を記す名簿にはその記号を記すことでその存在が居ることを伝えることに意味が」 「その餓鬼は泉こなた。何故ルイズと呼ぶ? ああ……」 クーガーの長々とした台詞を、今度は詩音ではなく斎藤が被せる形で打ち切る。 そして、短くなった煙草を吹かしながら。 サイトの目を見据えた僅かに笑みをこぼし。 「死体でも見たか?」 その斎藤の言葉に、サイトの顔が真っ赤に染まる。 図星か、と笑いながら斎藤は呟く。 「……うっせえんだよ、お前ら! ルイズはここに居るって言ってんだろうが!」 「くだらんな」 斎藤は限界まで短くなった煙草を捨て、次は金属バットを手に持つ。 サイトも手に血管を浮かび上がるほど強く握って女神の剣を正眼に構える。 「……おい、お前」 「うるせえって言ってるんだよ! ルイズはなあ……ルイズはここに居るだろうが! 小柄で、怒りやすくて、手が口よりも先に出て……そのルイズがここに居るだろうが!」 クーガーはサイトの言葉に顔を歪め、腰を落としてクラウンチングスタートの体勢を取る。 詩音はここから離れるタイミングを失ったことに頭を抱える。 こなたはサイトの勝利を祈るだけ、ここで逃げれるという自信がないからだ。 そして、何かが起こればこの沈黙が破られる。 そんな瞬間に一人の男が横槍を入れる形で現れた。 「……やっと、人が居たか」 その男は、痩せぎすの体躯をしていた。 よく光る目と獣のように上端がぴんととがった耳。 半袖とジーンズ、そして何故か靴を履いていない。 ほっそりと痩せぎすの体躯から一種独特の精気を発散するその男。 明らかに何かが違う、『いかにも』と言った雰囲気を持っている。 その男の名は後藤。 五体のパラサイトが一つの身体に同居している種変りなパラサイトだ。 その『パラサイト』後藤に対して、最も反応が早かったのは『人斬り』斎藤一だった。 斎藤は素早く腰を落として身構える。 サイトたちからは目を離し、決して後藤から視線をそらさない。 人を殺し続けた故に人の殺し方を知っている斎藤には、後藤が人でない何かだと直感的に理解できたのだ。 そして、次に違和感を覚えたのは『アルター能力者』ストレイト・クーガーだ。 本土にて身体を弄られたクーガーは自分と似たものを感じたのだ。 ただの人間とは身体の作りが違う、そんなものを。 『ガンダールブ』平賀サイトと『鬼』園崎詩音は目の前の生き物を人間だと認識したが、何かがおかしいと肌が訴えかけていた。 シャツのボタンを一つずれて掛けてしまったような、そんな些細だが確かな間違いを感じるのだ。 そして、修羅場慣れなどしているわけのない『一般人』泉こなたでは、威圧感のある男の人だな、としか思わなかった。 「後藤だ」 「……?」 「お前たちは名前を知りたがる。ならば、先に名乗っておくだけだ」 ゆったりとした言葉ではあるが、何かを急くように後藤はしゃべり続ける。 得体の知れない後藤に詩音を含めた五人は動くことが出来ない。 まるで銃弾が底を尽きた状態で猛獣を前にした狩人のような、そんな感覚。 「……三人か」 そんな場を作った元凶である後藤は無機質にそう呟く。 ここに居る人間は五人。 後藤の言う三人とは一体何だ?と詩音が思った瞬間、後藤が詩音の頭を見透かしたように呟く。 「歯応えのありそうなのは、三人だな」 無表情のまま、僅かに首をコクリと回して一歩踏み出す。 瞬間にバラバラであったここに居る全員の考えがようやく一致した。 『この生き物は危険だ』、と。 後藤は殺し合いに来てから、ようやく強い高揚感を覚えていた。 目の前の人間は強い。 少なくとも暴力団の事務所に乗り込んだ時ぐらいには面白くなるだろう。 しかも、今度こそ食事にありつけるのだ。 あの貧相な身体をしたルイズとか言う少女だけでは満腹にはなれなかった。 だが、今回は体格の良い男が三人に、早熟気味の少女が一人とルイズなる少女と同じような貧相な身体をした少女が一人。 これだけ食せば満腹になる、しかも戦闘欲求まで満たせるオマケ付きだ。 人の言葉で表すならば、まさに『至れり尽くせり』といったところか。 一人ひとりじっくりと味わっている暇はない。 目の前の男三人も、場合によっては少女二人も、後藤へと襲いかかってくる。 共通の敵を見つけた人間は一先ずの協力を結ぶ、その敵が強力であればあるほどにそれは顕著だ。 「……さて」 後藤は始めて見るご馳走を前した子供のように、一切の躊躇いもなく動き始めた。 人間よりも高い身体能力を使い、一足飛びで五人の間合いへと飛び込む。 そして、右腕を肘から下まで鋭利な刃物へと変える。 肘から下に、釣り針のような反りを二つほど作っている鋭すぎる刃だ。 その刃を鉄甲をつけた斎藤へと勢いよく振り下ろす。 「ふん……阿呆が!」 斎藤は鼻で笑いながら右の無敵鉄甲でその刃を受け流し、さらに左手で強く握りしめた金属バットを横薙ぎに後藤の腹へと叩き込む。 壬生浪と呼ばれ人を斬り続けた新撰組浪士、その三番隊組長・斎藤一には後藤の狙いらしい狙いもない気のままの刃など速いだけの物に過ぎない。 がら空きになった腹へとバットを叩きつけられた後藤は僅かに距離を取り直す。 ここで逃がしはしない、追撃をと考えた斎藤だったが無敵鉄甲に目をやり足を止める。 後藤の刃を受けた無敵鉄甲に僅かな切り傷が見える。 サイトやこなたの斬撃で一切傷がつかなかった無敵鉄甲に、だ。 それほどあの刃は鋭く、振り下ろした後藤の膂力は流しきれないほどに強力だったということか。 僅かに緩んでいた心を再び締め直す。 「なるほど……」 腹部にバットを叩き込まれた後藤が何かを確かめるように腹をさする。 そして、斎藤と腹を見比べながら、その間にも表情を一切変えない。 喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも。 感情を忘れたのではなく最初から知らないかのように一切表情を変えない。 詩音は背筋がぞっとする。 いつか園崎は鬼だ、なんて話があるし分からないでもないが、目の前の後藤は鬼ですらない。 いや、後藤は生き物なのだろうか? ただ人を殺すことにだけに拘っている機械なのだと言われた方がまだ納得できる。 「野獣風情が人里に降りてくるな……」 詩音がそんな思いをいだいている横で、斎藤が吐き捨てるように呟く。 クーガーとサイトは様子見に徹する。 斎藤の高い戦闘力を知っているため、先に戦わせて後藤の力量を見極めようとしているのだろう。 見様によっては姑息とも取れる戦法ではあるが、それほどに斎藤の力を信頼しているのだ。 なによりクーガーにはこなたを止めるという使命がある。 サイトとこなたがここから立ち去らないように、それでいて二人と詩音へと後藤が攻撃を仕掛けないように見張っている。 クーガーが居る限り、サイトとこなたも動けない。 下手に動いて斎藤とクーガーが死に、後藤と相対するのを嫌ったのだ。 あのモンスターと呼ぶに相応しい後藤は、どうしようもなく嫌だった。 「お嬢さん……今のうちに逃げてください。ここは少し危ない」 クーガーは詩音の耳元に顔を近づけ、そう呟く。 目の前であり得ないことが起きているというのに、非常に落ち着いている。 それはクーガーがアルター能力者、詩音の基準でいうあり得ない人物であることも起因している。 恐らくあれを何らかのアルター能力だと思うことにしたのだ。 「安心してください、アイツは俺と斎藤さん、サイトとかいう少年に興味あるみたいですからねえ」 クーガーはサングラスを上げ、詩音へとウインクして見せる。 詩音は僅かに考え込み、少し自己嫌悪の情を浮かべながらカラシニコフを抱えてここを立ち去った。 それでいい、とクーガーは呟き後藤へと向き直る。 一方、斎藤は腰を落とし、バットを持った左を弓を引く様に後ろへと持っていき、右手を照準をあわせるようにをバットの先端に添える。 クーガーとサイトとこなたは知っている。 あれは斎藤が放つ最速最強の構え。 顔に直撃すれば、首から下と頭がお別れしてしまうのではないかと思わせるほどの威力を持った拳だ。 拳で打った姿しか見たことがなかったが、バットを持った姿を見て三人は確信する。 これは本来武器を用いての構え、拳はただの代用品だったのだ 「……死ね」 斎藤は短い言葉と共に、爆発するようなスタートを切る。 後藤はそれを待ち受ける。 侍を相手に、猛獣がカウンターを狙う。 斎藤はその馬鹿さ加減におかしさよりも巨大な怒りを覚える。 たしかにこの棍棒では本来の牙突の威力は出ない。 だが、それでも鬼の副長であり稀代の天才・土方歳三が考案した左片手平突きは甘いものではない。 後藤はブレード状に硬質化させた右腕を振りかぶる パラサイトである後藤には、どんなに速い斎藤の攻撃であっても見えている。 迫り来る金属バットへと右腕を突き刺すように持っていき。 「……む」 後藤の右腕が吹き飛んだ。 かろうじて肩との接続部分は残っているが、重火器が直撃したように右腕がその形状を保てずに四散していく。 威力に押し負けた、人間相手に。 そのあり得ない事態を後藤が理解した瞬間、斎藤は叫ぶ。 「まだだ!」 斎藤はその言葉と共に、伸ばしきった左腕を思い切り横に払う。 当然、左手に強く握ったバットも薙ぎ払われる。 そのバットは右腕がなくなったゆえにがら空きになったボディに直撃する。 牙突、左片手平突きは突きと横薙ぎの二段構えであるこそ新撰組に採用されたのだ。 かつ、斎藤一はその牙突だけを極めたスペシャリスト。 いくら化け物であろうとこれを食らえば生き物である以上立てない。 「……なるほど」 「っ……! 癇に障る野獣だ……!」 だが、後藤はまだ立ち上がる。 腹をさするだけで効いてはいないと言わんばかりに表情を変えずに。 そして、斎藤を見つめて呟く。 「お前は強いらしい」 後藤は簡素な賛美の言葉の後に、「だが……」、と付け加える。 相変わらず表情を変えることはなく、四散したはずの右腕を元の形へと戻していきながらの台詞。 「何故、三人で来ない?」 本心からの、不思議でたまらないとも取れるような口調で後藤は言う。 当然斎藤の怒りは限界まで届く。 だが、斎藤が次の動作を取るよりも早く、高く跳躍したクーガーが居た。 踵部分に仕込まれたピストンと側面部の噴射口を使えば、クーガーは宙を舞うことだって出来る。 「そうだ、それでいい……」 ラディカル・グッド・スピードを脚部に展開したクーガーのかかと落とし。 後藤は先程の牙突のような防御ではなく、回避を選択する。 クーガーの攻撃が牙突よりも強力だと感じたわけではない。 ただ先程は迎え撃ったから次は避けてみるかという散歩のコースを変えるような気軽さで思っただけの話だ。 クーガーのかかと落としは空振りに終わる。 後藤は横に素早く身体を動かし、硬質化させた右腕でクーガーの首をはねようとする。 「てりゃあ!」 「ふん!」 だが、それはサイトと斎藤の左右からの攻撃が入ることで失敗。 バットを突き出した斎藤の攻撃を右腕で、サイトの女神の剣を振り下ろした攻撃を左腕で、それぞれ盾のように広げた両腕によって防ぐ。 「人間は殺すことについてはどの生き物よりも長けている……か」 左腕でサイトの女神の剣を、右腕で斎藤のバットを受け止めながら呟く。 先程まではいがみ合っていたように見えた三人が一斉に攻撃したため、思わずその言葉を思い出したのだ。 しかし、クーガーは直ぐに次の攻撃を繰り出す。 サイトと斎藤の攻撃によって両腕が塞がれた今が好機。 腕を地面につけて押すように腕に力を入れ、逆に脚は後藤の腹へと突き出す。 カポエラを思い出させる攻撃。 「くっ!」 「うわ!?」 だが、後藤はそのクーガーの攻撃を察して、直撃する前に高く飛び上がる。 クーガーの跳躍も高い、が後藤の跳躍はもっと高い。 空振りしたクーガーの蹴りと、突如支えのなくなった斎藤とサイトが倒れこむ。 さらにそれぞれのデイパックも四散し、あらぬ方向で飛んでいく。 「即興にしては面白いな……」 上空を見上げると、そこには建物の壁に刃と化した右腕を突き刺した後藤が居る。 そして、腕をバネのように伸縮させたかと思うと。 弾けるように、勢いよく地面へと落ちてきた。 斎藤たち三人は、不恰好に転がるようにして弾丸のように降り落ちる後藤から距離を取る。 地面に落下した際に、後藤の握りしめた左拳は地面に叩きつけられコンクリートにヒビが入る。 あれがまともに入っていれば間違いなく肋骨は粉砕、その下の内臓も破裂で即死だろう。 だが、威力以上に恐ろしいのは、先程見せたバネのような腕の変化。 恐らくここが室内ならばまるでスーパーボールを思い切り叩きつけたかのように、後藤は立体的な動きで自由自在に動き回っていただろう。 同じく殺し合いに連れてこられた、縮地という歩法扱う瀬田宗次郎と同じように。 そういう意味ではこのほどほどに広がった道路での立体的な動きが出来ない戦闘ならば、まだ与し易い。 最速の男ストレイト・クーガー、壬生浪斎藤一、ガンダールブ平賀才人の三人は揃ってそう思った。 しかし安堵している暇はない。 後藤は次の攻撃へと移る。 刃のように固めた右腕を最も近くにいるクーガーへと振り下ろす。 だが、平面でのスピードならばクーガーは負けはしない。 右腕に軽い蹴りを入れることで身体を攻撃線上から外し、余ったもう一方の脚で蹴りを叩き込む。 このままでは尻餅を突いてしまい隙を作ってしまうことになるが、クーガーは片腕を地面につき支える。 そして、先程の一発だけでは後藤が倒れないであろうことは察していた。 故にまるでダンスを踊るようにクーガーは蹴り続ける。 まずは宙へ腕で跳ね上がるように後藤の顎に一撃。 後藤の顎が空へと上がった瞬間に、片足が地面につき上がったままのもう一方の足で腹部に軽く一撃。 次に両足が地面へとつけば、身体を屈める。 横薙ぎ振るってくるであろう後藤の右腕を避けるためだ。 クーガーの読み通り後藤の右腕は空を切る。 そして、後藤が右腕を空振りした時を見計らって足払いを掛けて体勢を崩す。 時間にして僅か数秒。 クーガーは後藤を確かに翻弄していた。 「ハハアハハッハア! スピードでこの俺を張り合おうなんてなあ!」 だが、後藤は一向に顔色を変えない。 楽しんでいるわけでも苦しんでいるわけでもない、痛みに顔を歪めすらしない。 まるで痛みを感じていないのではないかと思うほどの無表情だ。 クーガーは機械と戦っているかのような感覚を覚える。 それは当然とも言える。 後藤はパラサイト、この地球上で最も「痛みに鈍い」生き物だ。 その上、腹部による攻撃は全て腕によるガードと皮膚の硬質化で防いでいる。 「っう!?」 足元に激痛が走る。 視線を落とすと、脚部に展開したラディカル・グッド・スピードが後藤の脚に貫かれている。 ちょうど今まで振るっていた腕のように先端の尖った刃へと変えていたのだ。 腕だけでなく脚も変化させることに驚愕を覚えながら、距離を取り直そうとする。 だが、後藤はそこで終わらない。 右腕を突き刺すように素早く動かす。 その右腕はクーガーの脇腹を貫き、血を滴らせる。 だが、致命傷ではない。 「ぬおわぁ!」 そして、止めと言わんばかりに後藤は長い脚でクーガーを蹴り飛ばす。 パラサイトの全力の蹴り、クーガーは遠くへと吹き飛ばされていく。 その間に斎藤とサイトは距離を取り、後藤もそれを追撃せずに見送る。 仕切り直し、だが後藤は大したダメージどころか疲労すら感じさせない。 斎藤は手に持ったデイパックを手探りで何かを取り出す。 金色の柄をした、反りの大きい蛮刀だ。 「ちっ、蛮刀か……どこまでも使えん餓鬼だ」 「てめえ、それは俺の!?」 サイトの言葉から分かる通り、斎藤の得意とする反りの少ない美術品のような美しさを持つ日本刀ではない。 それはこのバトルロワイアルの参加者の一人でもあるヴァンの蛮刀。 日本刀ではないが、バットよりは遥かにマシだと斎藤は自身に言い聞かす。 今にも襲いかかってきそうなサイトを片手で制し、腰を落とす。 蛮刀を持った左手を弓を引くように後方へと持って行き、照準をあわせるように蛮刀の先端に右手を添える。 三度目となる、牙突の構え。 一度目は拳、二度目はバット、三度目は蛮刀。 そして、順を追うごとに圧迫感を増している。 拳を武器とする拳法ではなかった、バットのような棒を扱う杖術ではなかった。 この牙突の構えは、刀を持ってこその剣術。 それをサイトとクーガーは悟る。 後藤は斎藤から溢れる怒気と殺気を心地よいと言わんばかりに正面から受け止める。 そして、腰を落とし、左腕を硬質化させる。 左腕を、『弓を引くように引いていく。』 「貴様……!」 後藤が取った構えは、斎藤の牙突の構え。 と言っても斎藤のようなバランスの取れた構えではなく、不恰好な動けるかどうかも分からない構え。 だが、斎藤を煽るにはそれだけで十分だった。 怒りを原力に斎藤は走り出す。 いや、走りだすと言うよりも弾け飛ぶと言った方がしっくりと来るだろう。 そして、斎藤の動きに合わせて後藤も動き出す。 構えと呼べるか前からのスタートでもないのに、そのスピードは斎藤と何の遜色もない。 このことから単純なスペックは後藤の方が上だと斎藤にも分かる。 しかし、技術ならば斎藤の方が勝っている。 ならば後藤はどう来るか、当然搦手だ。 後藤は左腕に添えた右手を硬質化させ、奇襲をかける。 (くだらんっ!!) だが、斎藤は首を捻り上半身をのぞけらすことで右腕の攻撃を交わす。 そして、体勢を崩したままだというのに牙突を放つ。 牙突により、後藤の左腕が弾ける。 だが、まだ終わらない。 二度目となるが牙突は二段構え、平突きで仕留めることが出来なければ直ぐ様に横薙ぎへと移る。 斎藤は忠実にその極めた技を実行へと移し―――― 唐突に、足の甲に鋭い痛みを覚えた。 もちろん痛み程度では横薙ぎを止めはしない。 だが、僅かにスピードが鈍ったのは事実だ。 その僅かなスピードの差で、脚を硬質化させ脇腹をガードしている。 ダメージは残るが致命傷ではない上、後藤はパラサイト。 斎藤の牙突はほとんど失敗したと言っても良い。 「ちっ……だが、まだ……っ!?」 ならば、と斎藤は位置取りを僅かに変え、零距離から身体のバネだけで放つ牙突・零式へと移ろうとする。 だが、まるで地面に縫いつけられたかのように足がピクリとも動かない。 そこで視線を下へと降ろすと、そこには後藤が斎藤の足を思い切り踏みつけていた。 刀同士での戦いは足の使い方も大きな要素である。 故に何度も死線をくぐり抜けてきた斎藤には、ただの踏みつけならば抜け出す方法を知っている。 だが、後藤が行っている踏みつけは普通のものではなかった。 足の指を硬質化させ、刃で突き刺しているのだ。 そしてそれはコンクリートにも達している。 固められたコンクリートとパラサイトの単純な力に挟まれ斎藤は抜け出すことが出来ない。 後藤は僅かに動揺している隙に、右腕で斎藤の左の肘から下を切り落とす。 壬生浪と言えども肉体は人、パラサイトの刃により簡単に切り落とされる。 蛮刀を持った左腕が地面へと落ちる。 斎藤は歯を食いしばり、痛みに耐えながら右腕を振り上げる。 だが、斎藤が拳を叩き込むよりも早く後藤はその右腕を切り落とす。 腕のなくなった斎藤、だが目に怒りにギラつかせたまま蹴りを放つ。 それは単純に後藤が憎いからでも、負けることが嫌いだからではない。 彼の信じる唯一の正義、悪・即・斬の信条が故。 人里に降り、人を食い散らす獣は悪だ。 その獣が何を思っていようと、食料がないという事情があろうと関係ない。 悪は斬る、それが新撰組のような人斬り集団が信じる唯一の正義。 腕がなくなろうと、脚がなくなろうと、五体がなくなろうと、ただ悪を斬る。 それが、乱世を刀で変えようとした人斬りたちの、唯一の正義。 「まずは、一人」 時系列順で読む Back 元教師とメイドさん Next Ultimate thing(後編) 投下順で読む Back 元教師とメイドさん Next Ultimate thing(後編) 055 少女と獣 後藤 072 Ultimate thing(後編) 044 幸せの星 泉こなた 平賀才人 046 三竦み 園崎詩音 066 お前の姿はあいつに似ている ストレイト・クーガー 斎藤一
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Ultimate thing(前編) ◆EboujAWlRA 息を切らしながら、詩音は走っていた。 日の出には近いがまだ薄暗いこの時間帯では足元も不確かで、詩音は何度もつんのめってしまう。 それでも詩音は走り続ける。 あの煙が上がった先に悟史か沙都子、魅音やレナに圭一と言った仲間が居たらと考えてしまうと、どうしても脚が止まらないのだ。 簡単に死ぬわけはないと思うが、どうしても不安に駆られる。 もしも、あそこに居て銃を持った殺人者と相対していたら。 そんな状況ならば、AK-47、カラシニコフと呼ばれる突撃銃を持った詩音が行けば戦力になれる。 ある種、カラシニコフを持っていることで詩音の気を大きくさせていた。 拳銃よりも大型の、分かりやすぎる凶器。 これをもって脅せば、会話の際にかなりの優位に立てるだろう。 だが、詩音のそんな考えにも一抹の不安がある。 それはさきほど警察署で出会った学生服を来た少年とスーツの中年が原因だ。 詩音がカラシニコフを向けたにもかかわらず、あの二人は特に怯えたような感情を表に出さなかった。 その事実が詩音の考えに若干曇りを作る。 (でも、万が一悟史くんや沙都子が危険な目に遭っているのなら……!) だが、不安要素があろうとここで詩音は止まる理由はなかった。 万が一にも可能性があるならば走る価値はある。 いずれにせよ、詩音にははっきりとした目的地が定まっていないのだ。 この広い島を無作為に走り回るくらいならば、何かしらの目立つものを追う方が効率が良いだろう。 あわよくば、その目立つ物へと寄ってきた、あるいは逃げてきた悟史達と出会うことがあるかもしれない。 「……!」 だが、その詩音が足を止める。 目前から誰か、二人組が近づいてくることに気づいたからだ。 学園寮からの脱走経験がある詩音は夜目が効く上に勘も良い。 カラシニコフを手に取り、腰を僅かに落とす。 目の前の二人組が殺し合いに乗っているか乗っていないか、それは定かではないが警戒するに越したことはない。 「止まりなさい!」 詩音は目の前の二人組、泉こなたと平賀才人へと声を投げつける。 突き放す様な鋭い言葉。 そんな詩音の声色にこなたとサイトは僅かに肩をすくめて、それでも詩音の持つカラシニコフを目にやると足を止める。 カラシニコフが脅しとして確かに機能したことは詩音に安堵の感情をもたらした。 だが、直ぐに気持ちを切り替えてこなた達へと投げかける言葉を考える。 下手な言葉は口に出来ない。 与し易い相手だと舐められて、煙に巻かれるのだけは避けたい。 下手な会話は時間の消費と情報の混乱を招くだけだ。 「『北条悟史』と『北条沙都子』、それに『竜宮レナ』に『前原圭一』と『園崎魅音』に会った、もしくは居場所は知りませんか?」 詩音はストレートな言葉を選んでおくことにした。 いちいち腹を探りながら言葉を交わすような状況ではない。 一言二言、お互いに必要な言葉を交わせればそれでいい。 もちろん、爆心地から現れたこの二人に警戒していた、という気持ちもある。 特に焦った様子もなく、サイトは剣を片手に現れたのだ。 何かしらのきな臭い物を感じ取った詩音としては、警戒しない方がおかしい。 そんな詩音のピリピリとした様子を感じ取っているのか、こなたはサイトへと顔を向けて答える。 「その人達のこと知ってる、サイト?」 こなたは肩を持ち上げて知らない、と仕草で示してサイトへと振る。 だが、サイトは何も言わない。 今まで忠実にこなたと付き添ってきたサイトには珍しい反応だ。 こなたはサイトの表情を見た後、視線を追う。 「すげえ胸……ってぇ!?」 サイトが何を見ていたのか、こなたが察した瞬間に漏らしたサイトの言葉。 こなたは笑みを浮かべて脚を踏みつぶす。 体重の軽いこなたとは言え、思い切り脚を上げてから踏み下ろされたのではダメージもかなり大きい。 足の甲を抑えながらピョンピョンと飛び回る。 呑気とも取れるその動作に、詩音は若干苛立つ。 出来の悪いコントを見ている暇はないのだ。 「わ、悪いルイズ。えーっと、北条に、竜宮に……ああ、うん、俺は知らねえよ。 ルイズと会うまで、俺は誰とも会ってないからな」 「視線を胸から一切ずらさずに謝るのもどうかと思うよ」 多大な期待を抱いていたわけではないが、やはり言葉にされると落胆を覚える。 詩音はこの二人に他にも情報を聞きだすべきかを僅かに考え、やめておくことにした。 カラシニコフを抱えたまま、脚を一歩動かす。 背中を見せずに立ち去るのも中々難しいものだ、と詩音は思った。 「そうですか。それでは私はこれで」 「あれ、聞くだけ聞いて行っちゃうの?」 「別に話すこともないでしょう? それともそちらもなにか?」 言葉と視線に「用があるならさっさとしろ」という思念を込めてこなたを見返す。 こなたは僅かに面白くなさそうに眉を潜めて、直ぐに何かを思いついたように顔を明るくした。 怪しい、詩音は直ぐにそう思う。 どうもこの二人はおかしいと詩音は察する。 特に男の方、サイトは妙に落ち着かないというか詩音とはまるで違うものを見ているというか。 「いやー、実はあの遊園地で踏んだり蹴ったりな目にあっちゃってさ」 「逃げる……やっぱりあそこでなにかあったの?」 「そーそー。こーんな狐みたいな細い目をした背の高い男の人に襲われたの」 こなたは自身のタレ目を人差し指で上へと釣り上げる。 それにしてもサイトは特に何も言わない、まるで犬のようだと詩音は思った。 しかし、こなたの言葉はあまり信用出来ない。 襲われたというわりにはどうも落ち着きすぎているような気がするのだ。 それにサイトが剥き出しの剣を固く握りしめているのにも気に掛かる。 (……いや、それともこっちを刺激しないようにしてる?) こなたのにこやかな顔に、嘘をついているという考えではない別の考えが頭によぎる。 思えば詩音は銃を持っているのだ、変に刺激するのは避けるだろう。 そう考えると、こなたが常ににこやかななのにも納得ができる。 「……とりあえず、ご忠告感謝します」 嘘をついている可能性と、本当のことを言っている可能性。 そのどちらもあり得るため、話半分に聞いておくことが吉だろう。 背の高い、狐のような細い目をした男、か……警戒していた方が良いだろう。 詩音はそう思いながら、銃口を僅かに下げる。 構えを解いたわけではない、力を少し抜いただけだ。 その僅かな瞬間だった、サイトが女神の剣を持って僅か一歩で詩音の懐へと詰めたのは。 「ハッ!」 息を鋭く吐いたサイトは女神の剣を横一線に振るう。 普通の高校生にしか見えなかったサイトの突然の素早すぎる行動に詩音は虚を突かれる。 カラシニコフを持ち上げる、いやそれでは間に合わない。 不思議なほど落ち着いた頭で詩音は判断する。 スパッ、とテレビの時代劇ならば擬音がつきそうなほどあっさりと女神の剣は切り裂く。 女神の剣、神の加護を得た聖剣は業物と呼ばれるに相応しい、なまくら刀とは違う切れ味を持っている。 身体能力を高め、さらにそれを持つは剣での戦闘を何度もこなしたサイト。 ガンダールブ発動中に、体の神経に刻み込まれた技術はサイトにとって大きなプラスとなっている。 流されやすい、良く言えば素直な性格が技術の吸収を助けているのだ。 そして、サイトは自身が斬り捨てた物を見据える。 いや、正確に言えばその結果晒された詩音の身体を眺めていた。 詩音は呆然として、片手でカラシニコフを持って斬られた胸元を押さえる。 慌てたようにバックステップでサイトと距離をとるが、直ぐに本能でかがみ込んでしまう。 こなたもそんな詩音の身体を冷めた目で見る。 いや、呆れている、と言い換えても良いかもしれない。 そして、熱が篭ったように詩音を見つめるサイトの向こう脛を思い切り蹴りつける。 脚を踏まれた時以上の、声にもならない声をあげる。 サイトが女神の剣を使い切り裂いたのは、詩音の服だった。 しかも、見事に胸部だけ。 横一文字に、サマーセーターを、胸の位置に。 もうわかりやすく言ってしまおう。 詩音のブラジャーが見えてしまったのだ、サイトの斬撃によって。 詩音は知らないが、こなたとサイトは密かに視線を合わせて詩音を襲うと決めていた。 明らかに強力な武器であるカラシニコフに惹かれたが故の行動だ。 それを何が起こったかサイトは胸を斬ったのだ。 恐らく、詩音が現れて以来片時も離さなかった視線が原因であろう。 「……この程度!」 詩音は頬を僅かにだけ赤らめ、躊躇いがちだが立ち上がってカラシニコフを構え直す。 もちろん、今まで腕で隠していた胸が剥き出しになる。 下着が残っていることと肌に傷がつかなかったことは幸いだと、何処か見当違いな思考が過ぎる。 「うおお……!」 「ッゥ!」 痛みによる呻き声ではない、感嘆の念が多分に篭った声をサイトが漏らす。 詩音は顔をひきつらせてカラシニコフのトリガーを引く。 もちろん当てるつもりはない威嚇射撃だ。 だが、思わず引いてしまった、という感情のままの行動のため狙いは少しずれたかもしれない。 「うわあ!」 「ルイズ! ……てめえ!」 その銃弾はこなたの足元へと打ち付けられた。 今まで平静を装っていたが、こなたもさすがにこれには驚いたように後ずさる。 こなたの反応にサイトは慌てたように名を呼び、無事を確認するとほっと一息つく。 そして、直ぐに詩音の方へと怒りに顔を染めて向き直る。 その瞳には先程のような浮ついた感情はない。 (藪をつついて蛇を出す……か) 威嚇射撃は威嚇にならず、逆に向こうを刺激しただけ。 銃を持っていることがここまでアドバンテージにならないとは、さすがに詩音も苛立ちを覚えてくる。 サイトと詩音のにらみ合いが続く。 こなたは、ふー、ふー、っと深呼吸を繰り返したのち、ただ手持ち無沙汰にそれを眺めている。 サイトと詩音がにらみ合いを続けて数分ほどが経った後だった。 「思ったよりも離れていなかったようだな」 冷たい、全てを突き放すような声が響く。 三人が声の方向へと視線を向けると、そこにはキツネ目をした青い警官の制服らしきものを来た男が銜え煙草で立っていた。 キツネ目の警官、斎藤一はちらりとサイトとこなたを横目で見る。 銃を構えた詩音には一瞥もくれない。 「人を殺めたか、小娘」 『嫌な奴に会った』とこなたとサイトは眉をしかめながら思う。 『背の高い、細目の男……それにあの服、警官?』と詩音はこなたたちの言う細めの男が目の前の斎藤だと察する。 その詩音の考えの通り、この青い警官の服を着た長身の男はこなたとサイトが出会うきっかけとなった男だ。 「どうして、そんなことを思うの?」 「くだらん腹芸を使うな。どんなに身体を洗おうと、こんな短時間で染み付いた血の臭いは取れん」 そう言い切り、相変わらず細く鋭い目でこなたとサイトを見据える。 その目には先程のような怒りも蔑みも存在しない。 明確な敵意が瞳から伝わってくる、怒気の混ざらない純粋な敵意だ。 「悪、即、斬……市井を脅かす貴様らは既に悪だ。餓鬼の悪戯を超えてしまったんだよ」 グッ、と強く拳を握りこんで左肘を弓を引くように思い切り後ろへと持っていく。 斎藤はこなたを殺すつもりはないが、サイトはその限りではない。 こなたにしても殺さなければ良いのだ、腕の一本ぐらいなら奪ってしまうかもしれない。 間違いなく、先程とは違う。 こなたの横に居たサイトもそれを認識したのか、女神の剣を構えてこなたの盾になるように前へと立つ。 相変わらず射殺すように鋭い瞳、サイトはそれを真っすぐに受け止めて女神の剣を正眼に構える。 膠着状態が、僅かに続く。 先に動いた方が負ける、と言うわけではないがあの警官には隙が一つとして存在しない。 そして、隙がない以上はサイトから簡単に動くわけにはいかない。 「フンッ!」 故に、先に動いたのは警官から。 信じられないほど速い初速、そして全くスピードが落ちない中速、ついにはスピードが上がった終速。 あっという間にサイトの懐に斎藤の姿が現れる。 やはりこの糸目の警官は強い、とこなたは思い、詩音はその精密かつ速すぎるその動きに愕然とする。 揺れない信念と研ぎ澄まされた技と人知を逸する身体能力、全てを兼ね添えている。 しかし、それを避けたサイトも只者ではない。 確かに、あの女神の剣を持てばこなたでも斎藤の攻撃は見えた。 だが、サイトは見えただけでなくそれをはっきりと避けたのだ。 しかも次の瞬間には、反撃を狙っている。 やはりこの二人はただ身体を鍛えているというだけではない。 何かしらの武術を習っていて、しかもかなりの修練を積んでいる。 そうこなたが考えている間にも攻防は続いていく。 サイトが女神の剣で切りつけると、斎藤は無骨な篭手でそれを受け流す。 斎藤のそこにある空気を裂くようなストレートを、サイトは紙一重で避けていく。 その攻防は、もはやテレビで見る格闘技などとは比べ物にならない。 むしろ、特撮や時代劇であるような殺陣に似ている。 実は裏で二人は段取りを組んでいる、と言われてもこなたと詩音は信じるだろう。 それほど二人の攻防は見事なものだった。 サイトが攻めていると思ったら、いつの間にか斎藤が攻めている。 味方であるサイトが押されているというのに、こなたはただ見ているだけ。 正確に言うならば見ることしか出来なかった。 その時ようやく一撃(と言っても距離をとるためだけの弱い蹴りだが)を入れたサイトが距離をとる。 斎藤はそれを追わずに、鋭い目付きで見据えたまま構え直す。 「……逃がしては、くれねえよなぁ」 「逃げてみるか?」 まるで他人事のように、何の感情もなく斎藤は言葉を返す。 「そいつは無理そうだな」とサイトも精一杯不敵な笑みを作りながら返す。 先程と違い、斎藤は『人を殺した』こなたとサイトに執着している。 簡単に逃げれるとは思えない。 ここがいわゆる執念場かー、とこなたがどこか呑気に思った瞬間。 「見ぃぃぃつけたぁぁぁぁぁぁぁ!!」 大声が、響いた。 その声は詩音にだけ聞き覚えがなく、斎藤とサイトとこなたには聞き覚えのある声。 野太い男の声で実は舌が二枚あるのではないかと言うほど早口に言葉を繰り出すあの声。 「人を殺すことは当然なのか? 人を殺せない人間は弱い人間なのか?」 何かを訴えるように、あるいは自分に言い聞かせるように大きな声と共にこちらへと向かってきている。 詩音も、斎藤も、サイトも、こなたも。 その声へと耳を傾けてしまう。 「いいや、違うね! 人を殺さないことは弱いことなんかじゃあない、むしろ強い意思の持ち主だ! 殺すことでしか解決できない人間とは違う文化的な人間さ! 俺なんかとは違うなぁ! 俺はその心に敬意を示す! 文化とはそうであるべきだ! 人間に豊かな心をもたらす物だ! だぁぁぁからぁぁぁぁぁ! 俺は!」 その瞬間、唐突に目の前に現れた。 その場に竜巻を運び、砂嵐を作って現れたその男、ストレイト・クーガーはサングラスを僅かに上げ。 「止める! 最速でなぁ!」 そう、宣言した。 突然現れた、黒いサングラスをした男。 その目はやはりこなたとサイトを見ており、詩音には一瞥をくれただけ。 また何か出た、と詩音は頭を抱えたくなるが斎藤とサイトとこなたの三人に緊張が現れたことから、直ぐに気を引き締める。 この男にも何かある、詩音はそう思ったのだ。 「見つけましたよ、こなたさーん!」 「いやあ、こっちは逃げたかったんだけどなあ」 はははー、と呑気に笑いながらこなたは答える。 だが、その顔には僅かに汗が浮かび上がっており緊張していることが察せられる。 こなただけでない、サイトなど歯を食いしばって顔をしかめている。 つまりこの男はフレンドリーに声をかけているが、こなたとサイトにとっては面倒な相手だと言うことなのだろう。 詩音はなんとなくではあるが今の状況を把握する。 まず、斎藤はこなたとサイトを殺そうとしている。 こなたとサイトは殺し合いに乗っており、斎藤と敵対している。 クーガーはこなたとサイトに用が有る、態度から殺すような荒っぽい真似はしないだろう。 (ここから出るなら今……今なら問題なく出れるでしょ) この騒動に巻き込まれている暇はない。 詩音としては、早く仲間を探しておきたいところなのだ。 服装が服装だが、そんなことに構っている暇もない。 生命がかかっているのだ、旅の恥はかき捨てではないが気にしている場合でもない。 「……っと、おやおや。これはまた刺激的な格好ですねえ、お嬢さん。 こんな薄暗い中で刺激的な薄着はいけません、風邪のような病原菌だけでなく邪な思いを抱いた男も寄りついてしまいますよ いえいえその男を誘うが目的だと言う場合もあるかもしれませんが貴女の凛とした目をみる限りそれもなさそうです。 男としては嬉しく思わないこともありませんが文化的な男を称する以上こんな状況でそのような薄着の女性の誘いにのるべきではなーい。 というわけでこれをどうぞお嬢さん。こう見えても中々暖かい上に動きやすくて便利なものですよ。 あ、私のことを構う必要は一切としてありませんよ。男は黙って女性を支えるものですからねえ。 男性と女性、いえ、人と人は支え合って生きていくもの、それが文化的」 「ありがとうございます」 詩音が立ち去ろうとした瞬間、クーガーはその姿を見つけた引き止める。 そして明後日の方向を向きながら、そのホーリー隊員の制服を脱ぎ詩音へと差し出す。 詩音は最低限の礼儀としてクーガーの言葉が終わってから受け取ろうと思ったが、一向に終わる気配に痺れを切らし早々に受け取ってしまう。 僅かに汗をかいていることに顔をしかめるが、今の胸元が開いた服よりはマシだと思い素直に羽織る。 裾が長い、クーガーと詩音の体格にはかなりの違いがあるから仕方が無いことではあるが。 腕の裾を捲り、手元も自由にする。これで良い。 クーガーは話を途中で折られ、肩を竦める。 「……さーて、ではこなたさん。早くそんなことやめてしまいましょうか」 「なんで?」 クーガーの言葉に、こなたは不思議そうな声を返す。 斎藤はそれに眉をしかめ、クーガーはなおも諦めずに声をかけ続ける。 「こなたさーん。貴女、自分のしていることが分かってるんですか?」 「分かってるよ、これはゲームでしょ? だったらこれで優勝しないと。 それでブイツーくん……ゲームマスターからリセットボタンを貰うんだ。 やり直し、やり直し。それで元通りだよねー!」 そこで詩音は、ああ、と思う。 なにか奇妙だと思ったらこなたは気が触れていたのだ。 現実から目を離すのを悪いことだと決めつけるつもりはないが、一方の都合のいい展開にしか目を向けないのは駄目だ。 そんなに上手く行くものではない。 上手く行くものではないから、詩音は今こうして焦っているのだ。 「ルイズ、もう良いだろ。危ないから下がってろって」 クーガーがなおもなにか言おうとした瞬間、こなたを庇うようにサイトが一歩踏み出す。 だが、クーガーと斎藤がその言葉に反応する。 サイトがこなたに向けて言った、ルイズという言葉に、だ。 「ルイズ?」 「ルイズ・フランソワーズ……名簿にそんな名前があったな」 「おいおい、そりゃおかしいってもんだぜ。こなたさんは泉こなたって名前で名簿に乗ってる。 この俺ストレイト・クーガーの名前も斎藤さんの名前も、カズマも劉鳳も社長もかなみちゃんも緋村剣心さんだって名前が乗ってる名簿にだ。 まさか一人の人物を同じ名前で乗せる必要もないだろう。 いや、確かに名前と言うのは一種の記号であってその人となりにはあまり関係ないのものだ。 愛した人間と結ばれることでその名を一部を変えるパターンはあるが、それでもその人の本質に変りはないだろう。 だがだが、今は名簿の問題だ。人の名を記す名簿にはその記号を記すことでその存在が居ることを伝えることに意味が」 「その餓鬼は泉こなた。何故ルイズと呼ぶ? ああ……」 クーガーの長々とした台詞を、今度は詩音ではなく斎藤が被せる形で打ち切る。 そして、短くなった煙草を吹かしながら。 サイトの目を見据えた僅かに笑みをこぼし。 「死体でも見たか?」 その斎藤の言葉に、サイトの顔が真っ赤に染まる。 図星か、と笑いながら斎藤は呟く。 「……うっせえんだよ、お前ら! ルイズはここに居るって言ってんだろうが!」 「くだらんな」 斎藤は限界まで短くなった煙草を捨て、次は金属バットを手に持つ。 サイトも手に血管を浮かび上がるほど強く握って女神の剣を正眼に構える。 「……おい、お前」 「うるせえって言ってるんだよ! ルイズはなあ……ルイズはここに居るだろうが! 小柄で、怒りやすくて、手が口よりも先に出て……そのルイズがここに居るだろうが!」 クーガーはサイトの言葉に顔を歪め、腰を落としてクラウンチングスタートの体勢を取る。 詩音はここから離れるタイミングを失ったことに頭を抱える。 こなたはサイトの勝利を祈るだけ、ここで逃げれるという自信がないからだ。 そして、何かが起こればこの沈黙が破られる。 そんな瞬間に一人の男が横槍を入れる形で現れた。 「……やっと、人が居たか」 その男は、痩せぎすの体躯をしていた。 よく光る目と獣のように上端がぴんととがった耳。 半袖とジーンズ、そして何故か靴を履いていない。 ほっそりと痩せぎすの体躯から一種独特の精気を発散するその男。 明らかに何かが違う、『いかにも』と言った雰囲気を持っている。 その男の名は後藤。 五体のパラサイトが一つの身体に同居している種変りなパラサイトだ。 その『パラサイト』後藤に対して、最も反応が早かったのは『人斬り』斎藤一だった。 斎藤は素早く腰を落として身構える。 サイトたちからは目を離し、決して後藤から視線をそらさない。 人を殺し続けた故に人の殺し方を知っている斎藤には、後藤が人でない何かだと直感的に理解できたのだ。 そして、次に違和感を覚えたのは『アルター能力者』ストレイト・クーガーだ。 本土にて身体を弄られたクーガーは自分と似たものを感じたのだ。 ただの人間とは身体の作りが違う、そんなものを。 『ガンダールブ』平賀サイトと『鬼』園崎詩音は目の前の生き物を人間だと認識したが、何かがおかしいと肌が訴えかけていた。 シャツのボタンを一つずれて掛けてしまったような、そんな些細だが確かな間違いを感じるのだ。 そして、修羅場慣れなどしているわけのない『一般人』泉こなたでは、威圧感のある男の人だな、としか思わなかった。 「後藤だ」 「……?」 「お前たちは名前を知りたがる。ならば、先に名乗っておくだけだ」 ゆったりとした言葉ではあるが、何かを急くように後藤はしゃべり続ける。 得体の知れない後藤に詩音を含めた五人は動くことが出来ない。 まるで銃弾が底を尽きた状態で猛獣を前にした狩人のような、そんな感覚。 「……三人か」 そんな場を作った元凶である後藤は無機質にそう呟く。 ここに居る人間は五人。 後藤の言う三人とは一体何だ?と詩音が思った瞬間、後藤が詩音の頭を見透かしたように呟く。 「歯応えのありそうなのは、三人だな」 無表情のまま、僅かに首をコクリと回して一歩踏み出す。 瞬間にバラバラであったここに居る全員の考えがようやく一致した。 『この生き物は危険だ』、と。 後藤は殺し合いに来てから、ようやく強い高揚感を覚えていた。 目の前の人間は強い。 少なくとも暴力団の事務所に乗り込んだ時ぐらいには面白くなるだろう。 しかも、今度こそ食事にありつけるのだ。 あの貧相な身体をしたルイズとか言う少女だけでは満腹にはなれなかった。 だが、今回は体格の良い男が三人に、早熟気味の少女が一人とルイズなる少女と同じような貧相な身体をした少女が一人。 これだけ食せば満腹になる、しかも戦闘欲求まで満たせるオマケ付きだ。 人の言葉で表すならば、まさに『至れり尽くせり』といったところか。 一人ひとりじっくりと味わっている暇はない。 目の前の男三人も、場合によっては少女二人も、後藤へと襲いかかってくる。 共通の敵を見つけた人間は一先ずの協力を結ぶ、その敵が強力であればあるほどにそれは顕著だ。 「……さて」 後藤は始めて見るご馳走を前した子供のように、一切の躊躇いもなく動き始めた。 人間よりも高い身体能力を使い、一足飛びで五人の間合いへと飛び込む。 そして、右腕を肘から下まで鋭利な刃物へと変える。 肘から下に、釣り針のような反りを二つほど作っている鋭すぎる刃だ。 その刃を鉄甲をつけた斎藤へと勢いよく振り下ろす。 「ふん……阿呆が!」 斎藤は鼻で笑いながら右の無敵鉄甲でその刃を受け流し、さらに左手で強く握りしめた金属バットを横薙ぎに後藤の腹へと叩き込む。 壬生浪と呼ばれ人を斬り続けた新撰組浪士、その三番隊組長・斎藤一には後藤の狙いらしい狙いもない気のままの刃など速いだけの物に過ぎない。 がら空きになった腹へとバットを叩きつけられた後藤は僅かに距離を取り直す。 ここで逃がしはしない、追撃をと考えた斎藤だったが無敵鉄甲に目をやり足を止める。 後藤の刃を受けた無敵鉄甲に僅かな切り傷が見える。 サイトやこなたの斬撃で一切傷がつかなかった無敵鉄甲に、だ。 それほどあの刃は鋭く、振り下ろした後藤の膂力は流しきれないほどに強力だったということか。 僅かに緩んでいた心を再び締め直す。 「なるほど……」 腹部にバットを叩き込まれた後藤が何かを確かめるように腹をさする。 そして、斎藤と腹を見比べながら、その間にも表情を一切変えない。 喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも。 感情を忘れたのではなく最初から知らないかのように一切表情を変えない。 詩音は背筋がぞっとする。 いつか園崎は鬼だ、なんて話があるし分からないでもないが、目の前の後藤は鬼ですらない。 いや、後藤は生き物なのだろうか? ただ人を殺すことにだけに拘っている機械なのだと言われた方がまだ納得できる。 「野獣風情が人里に降りてくるな……」 詩音がそんな思いをいだいている横で、斎藤が吐き捨てるように呟く。 クーガーとサイトは様子見に徹する。 斎藤の高い戦闘力を知っているため、先に戦わせて後藤の力量を見極めようとしているのだろう。 見様によっては姑息とも取れる戦法ではあるが、それほどに斎藤の力を信頼しているのだ。 なによりクーガーにはこなたを止めるという使命がある。 サイトとこなたがここから立ち去らないように、それでいて二人と詩音へと後藤が攻撃を仕掛けないように見張っている。 クーガーが居る限り、サイトとこなたも動けない。 下手に動いて斎藤とクーガーが死に、後藤と相対するのを嫌ったのだ。 あのモンスターと呼ぶに相応しい後藤は、どうしようもなく嫌だった。 「お嬢さん……今のうちに逃げてください。ここは少し危ない」 クーガーは詩音の耳元に顔を近づけ、そう呟く。 目の前であり得ないことが起きているというのに、非常に落ち着いている。 それはクーガーがアルター能力者、詩音の基準でいうあり得ない人物であることも起因している。 恐らくあれを何らかのアルター能力だと思うことにしたのだ。 「安心してください、アイツは俺と斎藤さん、サイトとかいう少年に興味あるみたいですからねえ」 クーガーはサングラスを上げ、詩音へとウインクして見せる。 詩音は僅かに考え込み、少し自己嫌悪の情を浮かべながらカラシニコフを抱えてここを立ち去った。 それでいい、とクーガーは呟き後藤へと向き直る。 一方、斎藤は腰を落とし、バットを持った左を弓を引く様に後ろへと持っていき、右手を照準をあわせるようにをバットの先端に添える。 クーガーとサイトとこなたは知っている。 あれは斎藤が放つ最速最強の構え。 顔に直撃すれば、首から下と頭がお別れしてしまうのではないかと思わせるほどの威力を持った拳だ。 拳で打った姿しか見たことがなかったが、バットを持った姿を見て三人は確信する。 これは本来武器を用いての構え、拳はただの代用品だったのだ 「……死ね」 斎藤は短い言葉と共に、爆発するようなスタートを切る。 後藤はそれを待ち受ける。 侍を相手に、猛獣がカウンターを狙う。 斎藤はその馬鹿さ加減におかしさよりも巨大な怒りを覚える。 たしかにこの棍棒では本来の牙突の威力は出ない。 だが、それでも鬼の副長であり稀代の天才・土方歳三が考案した左片手平突きは甘いものではない。 後藤はブレード状に硬質化させた右腕を振りかぶる パラサイトである後藤には、どんなに速い斎藤の攻撃であっても見えている。 迫り来る金属バットへと右腕を突き刺すように持っていき。 「……む」 後藤の右腕が吹き飛んだ。 かろうじて肩との接続部分は残っているが、重火器が直撃したように右腕がその形状を保てずに四散していく。 威力に押し負けた、人間相手に。 そのあり得ない事態を後藤が理解した瞬間、斎藤は叫ぶ。 「まだだ!」 斎藤はその言葉と共に、伸ばしきった左腕を思い切り横に払う。 当然、左手に強く握ったバットも薙ぎ払われる。 そのバットは右腕がなくなったゆえにがら空きになったボディに直撃する。 牙突、左片手平突きは突きと横薙ぎの二段構えであるこそ新撰組に採用されたのだ。 かつ、斎藤一はその牙突だけを極めたスペシャリスト。 いくら化け物であろうとこれを食らえば生き物である以上立てない。 「……なるほど」 「っ……! 癇に障る野獣だ……!」 だが、後藤はまだ立ち上がる。 腹をさするだけで効いてはいないと言わんばかりに表情を変えずに。 そして、斎藤を見つめて呟く。 「お前は強いらしい」 後藤は簡素な賛美の言葉の後に、「だが……」、と付け加える。 相変わらず表情を変えることはなく、四散したはずの右腕を元の形へと戻していきながらの台詞。 「何故、三人で来ない?」 本心からの、不思議でたまらないとも取れるような口調で後藤は言う。 当然斎藤の怒りは限界まで届く。 だが、斎藤が次の動作を取るよりも早く、高く跳躍したクーガーが居た。 踵部分に仕込まれたピストンと側面部の噴射口を使えば、クーガーは宙を舞うことだって出来る。 「そうだ、それでいい……」 ラディカル・グッド・スピードを脚部に展開したクーガーのかかと落とし。 後藤は先程の牙突のような防御ではなく、回避を選択する。 クーガーの攻撃が牙突よりも強力だと感じたわけではない。 ただ先程は迎え撃ったから次は避けてみるかという散歩のコースを変えるような気軽さで思っただけの話だ。 クーガーのかかと落としは空振りに終わる。 後藤は横に素早く身体を動かし、硬質化させた右腕でクーガーの首をはねようとする。 「てりゃあ!」 「ふん!」 だが、それはサイトと斎藤の左右からの攻撃が入ることで失敗。 バットを突き出した斎藤の攻撃を右腕で、サイトの女神の剣を振り下ろした攻撃を左腕で、それぞれ盾のように広げた両腕によって防ぐ。 「人間は殺すことについてはどの生き物よりも長けている……か」 左腕でサイトの女神の剣を、右腕で斎藤のバットを受け止めながら呟く。 先程まではいがみ合っていたように見えた三人が一斉に攻撃したため、思わずその言葉を思い出したのだ。 しかし、クーガーは直ぐに次の攻撃を繰り出す。 サイトと斎藤の攻撃によって両腕が塞がれた今が好機。 腕を地面につけて押すように腕に力を入れ、逆に脚は後藤の腹へと突き出す。 カポエラを思い出させる攻撃。 「くっ!」 「うわ!?」 だが、後藤はそのクーガーの攻撃を察して、直撃する前に高く飛び上がる。 クーガーの跳躍も高い、が後藤の跳躍はもっと高い。 空振りしたクーガーの蹴りと、突如支えのなくなった斎藤とサイトが倒れこむ。 さらにそれぞれのデイパックも四散し、あらぬ方向で飛んでいく。 「即興にしては面白いな……」 上空を見上げると、そこには建物の壁に刃と化した右腕を突き刺した後藤が居る。 そして、腕をバネのように伸縮させたかと思うと。 弾けるように、勢いよく地面へと落ちてきた。 斎藤たち三人は、不恰好に転がるようにして弾丸のように降り落ちる後藤から距離を取る。 地面に落下した際に、後藤の握りしめた左拳は地面に叩きつけられコンクリートにヒビが入る。 あれがまともに入っていれば間違いなく肋骨は粉砕、その下の内臓も破裂で即死だろう。 だが、威力以上に恐ろしいのは、先程見せたバネのような腕の変化。 恐らくここが室内ならばまるでスーパーボールを思い切り叩きつけたかのように、後藤は立体的な動きで自由自在に動き回っていただろう。 同じく殺し合いに連れてこられた、縮地という歩法扱う瀬田宗次郎と同じように。 そういう意味ではこのほどほどに広がった道路での立体的な動きが出来ない戦闘ならば、まだ与し易い。 最速の男ストレイト・クーガー、壬生浪斎藤一、ガンダールブ平賀才人の三人は揃ってそう思った。 しかし安堵している暇はない。 後藤は次の攻撃へと移る。 刃のように固めた右腕を最も近くにいるクーガーへと振り下ろす。 だが、平面でのスピードならばクーガーは負けはしない。 右腕に軽い蹴りを入れることで身体を攻撃線上から外し、余ったもう一方の脚で蹴りを叩き込む。 このままでは尻餅を突いてしまい隙を作ってしまうことになるが、クーガーは片腕を地面につき支える。 そして、先程の一発だけでは後藤が倒れないであろうことは察していた。 故にまるでダンスを踊るようにクーガーは蹴り続ける。 まずは宙へ腕で跳ね上がるように後藤の顎に一撃。 後藤の顎が空へと上がった瞬間に、片足が地面につき上がったままのもう一方の足で腹部に軽く一撃。 次に両足が地面へとつけば、身体を屈める。 横薙ぎ振るってくるであろう後藤の右腕を避けるためだ。 クーガーの読み通り後藤の右腕は空を切る。 そして、後藤が右腕を空振りした時を見計らって足払いを掛けて体勢を崩す。 時間にして僅か数秒。 クーガーは後藤を確かに翻弄していた。 「ハハアハハッハア! スピードでこの俺を張り合おうなんてなあ!」 だが、後藤は一向に顔色を変えない。 楽しんでいるわけでも苦しんでいるわけでもない、痛みに顔を歪めすらしない。 まるで痛みを感じていないのではないかと思うほどの無表情だ。 クーガーは機械と戦っているかのような感覚を覚える。 それは当然とも言える。 後藤はパラサイト、この地球上で最も「痛みに鈍い」生き物だ。 その上、腹部による攻撃は全て腕によるガードと皮膚の硬質化で防いでいる。 「っう!?」 足元に激痛が走る。 視線を落とすと、脚部に展開したラディカル・グッド・スピードが後藤の脚に貫かれている。 ちょうど今まで振るっていた腕のように先端の尖った刃へと変えていたのだ。 腕だけでなく脚も変化させることに驚愕を覚えながら、距離を取り直そうとする。 だが、後藤はそこで終わらない。 右腕を突き刺すように素早く動かす。 その右腕はクーガーの脇腹を貫き、血を滴らせる。 だが、致命傷ではない。 「ぬおわぁ!」 そして、止めと言わんばかりに後藤は長い脚でクーガーを蹴り飛ばす。 パラサイトの全力の蹴り、クーガーは遠くへと吹き飛ばされていく。 その間に斎藤とサイトは距離を取り、後藤もそれを追撃せずに見送る。 仕切り直し、だが後藤は大したダメージどころか疲労すら感じさせない。 斎藤は手に持ったデイパックを手探りで何かを取り出す。 金色の柄をした、反りの大きい蛮刀だ。 「ちっ、蛮刀か……どこまでも使えん餓鬼だ」 「てめえ、それは俺の!?」 サイトの言葉から分かる通り、斎藤の得意とする反りの少ない美術品のような美しさを持つ日本刀ではない。 それはこのバトルロワイアルの参加者の一人でもあるヴァンの蛮刀。 日本刀ではないが、バットよりは遥かにマシだと斎藤は自身に言い聞かす。 今にも襲いかかってきそうなサイトを片手で制し、腰を落とす。 蛮刀を持った左手を弓を引くように後方へと持って行き、照準をあわせるように蛮刀の先端に右手を添える。 三度目となる、牙突の構え。 一度目は拳、二度目はバット、三度目は蛮刀。 そして、順を追うごとに圧迫感を増している。 拳を武器とする拳法ではなかった、バットのような棒を扱う杖術ではなかった。 この牙突の構えは、刀を持ってこその剣術。 それをサイトとクーガーは悟る。 後藤は斎藤から溢れる怒気と殺気を心地よいと言わんばかりに正面から受け止める。 そして、腰を落とし、左腕を硬質化させる。 左腕を、『弓を引くように引いていく。』 「貴様……!」 後藤が取った構えは、斎藤の牙突の構え。 と言っても斎藤のようなバランスの取れた構えではなく、不恰好な動けるかどうかも分からない構え。 だが、斎藤を煽るにはそれだけで十分だった。 怒りを原力に斎藤は走り出す。 いや、走りだすと言うよりも弾け飛ぶと言った方がしっくりと来るだろう。 そして、斎藤の動きに合わせて後藤も動き出す。 構えと呼べるか前からのスタートでもないのに、そのスピードは斎藤と何の遜色もない。 このことから単純なスペックは後藤の方が上だと斎藤にも分かる。 しかし、技術ならば斎藤の方が勝っている。 ならば後藤はどう来るか、当然搦手だ。 後藤は左腕に添えた右手を硬質化させ、奇襲をかける。 (くだらんっ!!) だが、斎藤は首を捻り上半身をのぞけらすことで右腕の攻撃を交わす。 そして、体勢を崩したままだというのに牙突を放つ。 牙突により、後藤の左腕が弾ける。 だが、まだ終わらない。 二度目となるが牙突は二段構え、平突きで仕留めることが出来なければ直ぐ様に横薙ぎへと移る。 斎藤は忠実にその極めた技を実行へと移し―――― 唐突に、足の甲に鋭い痛みを覚えた。 もちろん痛み程度では横薙ぎを止めはしない。 だが、僅かにスピードが鈍ったのは事実だ。 その僅かなスピードの差で、脚を硬質化させ脇腹をガードしている。 ダメージは残るが致命傷ではない上、後藤はパラサイト。 斎藤の牙突はほとんど失敗したと言っても良い。 「ちっ……だが、まだ……っ!?」 ならば、と斎藤は位置取りを僅かに変え、零距離から身体のバネだけで放つ牙突・零式へと移ろうとする。 だが、まるで地面に縫いつけられたかのように足がピクリとも動かない。 そこで視線を下へと降ろすと、そこには後藤が斎藤の足を思い切り踏みつけていた。 刀同士での戦いは足の使い方も大きな要素である。 故に何度も死線をくぐり抜けてきた斎藤には、ただの踏みつけならば抜け出す方法を知っている。 だが、後藤が行っている踏みつけは普通のものではなかった。 足の指を硬質化させ、刃で突き刺しているのだ。 そしてそれはコンクリートにも達している。 固められたコンクリートとパラサイトの単純な力に挟まれ斎藤は抜け出すことが出来ない。 後藤は僅かに動揺している隙に、右腕で斎藤の左の肘から下を切り落とす。 壬生浪と言えども肉体は人、パラサイトの刃により簡単に切り落とされる。 蛮刀を持った左腕が地面へと落ちる。 斎藤は歯を食いしばり、痛みに耐えながら右腕を振り上げる。 だが、斎藤が拳を叩き込むよりも早く後藤はその右腕を切り落とす。 腕のなくなった斎藤、だが目に怒りにギラつかせたまま蹴りを放つ。 それは単純に後藤が憎いからでも、負けることが嫌いだからではない。 彼の信じる唯一の正義、悪・即・斬の信条が故。 人里に降り、人を食い散らす獣は悪だ。 その獣が何を思っていようと、食料がないという事情があろうと関係ない。 悪は斬る、それが新撰組のような人斬り集団が信じる唯一の正義。 腕がなくなろうと、脚がなくなろうと、五体がなくなろうと、ただ悪を斬る。 それが、乱世を刀で変えようとした人斬りたちの、唯一の正義。 「まずは、一人」 時系列順で読む Back 元教師とメイドさん Next Ultimate thing(後編) 投下順で読む Back 元教師とメイドさん Next Ultimate thing(後編) 055 少女と獣 後藤 072 Ultimate thing(後編) 044 幸せの星(後編) 泉こなた 平賀才人 046 三竦み 園崎詩音 066 お前の姿はあいつに似ている ストレイト・クーガー 斎藤一
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Ultimate thing(後編) ◆EboujAWlRA シュンという風切り音が聞こえ、斎藤の首筋に熱い痛みが走る。 壬生浪最後の生き残り、斎藤一が最後に聞いた言葉は、どこまでも無機質な機械的な声だった。 ドサリ、と地面に斎藤の頭部が落ちる。 後藤が硬質化させた右腕で切り落としたのだ。 サイトがゴクリと唾を飲む。 あれほど自分を苦しめた斎藤が死んだ、その事実が未だに飲み込めなかったのだ。 だが、後藤はそんなサイトの事情など知った事ではない。 瞬時にサイトとの距離を詰めて右腕を振り下ろす。 サイトはそれを女神の剣で受け止める。 身体が反応したことに、サイトはイケると感じる。 ここはクーガーに後藤を押し付けてルイズ(こなた)と逃げようと考えたのだ。 後藤は攻撃をやめない。 受け止められた女神の剣を邪魔だと判断したのか、長い足を動かしてサイトの手首を蹴り上げる。 重すぎる蹴りがもたらした痺れに、サイトは女神の剣を取りこぼす。 しまった!と思うよりも早く、後藤が女神の剣を蹴り飛ばす。 カランカラン、と音を立てて女神の剣は転がっていく。 ちょうどこなたの足元まで転がり、そこでようやく後藤はこなたの存在に気づいたように目を向ける。 「あ……」 「ルイズ!」 女神の剣をこなたが拾った瞬間、後藤は跳びかかった。 こなたは女神の剣を構えて、偶然か後藤が加減したのかなんとか防御を取ることが出来る。 だが、それだけ。 がら空きになったこなたの腹部に後藤の蹴りが入る。 ただでさえ体重の軽いこなたは空中を回転しながら吹っ飛ばされる。 その際にデイパックも飛んでいき、離れていたサイトの足元にまで届く。 それでいて着地が取れたのは、こなたの運動神経ゆえか女神の剣の加護ゆえか。 後藤にもこなたが直ぐに姿勢を取り直したのは意外だったのか、僅かに追撃が遅れる。 「衝撃のォォォォォ!」 後藤が右腕を振り上げた瞬間、野太い声が響く。 「ファーストブリッドォォ!」 瞬間、吹き飛ばされていたクーガーの蹴りが後藤へと入る。 クーガーは回転前転をしながら着地する。 腹部から血が落ちるが、それを歯を食いしばり懸命に耐えながらこなたへと向き直る。 「こなたさん、こんなのを見ても殺し合いに乗るんですか!?」 クーガーはこなたへ叫びかける。 斎藤の死体を見て、サングラスに感情を隠しながらもこなたへと激情のままに語りかける。 「かがみさんも死にました! 斎藤さんも死にました! ですがねえ、二人とも信じるものがありましたよ! 友達と、人と殺し合いなんて出来ない! 人を傷つける人間は放っておくわけにはいかない! お二方ともそれを貫いたんです! それを見て貴方は!」 「でもさ……これはゲームでしょ? あれも強い、強すぎるだけのモンスターなんだよね? かがみんとあの人は攻略を間違えたから死んだんでしょ?」 「こなたさん……貴女はまだそんなことをッ!?」 「面白い……」 会話の途中に後藤の横槍が入る。 完全に叩き込んだはずなのにまだ動けるのかと、クーガーは驚愕する。 正確に言うならば、後藤は硬質化、そして伸縮性を持たせた左腕でクーガーの蹴りをガードをしていたのだ。 如何に後藤と言えどもあの蹴りはまともに受けていては無事ではすまない。 刃と化した右腕での攻撃、後藤の基本パターンだ。 クーガーはそれを紙一重に交わして、カウンターの蹴りを叩き込む。 恐らく今までのパターンから言ってダメージは与えられないだろうが、後藤を吹き飛ばすことは出来る。 いや、吹き飛ばすと言うよりも後藤が衝撃を逃がすように左腕でガードしながら後ろへと飛んでいるのだ。 もし、後藤に致命傷を与えられるとしたら助走を十分に取った上での本気の一撃。 それ以外は、後藤は何食わぬ顔で立ち上がり続けるだろう。 「ルイズ! 一先ず俺のデイパックを持って逃げるんだ!」 サイトもあれで後藤が終わったとは思わない。 まだまだ後藤は立ち上がり、何度も襲いかかってくるだろう。 だからこそまずはこなたを安全な場所に遠ざけておこうと判断したのだ。 今は邪魔者はクーガーだけ、逃げるのは容易いはずだ。 こなたは少しだけ躊躇ったような顔を見せる。 だが、直ぐに女神の剣と斎藤が投げ捨てたサイトのデイパックを抱えて去っていく。 それでいい、とサイトはうなづくが、クーガーはこなたの背中へと向けて声を掛ける。 「こなたさん!」 「おい、おっさん! 今はやることがあるんじゃないか!」 「おっさぁん!?」 クーガーは不満の声を上げるが、サイトは知った事ではないとこなたの置いていったデイパックを漁る。 今のうちに後藤が攻撃を仕掛けてくるかもしれないが、クーガーが防ぐだろうと考えたのだ。 後藤はそれを隙と見たのか、まずサイトへと襲いかかってくる 「おぉっと!」 だが、サイトのの察しの通り、時間をかせぐようにクーガーが後藤の攻撃を受ける。 後藤はサイトなど知った事ではないと言わんばかりにクーガーへと向き直る。 サイトはその間にもデイパックの中から武器を探す。 「これは……!」 サイトがデイパックから見つけたのは、赤い、炎のような赤い剣。 柄を見ただけで分かる、これはかなりの業物。 禍々しさと神々しさが同居したような、人間が作ったとは思えない迫力を感じる剣。 これならば、後藤とも戦える。 そう思い、柄を握り思い切りデイパックの中から引き出し―――― 「……えっ?」 その剣の先端を地面へと埋め込ませる。 柄は握っている、だが先端が全く上がらない。 おかしい、と思いながら力を込める。 しかしどんなに力を込めても天津神・ヒノカグツチの力が込められた魔剣・ヒノカグツチは一切として持ち上がらない。 「おいおい……おかしいだろ」 「ヒール・アンド・トュー!」 サイトはそう呟く。 横では後藤がクーガーの蹴りを避け、固く拳を握っているところだ。 「二度も三度も似たような攻撃は食らわん、工夫をしろ」 後藤はそう言って思い切りクーガーの腹部に拳を叩き込む。 完全に攻撃の体勢のままであったクーガーは、傷口に拳を打ち付けられる。 吹き飛ばされた上に、うずくまり簡単に動けない。 その間にも後藤はサイトへと向かっていく。 ――――我は魔剣ヒノカグツチ……天津神ヒノカグツチの力が込められし剣なり…… ふと、何処からかサイトでも後藤でもクーガーでもない声が響きだす。 剣の声だ、とサイトは察する。 そう察した瞬間にサイトは剣へと向かって叫ぶ。 「おい! なんで持てないんだよ!」 サイトはそんな後藤の姿が目にはいっていないのか、泣き喚くように声をあげる。 ヒステリックとも取れるほどに、正気ではない。 そして一向に光を出さない左手と、どんなに力を入れても持ちあがらないヒノカグツチを見比べ続ける。 傍から見ているクーガーにも、哀れにすら思えるほどに必死にサイトは叫び続ける。 それはヒノカグツチが持ち上がらないという単純な事実に苛立っているだけではないようだ。 もっと別の、不合格通知から目をそらそうとしている受験生のような、そんな様子。 だがどうしてもその剣を振るうことが出来ない。 ――――我を扱うには、力及ばぬ……早々に立ち去るが良い…… 「黙れ! 俺は……俺は、ガンダールブなんだぞ……! ルイズの、虚無の使い魔の、伝説の――――」 その言葉を最期まで言うことはなく、後藤の振るった右腕によってサイトの首と胴体は離された。 ヒノカグツチを固く握ったまま、サイトは動かない。 ガンダールブでない、ただの人間の弱すぎる力では、ヒノカグツチはどうしようもなく重かった。 「二人目、だ」 ポツリと後藤は呟く。 その顔に充実感も嫌悪感もない。 ただ何かを確かめたように頷いているだけだ。 「さて……少しこちらも疲れたが、そちらはどうだ?」 「……」 「疲労しているように見えるがな……しかも、本調子ではないのだろう」 クーガーは考える。 後藤を倒せない手段がないわけではない。 自身の最速の手を使えば、恐らく後藤の息の根を止めることが出来る。 だが、それは諸刃の剣。 クーガーにも多大な、下手をすれば死に至るほどのダメージを与えるほどのデメリットがある。 ここでクーガーが倒れれば、どうなる。 かがみの遺体と立てた約束は、どうなる。 後藤を野放しにするわけにはいかない。 だが、止めるためには命を捨てて戦わなければいけない。 しかも、確実に倒せるわけではない。 クーガーの傷もひどいものだ。 考えれば考えるほど、仕切り直しが良いように思えてくる。 後藤もピンピンしているように見えるが、ダメージは受けているはずだ。 クーガーの蹴り、サイトの斬撃、斎藤の牙突を受けているのだ。 「仕切り直し……だ!」 クーガーはここから立ち去ることにした。 こなたを探し、他のかがみの知り合いも探す。 それを優先したのだ。 ラディカル・グッド・スピードはクーガーをたちまち遠くへと運んでいく。 後藤はそれを眺めるだけ、追うことはしない。 本調子ならば、追うことは出来たかもしれない。 だが、スピードを抑えられている今では追うのは少し辛い。 「速い人間だ……」 後藤はポツリと呟き、腹部に手を当てる。 そこはクーガーの蹴りと、斎藤の横薙ぎが当たった場所。 身体から悲鳴を聞こえるような気がする。 胴体への攻撃は可能な限りガードしてきたが、伝わってきた衝撃が強すぎたようだ。 特にあの牙突なる攻撃と、速すぎるクーガーの蹴り。 何度も食らったあの攻撃が痛い。 「……まあいい。食事と共に休息をとれば良いだけだ」 後藤は斎藤とサイトの死体へと近づき、ふと鼻をひくつかせる。 「だが、煙が邪魔だな……」 僅かに匂う遊園地の煙が後藤の気分を害する。 人間よりも獣に近い後藤は、未だに煙を上げる遊園地の近くでの食事は好まなかった。 後藤は斎藤とサイトの死体を肩に担ぎ、床に落ちた二つの頭部、二本の腕を拾う。 蛮刀は後藤には必要ないので、外そうとするが死後硬直か斎藤の気迫か、固く握った蛮刀は外れない。 腹の減った後藤は一先ず外すことをあきらめ、デイパックの中へと頭部と腕を入れ込む。 そして、脚をブレード状へと変化させる。 二人のデイバックを持っていこうかと思ったが、邪魔だと判断し放っておくことにする。 どうせ人間が食べれるのだからデイパックの中の食料に興味はない。 一先ず教会にでも行き、ゆっくりと食事を取ろう。 こうして後藤は嵐のように現れ、嵐のように去っていった。 バトルロワイアルが始まりまだ日があけていない。 にも関らず、後藤は既に四人もの参加者を手にかけた。 だが、まだ足りない。 まだ後藤は乾いている。 戦闘欲求と生理的欲求、そのどちらもまだ満たされていたわけではない。 行先の教会にも戦闘と食べ物があると良い、後藤はなおそんなことを考えていた。 ◆ ◆ ◆ 詩音が遊園地の騒ぎから逃げ、総合病院までたどり着き息を整えていた。 なんだったのだ、あの後藤とか言う男は。 分からない、精々が詩音の理解を超えていることが分かるぐらいだ。 手を刀のように形を変化させていた、そんなこと人間に出来るはずがない。 あんなのが大勢居るのだろうか、そうだとしたら詩音は考えを改める必要がある。 強い人間ではなくモンスター相手に生き残るのは、知恵が回るとは言えただの人間である仲間では厳しい。 早く、仲間を探さなければ。 そう思い、ゆっくりと深呼吸を何度かし、空を見上げる。 何処に居るだろうか、仲間は。 恐らく、悪知恵の働くあのメンバーならば大胆でいて見つかりづらいところに居るだろう。 悟史は……恐らく沙都子を探している。兄だと言う理由だけで。 そういう人だと思う。 ならそれらしい場所を探す必要がある、詩音がそう考えた瞬間。 「さぁって、とりあえず傷を……っとあらあ?」 黒いサングラスをつけ、ストレイト・クーガーはパンパンと手を叩きながら現れた。 この制服を貸してくれ、詩音に逃げるチャンスを与えてくれた男だ。 「いやー、ご無事でよかったお嬢さん。あ、そう言えばお名前は? ひょっとしてつばささん、こゆきさん、まなみさんの誰かだったりしまして?」 「……詩音、園崎 詩音」 「園崎 魅音さんですかー。俺はクーガー、最速の男ストレイト・クーガーです」 魅音、と。詩音はクーガーにそう間違えられて胸にズキッとした痛みが走る。 魅音と詩音。 園崎姉妹には、この二つの名前と姿と存在に様々な因縁を持っている。 詩音の例として、一つ挙げるとするならば。 園崎魅音として、北条悟史と出会ったこととか。 「『詩音』、です。魅音は双子の姉の名前ですから」 「あらら……これはこれは失礼しました」 詩音は同様を隠すように感情を押さえて言葉を発し、クーガーは真後ろが見えるのではないかと程にのぞけかえりながら笑いをこぼす。 だが、そのクーガーの笑いもどこかぎこちない。 クーガーの笑みがぎこちない、その意味をなんとなく詩音も察した。 恐らくあの斎藤と言う男かこなたという少女が死んだのだろう。 そして、目の前で人が死んだことに、その場から逃げる形になってしまったことが僅かに後悔しているのだろう。 恐らく正義漢の強い人間。 こなたは止められず、狂ったような言動をしていた平賀才人を死なせ、好感の持てた斎藤一も死んだ。 なおかつあの後藤と言う化け物を野放しにしている。 「いやあ、ここで会ったところ悪いんですがね。 俺はちょっと探しびとが居まして、少し応急処置をしてから行かしてもらいますよ」 そう言って、クーガーはサングラスをかけ直す。 そして、朝日の登り始めた外を見つめながら、ポツリと呟く。 「急ぐ理由も出来ましたしね……」 クーガーの脳裏によぎるのは己の中に絶対正義を持った斎藤一の姿。 その志は物騒ではあるが、揺ぎ無い物だった。 そしてその絶対正義に見劣りしない力を持っていた。 過去形で語らなければいけないことが非常に惜しい人物。 そう、そんな人物ですら死んだのだ。 あのモンスターと遭遇して。 後藤、そう名乗ったアレはモンスターと呼ぶに相応しい。 能力が凄まじいからではない、一切の感情の揺れを見せないあの様がモンスターと呼ぶに相応しいのだ。 恐らく斎藤とサイトを殺しただけでは止まらない。 もちろん、全力で後先考えずにやれば負けるつもりはない。 あんな文化の欠片もない生き物に負けなどはしない。 「どうします? どうやら貴方も人をお探しのようですから、一緒に行きますか?」 「……」 詩音は黒いサングラスをかけたクーガーを値踏みするように見る。 体格は良い、髪型はかなり奇抜、何かの制服と思える服を身に纏っている。 僅かに、ストレイト・クーガーについていくメリットはあるのか、考える。 殺し合いには乗っていないだろう。 もし乗っているのならば一人で逃げいている。 そう、一人で逃げいているのだ。 わざわざ詩音を拾う必要など一切ない。 そのことが決め手になったのだろう。 詩音はクーガーの差し伸べてきた手を取った。 「よろしくお願いしますよ、魅音さん」 やはり、名前は間違えたままだったが。 【一日目早朝/G-8 病院付近】 【ストレイト・クーガー@スクライド】 [装備]:葛西のサングラス@ひぐらしのなく頃に [所持品]:基本支給品一式、不明支給品(確認済み)0~1 [状態]:身体中に鈍い痛み、腹部に裂傷、疲労(大) [思考・行動] 1:傷を塞ぐ。 2:かがみと詩音の知り合い(つかさ、みゆき、みなみ)を探す。 3:こなたを正気に戻す。 4:緋村剣心の速さに興味。 [備考] ※総合病院の霊安室にかがみの遺体とデイパック(基本支給品一式、陵桜学園の制服、かがみの下着) が安置されています。 【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】 [装備]AK-47(カラシニコフ銃)@現実、HOLY隊員制服(クーガーの物)@スクライド [支給品]支給品一式、AK-47のマガジン×9@現実、SEAL(封印)@仮面ライダー龍騎、 クマのぬいぐるみ@ひぐらしのなく頃に [状態]疲労(小)、若干恐怖と焦り [思考・行動] 1:クーガーと行動する。 2:悟史に会う。 3:仲間との合流、沙都子を優先。 [備考] ※皆殺し編、沙都子救出後の綿流し祭の最中からの参戦です ◆ ◆ ◆ 「いやあ、たまったもんじゃないよホントに」 泉こなたは長い髪を指で軽く梳かしながら、何度も後ろを振り向きつつ北へと向かっていた。 先程のゴトウと名乗ったモンスターのことを思い出す。 こなたが魔王レベルと感じた斎藤を殺し、なお自分の仲間であるサイトをも続いて殺した後藤はさながら大魔王と言ったところか。 ここで最初のこなたなら半ば自暴自棄になるか、ゲームバランスが圧倒的に狂ったこのゲームに怒り狂っていだろう。 だが実はそうではないと、今は分かる。 (ブイツーくんは最初に言ってたよね。 これは殺し合いだって、最後に一人だけ生き残るんだって。 つまりとにかく人を殺せばいいってわけじゃないんだ。 他のプレイヤーが殺し合うのを期待しながらー、私みたいな奴は武器を集めればいいんだ。 他にもサイトとチームを組むとか、そういうのでも良いかな?) なんとなく、このゲームの基本攻略法がこなたにも見えてきた。 必ずしもモンスターは倒さなくても良い。 恐らくレベルという概念がなく、基本ステータスは不動で武器依存のゲーム。 強い敵には腹に一物を抱えながらチームを組んで戦う。 とにかく立ち回りが優先されるゲームなのだ。 「さ、じゃあ早速武器屋へ直行ー! 追い剥ぎスキルは皆にあるみたいだから、それで誰かから奪ってもいいけどねー!」 【一日目早朝/F-8】 【泉こなた@らき☆すた】 [装備]:女神の剣@ヴィオラートのアトリエ [所持品]:支給品一式、確認済み支給品0~2個、ルイズの眼球、背骨(一個ずつ) [状態]:健康 [思考・行動] 1:優勝して、白髪の男の子にリセットボタンをもらう。 2:とりあえず一旦休む。 ◆ ◆ ◆ ロロは辺りを見渡しながら僅かに舌打ちする。 理由は単純、この遊園地に血の臭いがしたからだ。 幼いときよりギアスの力を用いて人を殺し続けたロロには分かるのだ。 血の臭いと、人が死んだ空気。 それを感じ取ったロロは苛立つ。 単に人が死んだことが許せないのではない、ロロはそんな熱血漢でも正義を振りかざす人間でもない。 兄であるルルーシュが危険に会ったかもしれないことと、それを問いただす相手すら居ないことにだ。 やはり次元と会話をしながら動いたことで時間を取ってしまった。 しつこくルルーシュとV.V.の情報を手に入れようと声をかけ続ける次元を煙に巻く方法を考えていることで、歩みが格段に遅くなってしまったのだ。 もしも、早くここに辿りついていたらルルーシュの情報を手にいれることが出来たかもしれないというのに。 「血が……まだベトベトだ。ひと足遅かった、ってところか」 「そうみたいですね……死体はないようですが」 事件現場を検分する警察官のように、周囲を見渡しながら二人は歩く。 僅かに歩き、隠すようにポツリと置かれている二つのデイパックに次元とロロの目に入る。 そして、燃えるような赤で染められた剣が地面に突き刺さっている。 ロロは慎重に剣へと近づき、引き抜こうと力を込める。 「くっ……! 深く突き刺さってるのか?」 だが、ロロの腕力では持ち上げることが出来なかった。 その様子を見た次元が近づいてくる。 「どうした、抜けねえのか?」 そう呟きながら、ロロを押しのけるようにして次元は剣の前に立つ。 そして、突き刺さった剣の柄を握り、思い切り引き抜く。 「ふん! ぬんぬんんぬんんん……!!」 次元はがに股に足を開き、中腰の状態で力を込める。 ロロとは違い、長時間力を込めるが一向に引き抜ける気配がない。 それどころかピクリともしない。 ここで諦めても良いが、この剣はなにか次元とロロの心をくすぐる。 次元のお宝を求める心と、ロロの兄を求める心をだ。 直感的に次元はこの剣がお宝だと判断していた。 同じくロロも理論とは別のところで、この剣が強大な力を持っていることを察した。 これをルルーシュの元へと持って行けば、何かしらのプラスとなる。 その時ルルーシュはロロを褒めるだろう。 それを考えると、僅かな浪費ならば裂いても良いと思った。 「こいつは無理だぜ……ったく、どうなってやがったんだ。大して深く刺さってないっていうのによ」 次元は全く抜ける気配のないヒノカグツチを蹴りつける。 ロロとしてはヒノカグツチに興味を抱いていたが、これ以上時間を掛けるのも ――――我は魔剣ヒノカグツチ……天津神ヒノカグツチの力が込められし剣なり…… 「……次元さん、なにか言いましたか?」 「坊主じゃねえのか?」 突如響いた声に、ロロと次元は顔を合わせる。 そして、もう一度ロロは剣に手をかけ、思い切り引き抜く。 ――――我を引くには力及ばぬ……早々に立ち去られよ…… もう一度、次元とロロは顔を合わせる。 そして二人の頭に、まさか、という考えが過ぎった。 先程の声、それは剣が喋っているのではないか、という考えだ。 あり得ないとは思うが、剣が言っていると解釈すれば意味の通じる言葉ではあるのだ。 次元とロロは興味が惹かれるが、一向に抜ける気配の見せない剣に何時までも気を取られている暇はない。 次元はルパンと五エ門を、ロロはルルーシュを探さなければいけないのだから。 「さぁて、これからどうするかねえ」 「……」 ロロは何を言うでもなくデイパックを背負う。 そして、ロロが次に二個目のデイパックを取る前に次元が拾う。 次元は遠慮も無しにデイパックの口を開けて中身を探り、その中からまずライターを見つけた。 その瞬間、『これはもしや!』と次元の心は期待に染まる。 もはや中身を全てを出す勢いで探っていき、お目当てのものを探り当てる。 それはロロが取った剣よりも、いまの次元にとっては価値のあるもの。 それは煙草。 バージニア・メンソールと言う次元の嗜好からは外れているが、煙草は煙草。 次元は上機嫌に煙草へと口をつける。 「……兄さんどころか人っ子ひとり居ませんね」 「ああ、そうだな」 ふぅー、っと煙を吹かしながら次元は答える。 その目は長い前髪で見えないが、先程よりも浮かれているように見える。 ロロは考える。 これでルルーシュへの手掛り、というよりも目標らしいものもなくなってしまった。 「次元さんはこれからどうするんですか?」 「どうもしねえよ。俺はルパンと五右衛門の野郎を探すだけさ」 本当に美味そうに煙草を口にしながら次元は答える。 (兄さんが何処に居るか分からない以上……ここは手分けして探してみるべきなのかな?) ロロはふと手元のメモを思い出す。 前原圭一なる人物が書いたメモと次元とは順番が違った名簿。 ルルーシュならば、何かしらの見当をつけるかもしれない。 「次元さん、もし兄さんと出会ったらこのメモを渡してくれますかね」 「……なるほど、別行動を取るってことか。だけどよ、俺がわざわざそんな使いっ走りになる義理はねえよな」 「利益が欲しいんですか」 そういうことだ、と笑って次元は短くなった煙草を吸う。 新しい煙草を出せば良いものを、とロロは思う。 「……V.V.のことを、知っている限り話しますよ」 「話が早くて助かる」 「それにこのメモの情報も兄さんなら察することが出来ます。 だいたい、僕も貴方の知り合いを探すってことでいいでしょう」 「まー……構わねえな。あくまでついで程度だぜ?」 次元は思ったよりも気楽に返事をする。 煙草を手にいれたからか、それともロロとはそれほど長いコンビを組むつもりはなかったのか。 いずれにせよ、これからはまた手探りでルルーシュを探すことになった 「第三放送前後に……水族館で。会ったらそう伝えてください」 「おうよっと……」 次元は完全に短くなった煙草を地面へと落とし、革靴で踏みつぶす。 そして、もう一本煙草を取り出す。 普段のマールボロとは違う、女性向きの口当たりの良さを重視した物。 たったの五箱では一日半と持たないが、何も無いよりは遥かにマシだ。 次元はバージニア・メンソールを口にする。 「甘いなぁ」 ふぅーっ、と、煙を吐きながら次元はつぶやいた。 【一日目早朝/G-10 南西部】 【次元大介@ルパン三世(アニメ)】 [装備]レミントン・デリンジャー(2/2)@バトルロワイアル [支給品]支給品一式×2、水鉄砲@ひぐらしのなく頃に、庭師の如雨露@ローゼンメイデン、レイピア@現実、 前原圭一のメモのコピー@ひぐらしのなく頃に、知り合い順名簿のコピー、 バージニア・メンソール×五箱(四本消費)@バトルロワイアル、 北条悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に、確認済み支給品0~1個 [状態]健康、満腹 [思考・行動] 1:V.V.を殺して、殺し合いを止める。 2:ルパン達を探す。 3:ロロを完全には信用しないため、ロロから与えられた情報も半信半疑。 4:甘いが……美味い。 [備考] ※庭師の如雨露をただの如雨露だと思っています。 ※ギアス世界の情勢を知りました(ただしギアスについては知りません) ※ギアス勢の情報を入手しました、スザクのみ危険人物だと教えられています。 【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】 [装備]サバイバルナイフ@現実 [支給品]支給品一式×2、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、不明支給品0~1 カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿 三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル [状態]健康、満腹 [思考・行動] 1:一刻も早くルルーシュと再会する。 2:1を達成後、ルルーシュを守り、脱出を目指しているのなら協力する。 3:ルルーシュの役に立ちそうな参加者は生かすが、邪魔になりそうなら殺す。 4:竜宮レナ、園崎魅音は発見次第殺害、残りのひぐらし勢は警戒。 5:ギアスの使用はできるだけ控える(緊急時は使う) [備考] ※ルパン勢の情報を入手しました。 ※警察署内にはカップ焼きそば@仮面ライダー龍騎がたくさんあります。 ※G-10南西部にヒノカグツチ@真・女神転生if…が突き刺さっています。 【ヒノカグツチ@真・女神転生if…】 こなたに支給された、赤い色合いをした最強の剣。 攻撃力255、装備すれば力+5と運+2の効果がある。 男女ともに扱えるが、一定以上の力と体力がなければ持つことは出来ない。 ◆ ◆ ◆ 眠い……眠くてたまらない…… サイトの頭の中に占めていたのはそれだけだった。 妙なほどに頭がボォーっとして、思考が働かない。 ただ体の下に広がる温もりだけを求めていた。 「……さい……なさい!」 故にどこか懐かしい、聞き覚えのある声が聞こえてきても反応しない。 ただただ、温もりだけを求めて…… 「起きなさい! このバカ犬!」 しかし、強制的に温もりを取り上げられおまけに頭蓋が潰れるような衝撃に襲われる。 「いってぇ!?」 先程までの眠気は吹っ飛び、ずんずんと頭の旋毛から広がる痛みに目から涙を浮かべる。 だが、次にサイトは愕然とする。 先程までサイトが生まれ故郷である地球らしき場所に居たはずなのに、今は西洋風の一室に居る。 藁を敷いた簡易な布団に寝転びながら、頭を抱える。 「早く準備をしなさい。使い魔がメイジを待たせるんじゃないわ」 「………………ルイズ?」 そこには、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、サイトの正真正銘の『ご主人様』が立っていた。 ネグリジェ姿で、生足を晒して、幼さを残しながらも色っぽい鎖骨を晒して。 「な、なんでその姿で……!?」 「……使い魔にどんな格好を見られても恥ずかしくないわよ」 ルイズは僅かに怒りを顔に染めながら、呆れたような声で答える。 その返答に、おかしい、とサイトは思う。 ルイズはこんな堂々と艶やかな姿を見せはしない。 そうだ、それこそ最初の出会ってばかりの頃ぐらいしか――――。 「……夢?」 サイトの頭によぎる。 もし、今の今までが全部夢だったとしたら。 今までのルイズとの蜜時も、あの殺し合いのことも。 全てが夢だったのか? 「さっさと準備しなさい、使い魔がメイジを待たせるんじゃない!」 ――――ガリッ 「ああ、分かってるよ! 俺のご主人様!」 ふと、雨でもない上、室内だというのにサイトの頭に粘ついた異臭を放つ液体が落ちてきた。 だが、サイトは何の反応も示さない。 目の前にいるルイズへと犬のようについていく。 その液体が身体を溶かしていこうと関係ない。 ルイズの五体が溶けきっていようと関係ない。 目玉が飛び落ち、髪が抜け落ち、指がちぎれ、腕の関節がめちゃくちゃに曲がり、舌がなくても。 サイトには関係ない。 ――――ポリッ 自身の目もこぼれ落ち始める。 そこでようやくサイトは動揺する。 目がなければルイズを 恐らく脚もなくなるのだろうな、とサイトは思う。 だが、どうでもいいことだ。 ――――グシャ、ムシャ 何故なら、サイトの目の前にはルイズが居るのだから。 「ルイズ……」 「なによ」 「やっぱりお前、可愛いよな」 ――――ゴクン。 【斎藤一@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 死亡】 【平賀才人@ゼロの使い魔 死亡】 【一日目早朝/F-9 教会】 【後藤@寄生獣】 [装備]無し [支給品]支給品一式、不明支給品0~2(未確認)、ヴァンの蛮刀@ガン×ソード [状態]疲労(大)、空腹(小) [思考・行動] 1:食事を取り、少し休憩。 2:強い奴とは戦いたい。 3:泉新一を殺す。 4:田村玲子が本物なら戦ってみたい。 [備考] ※参戦時期は市役所戦後。 ※後藤は腕を振るう速度が若干、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に制限されています。 ※E-10 北部に空の寸胴鍋が落ちています。 【ヴァンの蛮刀】 サイトに支給された、ヴァンの愛刀。 単純な剣としてではなく、鞭のようにしならせることが出来る。 ダン・オブ・サースディを呼ぶ際に用いる武器でもある。 時系列順で読む Back Ultimate thing(前編) Next みなみ × 南 投下順で読む Back Ultimate thing(前編) Next みなみ × 南 072 Ultimate thing(前編) 後藤 087 がるぐる! 泉こなた 平賀才人 園崎詩音 092 adamant faith ストレイト・クーガー 斎藤一 068 二人の黒い殺し屋 次元大介 091 次元大介の憂鬱 ロロ・ランペルージ [[]]